頑固ちゃんと不真面目君
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春高バレー宮城県予選、準決勝。
体育館に足を踏み入れると、中は熱気に包まれていた。
観客席の隙間を見つけて座り、手元の対戦表に目を落とす。
相手は烏野高校。
事前にインターハイの試合結果を調べてきたところ、一度勝っている相手だった。
コートを見渡すと、案の定、スターティングメンバーの中に矢巾君の姿はない。
代わりに、同じ2年生の渡君、そして少し離れて険しい顔をした京谷君がいた。
じゃあ、矢巾君は……?
「……あ、いた」
控えエリアに目を向けると、ようやく彼の後ろ姿を見つけた。
及川先輩がいるチームで、2年生の彼が控えに回るのは仕方のないことなのかもしれない。
試合は序盤から息を呑むような攻防が続いた。
取って取られてを繰り返すシーソーゲーム。
だけど、最後の一押しが届かず、第1セットは烏野に奪われてしまう。
大丈夫、大丈夫。
次を取り返せばいいんだから……!
無意識に膝の上で拳をギュッと握りしめる。
周りを見渡せば、及川先輩の名前を書いたうちわを振る女の子たちばかりだ。
誰もがエースや主将の活躍に期待している。
この広い会場で、試合に出ていない矢巾君の出番を、あんなにも必死に願って見つめているのは、きっと私だけだ。
2セット目からは京谷君が投入された。
金髪の剃り込みに鋭い眼光。
正直、真面目に部活をやっているイメージはなかったけれど、彼が放ったスパイクが床を叩きつけた瞬間、空気が変わった。
「うわ……」
思わず声が漏れる。
大砲のようなパワー。
だけど、素人目ながら、他の選手が動きにくそうに感じた。
結局、京谷君は一度ベンチに下げられた。
試合の行方も気になるけれど、私はどうしても控え席の2人に目が釘付けになった。
「何やってんだお前!」
矢巾君の怒号が聞こえた気がした。
あの、いつも女の子を口説いてヘラヘラしている矢巾君が、自分より何倍も怖そうな京谷君の胸ぐらを掴まんばかりの勢いで詰め寄っている。
「先輩の晴れ舞台に泥塗ったら、絶対に許さねえからな」
その顔は、私が知っている不真面目な彼のものではなかった。
自分が出れない試合で、もどかしい思いをしているはずなのに、彼はチームのために叫んでいる。
……案外、先輩思いなんだ。
悔しいけれど、不意に心拍数が跳ね上がるのを感じた。
その後、コートに戻った京谷君は別人のように機能し始め、及川先輩のサーブも牙を剥いた。
試合はファイナルセット、限界を超えたラリーが続く。
だけど、最後の1点を烏野に奪われてしまい、青葉城西の3年生の引退が決まった。
矢巾君は、最後まで一度もコートに立つことはなかった。
体育館に足を踏み入れると、中は熱気に包まれていた。
観客席の隙間を見つけて座り、手元の対戦表に目を落とす。
相手は烏野高校。
事前にインターハイの試合結果を調べてきたところ、一度勝っている相手だった。
コートを見渡すと、案の定、スターティングメンバーの中に矢巾君の姿はない。
代わりに、同じ2年生の渡君、そして少し離れて険しい顔をした京谷君がいた。
じゃあ、矢巾君は……?
「……あ、いた」
控えエリアに目を向けると、ようやく彼の後ろ姿を見つけた。
及川先輩がいるチームで、2年生の彼が控えに回るのは仕方のないことなのかもしれない。
試合は序盤から息を呑むような攻防が続いた。
取って取られてを繰り返すシーソーゲーム。
だけど、最後の一押しが届かず、第1セットは烏野に奪われてしまう。
大丈夫、大丈夫。
次を取り返せばいいんだから……!
無意識に膝の上で拳をギュッと握りしめる。
周りを見渡せば、及川先輩の名前を書いたうちわを振る女の子たちばかりだ。
誰もがエースや主将の活躍に期待している。
この広い会場で、試合に出ていない矢巾君の出番を、あんなにも必死に願って見つめているのは、きっと私だけだ。
2セット目からは京谷君が投入された。
金髪の剃り込みに鋭い眼光。
正直、真面目に部活をやっているイメージはなかったけれど、彼が放ったスパイクが床を叩きつけた瞬間、空気が変わった。
「うわ……」
思わず声が漏れる。
大砲のようなパワー。
だけど、素人目ながら、他の選手が動きにくそうに感じた。
結局、京谷君は一度ベンチに下げられた。
試合の行方も気になるけれど、私はどうしても控え席の2人に目が釘付けになった。
「何やってんだお前!」
矢巾君の怒号が聞こえた気がした。
あの、いつも女の子を口説いてヘラヘラしている矢巾君が、自分より何倍も怖そうな京谷君の胸ぐらを掴まんばかりの勢いで詰め寄っている。
「先輩の晴れ舞台に泥塗ったら、絶対に許さねえからな」
その顔は、私が知っている不真面目な彼のものではなかった。
自分が出れない試合で、もどかしい思いをしているはずなのに、彼はチームのために叫んでいる。
……案外、先輩思いなんだ。
悔しいけれど、不意に心拍数が跳ね上がるのを感じた。
その後、コートに戻った京谷君は別人のように機能し始め、及川先輩のサーブも牙を剥いた。
試合はファイナルセット、限界を超えたラリーが続く。
だけど、最後の1点を烏野に奪われてしまい、青葉城西の3年生の引退が決まった。
矢巾君は、最後まで一度もコートに立つことはなかった。
