辛くて甘い
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〜辛くて甘い〜
私には強個性と言われている同級生がいる。
そんな彼と私は個性が似ていた。
「隣のクラスの……名前は忘れたけど怖い顔の男の子、●●と個性が似ているよね!」
まだクラスメイトの名前を覚えきれていないときに、その言葉をよく言われた。
「……そうかな。よく分からないや」
曖昧に笑って誤魔化すけれど、周囲の噂は止まらない。
「分からないなら、見に行こうよ!」
興味本位で連れていかれた隣のクラス。
人だかりの隙間から見えたのは、机に足を投げ出し、鋭い眼光で周囲を威圧する少年の姿だった。
「見てみて、あの男の子」
友達が指差した先には、周りを牽制する様に、掌から弾ける爆発を起こす彼の姿があった。
「見せもんじゃねェぞ!散れ!」
暴言と、放たれる爆発音と共に、鼻を突くニトロのような焦げた匂いが教室を漂う。
……なんだ、全然違うじゃん。
心の中で毒づく。
けれど、外側しか見ない友達は無責任に言葉を重ねてくる。
「ね、そっくりでしょ!彼、雄英のヒーロー科志望らしいんだけど、●●も目指すの?似た個性のライバルって感じだね!」
悪意のない、重たいプレッシャー。
いつか「似た個性なのに、●●の方は大したことないね」なんて笑われるのが怖くて、私は放課後の公園で、必死に個性練習をするようになった。
ーーーー
夕暮れの公園で1人、個性練習をしていたとき、背後から足音が近付いてきた。
「テメェか、俺と似た個性を持っているって言うモブは」
振り返るまでもない、突き刺さるような声。
例の彼だった。
同じ中学に通いながら、1度も言葉を交わしたことのない、物理的にも精神的にも遠い存在。
「何か用……?」
「せっかくだから、色々と教えてやろうか」
彼は不敵な笑みを浮かべ、掌を小さく爆ぜさせた。
パチパチと火花が散り、熱気がここまで届く。
自信に満ち溢れた、その佇まいは、圧倒的な強者だった。
「いい。私は私のやり方で強くなるから」
私は彼の目を見据えて言い放った。
教わる必要なんてない。
だって、私と貴方の個性は、似て非なるものなのだから。
「へッ!そうかよ!」
私の拒絶が気に食わなかったのか、彼は吐き捨てるようにそう言うと、踵を返して去っていった。
夕闇に消えていく彼の背中を見送ったのは、後にも先にもこれっきり。
そして、季節は巡り、私は念願の雄英高校の門をくぐった。
けれど、私のクラスは1年C組で彼は1年A組。
「……やっぱり、実力が違うんだ」
廊下で堂々と歩く彼の姿を遠目に見かけるたび、胸の奥が押し潰される気持ちになる。
分かっていた。
分かっているつもりでいた。
それでも、同じ土俵にすら立てなかった事実は、想像以上に苦いし悔しいものだった。
「でも、まだ終わったワケじゃない」
普通科とはいえ、ここは雄英だ。
体育祭の結果次第では、ヒーロー科への編入だって夢じゃない。
最初はそうやって自分を鼓舞していた。
けれど、現実は甘くはない。
「ねえ、聞いた?C組のあの子もヒーロー科編入を狙ってるらしいよ」
「あー、あの心操って子も凄かったしね。倍率ヤバくない?」
休み時間に飛び交うクラスメイトたちの声。
焦燥感が、じわじわと指先を冷たくしていく。
あの日、公園で彼に背を向けた時のあの強気な自分は、どこへ行ってしまったのだろう。
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