頑固ちゃんと不真面目君
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あの日、デート事件以来、矢巾君の態度は明らかに変わった。
もちろん、実際にどこかへ遊びに行ったワケじゃない。
あんなのは、彼が得意とする軽口の延長線上にある冗談に決まっている。
それなのに。
「◯◯さん、おはよう!今日も眠そうだね!」
「おはよう……」
以前なら考えられなかった朝の挨拶が、今では日常の風景になりつつある。
他の女の子たちに余所見をせず、なぜか私に構うようになったのだ。
ついに彼の脳内辞書に“誠実“の二文字が書き加えられたのか、あるいは単なる気まぐれか。
そんな私の疑念など露知らず、矢巾君は唐突に真面目な顔を作って切り出した。
「俺さ、考えたんだけど」
「……何を?」
嫌な予感がして、私は教科書を広げる手を止めた。
「デートはダメでも、試合の応援ならどう?」
得意げに話す彼に、私は拍子抜けしてしまった。
もっと他に考えるべきことがあるだろうに。
試合、というのはもちろん、彼が所属しているバレーボール部のことだろう。
「どうって言われても……。私、バレー部に知り合いいないし」
「俺は知り合いじゃないのかよ……」
矢巾君は大袈裟に肩を落とし、わざとらしくシュンとして見せた。
「あ、いや、そんなつもりじゃ……」
慌ててフォローを入れる。
私が言いたかったのは、コートの中に知り合いがいない、ということだ。
矢巾君は、確かまだスタメンじゃなかったはず。あの有名な及川先輩と同じセッターというポジションだと、風の噂で聞いたことがある。
及川先輩のファンではない私ですら、そのポジション争いの過酷さは想像に難くない。
「それなら決まり!絶対に応援来てね。約束だよ」
「ええ……まあ、それくらいなら、いいけど」
彼の必死な押しに負けて、私はつい頷いてしまった。
「よし!じゃあ、最高に格好良いところ見せなきゃな」
彼は嬉しそうに笑って、自分の席で拳を握る。
自分が試合に出られるかどうかも分からないのに、どうしてそんなに自信満々に誘えるんだろう。
それとも、出られる可能性にすべてを賭けているのか。
応援に行けば、その理由が少しは分かるのかもしれない。
若干、約束をしてしまったことを後悔しつつも、私の心はすでに、試合のことでいっぱいだった。
もちろん、実際にどこかへ遊びに行ったワケじゃない。
あんなのは、彼が得意とする軽口の延長線上にある冗談に決まっている。
それなのに。
「◯◯さん、おはよう!今日も眠そうだね!」
「おはよう……」
以前なら考えられなかった朝の挨拶が、今では日常の風景になりつつある。
他の女の子たちに余所見をせず、なぜか私に構うようになったのだ。
ついに彼の脳内辞書に“誠実“の二文字が書き加えられたのか、あるいは単なる気まぐれか。
そんな私の疑念など露知らず、矢巾君は唐突に真面目な顔を作って切り出した。
「俺さ、考えたんだけど」
「……何を?」
嫌な予感がして、私は教科書を広げる手を止めた。
「デートはダメでも、試合の応援ならどう?」
得意げに話す彼に、私は拍子抜けしてしまった。
もっと他に考えるべきことがあるだろうに。
試合、というのはもちろん、彼が所属しているバレーボール部のことだろう。
「どうって言われても……。私、バレー部に知り合いいないし」
「俺は知り合いじゃないのかよ……」
矢巾君は大袈裟に肩を落とし、わざとらしくシュンとして見せた。
「あ、いや、そんなつもりじゃ……」
慌ててフォローを入れる。
私が言いたかったのは、コートの中に知り合いがいない、ということだ。
矢巾君は、確かまだスタメンじゃなかったはず。あの有名な及川先輩と同じセッターというポジションだと、風の噂で聞いたことがある。
及川先輩のファンではない私ですら、そのポジション争いの過酷さは想像に難くない。
「それなら決まり!絶対に応援来てね。約束だよ」
「ええ……まあ、それくらいなら、いいけど」
彼の必死な押しに負けて、私はつい頷いてしまった。
「よし!じゃあ、最高に格好良いところ見せなきゃな」
彼は嬉しそうに笑って、自分の席で拳を握る。
自分が試合に出られるかどうかも分からないのに、どうしてそんなに自信満々に誘えるんだろう。
それとも、出られる可能性にすべてを賭けているのか。
応援に行けば、その理由が少しは分かるのかもしれない。
若干、約束をしてしまったことを後悔しつつも、私の心はすでに、試合のことでいっぱいだった。
