頑固ちゃんと不真面目君
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試合を終え、観客席へと戻ってくる選手たちの目元は顔は赤く、悔しさに歪んでいた。
その中に、私の探していた後ろ姿を見つけた。
「矢巾君」
声をかけると、こちらを向き少しだけ目を見開いた。
「◯◯さん。……本当に、来てくれたんだ」
「うん。試合、お疲れ様」
「ありがとう。……結局、俺は出られなかったけどね。あーあ、ワンチャンあるかなって期待してたんだけどなー。◯◯さんに、最高にかっこいいところ見せたかったのに!」
わざとらしく肩をすくめ、おどけた調子で笑う矢巾君。
だけど、その瞳には隠しきれない闘志が残っていた。
これは空元気だ。
「だけど、俺らのエース、及川さんは格好良かっただろ?」
嘘のない、心からの言葉。
自分が出るよりも、先輩を信じ、チームの勝利を何よりも優先していたのが伝わってくる。
「私は、矢巾君も充分に格好良かったと思うよ」
「え……?」
「あの京谷君に、叱咤かましてたでしょ。あれがなかったら、京谷君はもっとぐだぐだになってたんじゃない?」
「……見られてたのか。参ったな」
矢巾君は観念したように、照れくさそうに頭を掻いた。
いつもの軽薄な笑みはどこにもない。
「あの、さ……。3年生の先輩が引退したら、次は俺らの代だから。……良かったら、次こそは俺がコートで戦うところ、見てほしい」
「……うん!もちろん。絶対行くよ」
迷いのない私の返事に、彼は少し驚いたあと、今日一番の明るい顔で笑った。
次の試合が今から楽しみだ。
……だけど、その前に。
私には、彼に謝らなければならないことがあった。
「ねえ、矢巾君。その……以前、もっと真面目になった方がいいって言ったけど、あれ、訂正させて」
あんなに先輩を慕い、仲間のために声を枯らしていた彼を、ただの不真面目で片付けてしまった自分が恥ずかしい。
「矢巾君は、仲間思いで。……本当は、誰よりも根が真面目なんだね」
自然と口角が緩む。
すると、今度は矢巾君が、呆然と私を見つめた。
「……それなら、便乗して俺も訂正したいことがある」
「……?」
「◯◯さんって頑固だと思ってたけど。意外と柔軟な考えができるんだね。……それと」
彼は一歩だけ距離を詰めると、少しだけ声を低くして囁いた。
「笑うとすげー可愛いんだから。……もっと、そうすればいいのに」
「……」
あまりに不意打ちの言葉に、心臓が跳ね上がる。顔が熱い。
動揺して固まる私を、矢巾君が慌てたように急かした。
「ちょっと、なんか言ってよ!恥ずかしいじゃん!」
私は必死で冷静さを取り戻そうと、ツンと横を向いた。
「やっぱり、矢巾君はチャラいね」
「なっ!?せっかく本心で言ったのに!」
納得いかないように声を上げる彼を見て、私は心の中で小さく舌を出した。
本心では、彼に可愛いと言われたことが凄く嬉しかった。
だけど、それを今伝えたら、彼はきっと調子に乗るだろう。
だから、本当の気持ちを伝えるのは、彼がもっと誠実になるまで、とっておくことにした。
ーーFinーー
その中に、私の探していた後ろ姿を見つけた。
「矢巾君」
声をかけると、こちらを向き少しだけ目を見開いた。
「◯◯さん。……本当に、来てくれたんだ」
「うん。試合、お疲れ様」
「ありがとう。……結局、俺は出られなかったけどね。あーあ、ワンチャンあるかなって期待してたんだけどなー。◯◯さんに、最高にかっこいいところ見せたかったのに!」
わざとらしく肩をすくめ、おどけた調子で笑う矢巾君。
だけど、その瞳には隠しきれない闘志が残っていた。
これは空元気だ。
「だけど、俺らのエース、及川さんは格好良かっただろ?」
嘘のない、心からの言葉。
自分が出るよりも、先輩を信じ、チームの勝利を何よりも優先していたのが伝わってくる。
「私は、矢巾君も充分に格好良かったと思うよ」
「え……?」
「あの京谷君に、叱咤かましてたでしょ。あれがなかったら、京谷君はもっとぐだぐだになってたんじゃない?」
「……見られてたのか。参ったな」
矢巾君は観念したように、照れくさそうに頭を掻いた。
いつもの軽薄な笑みはどこにもない。
「あの、さ……。3年生の先輩が引退したら、次は俺らの代だから。……良かったら、次こそは俺がコートで戦うところ、見てほしい」
「……うん!もちろん。絶対行くよ」
迷いのない私の返事に、彼は少し驚いたあと、今日一番の明るい顔で笑った。
次の試合が今から楽しみだ。
……だけど、その前に。
私には、彼に謝らなければならないことがあった。
「ねえ、矢巾君。その……以前、もっと真面目になった方がいいって言ったけど、あれ、訂正させて」
あんなに先輩を慕い、仲間のために声を枯らしていた彼を、ただの不真面目で片付けてしまった自分が恥ずかしい。
「矢巾君は、仲間思いで。……本当は、誰よりも根が真面目なんだね」
自然と口角が緩む。
すると、今度は矢巾君が、呆然と私を見つめた。
「……それなら、便乗して俺も訂正したいことがある」
「……?」
「◯◯さんって頑固だと思ってたけど。意外と柔軟な考えができるんだね。……それと」
彼は一歩だけ距離を詰めると、少しだけ声を低くして囁いた。
「笑うとすげー可愛いんだから。……もっと、そうすればいいのに」
「……」
あまりに不意打ちの言葉に、心臓が跳ね上がる。顔が熱い。
動揺して固まる私を、矢巾君が慌てたように急かした。
「ちょっと、なんか言ってよ!恥ずかしいじゃん!」
私は必死で冷静さを取り戻そうと、ツンと横を向いた。
「やっぱり、矢巾君はチャラいね」
「なっ!?せっかく本心で言ったのに!」
納得いかないように声を上げる彼を見て、私は心の中で小さく舌を出した。
本心では、彼に可愛いと言われたことが凄く嬉しかった。
だけど、それを今伝えたら、彼はきっと調子に乗るだろう。
だから、本当の気持ちを伝えるのは、彼がもっと誠実になるまで、とっておくことにした。
ーーFinーー
