意地っ張りちゃんと見栄っ張り君
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〜意地っ張りちゃんと見栄っ張り君〜
個性『超聴覚』。
人よりも聴覚が優れている。
そのため、コソコソ話や内緒話も耳元で話す音量で聞こえる。
それを理解していなかった幼少期の私は、普通に話題に出していた。
「カノンちゃんってユウタ君のことが好きって言ってたよね?」
「え、なんで知っているの……」
「聞こえてきたから……」
「盗み聞き?●●ちゃん怖い……」
こんなやり取りを繰り返すうちに、私の周りには友達が寄り付かなくなった。
“●●ちゃんって耳が良いみたいだよ”
“私、それで好きな人をバラされたことある”
“サイテー。あ、こっち見てる。逃げろー!”
初めこそ恋バナばかりだった内緒話が、いつしか私の悪口ばかり耳に入ってきた。
この個性のせいで……。
個性を発動させなければ、こんな嫌なことを聞かなくて済むのに、幼少期の私にはそんな調節ができるはずもなく、ただただ耐えるしかできなかった。
そして、今日も今日とて保育園でお友達と距離をとって、1人で砂遊びをする。
「今日は大きなお山を作っちゃうもんね。トンネルも掘って、水も流そう」
誰に話すわけでもなく独り言を呟く。
だけど、
“●●ちゃん泥だらけでばっちぃーね”
“ばい菌が移っちゃう”
“誰か消毒の個性持ちいないかなー”
やっぱり聞こえてくる悪口。
視線を上げると、ジャングルジムで遊んでいる女の子たちが、こちらをチラチラ見ながらクスクスと笑っていた。
「全部聞こえてるって……」
誰にも迷惑をかけていないのに。
いっそのこと泥だらけの手で触れてやろうか。
なんて、ね。
そんな度胸がないくせに……。
「グスッ……」
悲しくなんてない。
つらくなんてない。
涙を拭いながら、自分に言い聞かせる。
そんな私にも唯一、私の悪口を言わないお友達がいた。
その子は同じ保育園じゃないから、滅多に会えないけど……。
次はいつ会えるかな。
……。
…………。
夕方頃、お母さんがお迎えに来てくれた。
「先生、さようなら〜!」
「はい、●●ちゃん、さようなら」
ようやく長い1日が終わり、保育園から離れられる。
お母さんと手を繋いで帰路につく。
帰りながら今日あった話をする。
もちろん、悪口を言われていることは言わない。
「今日はね、お砂場で遊んだの。こーっんなにおっきなお山!」
腕を目一杯広げて大きさを表現するけれど、私の短い手では上手く表せない。
だけど、お母さんは嬉しそうに頷く。
「あら〜凄いわね」
「頑張ったよ!明日はお母さんも一緒に作ろうよ!」
「……ごめんね。明日はお母さんとお父さん仕事になっちゃったから、いつものところで遊んでね」
「分かった!」
お母さんとお父さんはたまにお休みの日も仕事になる。
そのときに必ず利用する託児施設がある。
その施設に例のあの子がいた。
私のことを悪く言わない、唯一のお友達。
お母さんたちと一緒にいられないのは寂しいけれど、それ以上にあの子に会えることが嬉しかった。
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