頑固ちゃんと不真面目君
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翌朝、教室の扉を開けると、そこには少し意外な光景が広がっていた。
いつもなら女の子に鼻の下を伸ばしているはずの矢巾君が、珍しく1人きりで自分の席に座っていたのだ。
まあ、そんな日もあるよね……。
特に気にも留めずに、私は自分の席に着き、鞄から教科書を取り出した。
すると、隣からじっと刺さるような視線を感じる。
「……ねえ、◯◯さん」
「何?」
顔を上げずに聞き返すと、矢巾君は椅子の背もたれに体重を預け、少し不満そうに私を見ていた。
「挨拶くらいしてもよくない?仮にも隣の席なんだし」
思わず教科書を出す手が止まる。
いつも女の子と喋っているから、私と朝の挨拶なんかしたことがないクセに。
どうして今日に限って挨拶を要求してくるんだろう。
自分勝手な理屈に呆れながらも、無視する理由もなく、私は努めて平静を装って答えた。
「……おはよう」
「ん、おはよう……」
「……」
それで会話は途切れた。
それだけのために、わざわざあんな言い方をしたの?
不審に思って横目で彼を盗み見ると、矢巾君はまだ何か言いたそうに口をモゴモゴさせている。
その落ち着かない様子に、私は黙って次の言葉を待った。
「あの、さ……。昨日のことなんだけど、からかっているように聞こえたなら謝る。ごめん」
「……大丈夫だよ」
そっけなく返したけれど、本当は全然大丈夫なんかじゃない。
昨日の帰り道、すれ違った友達に「顔が真っ赤だけど熱でもあるの?」なんて心配されるほど、私は動揺していたのだから。
「でも、◯◯さんともデートしてみたいと思ったのは本当だから!」
身を乗り出して、彼は必死に付け加えた。
「私とも」ね。
その余計な一言が、私の心を閉ざす。
「それはどうも。話はそれだけ?」
「あ、うん……」
突き放すような言い方をしてしまった自覚はある。
だけど、調子のいい言葉でその場を凌ごうとする彼が悪いのだ。
それなのに、矢巾君は一瞬だけ傷ついた顔をした。
その表情に、私の胸がわずかに疼く。
「そう言えば、今日はサヤカちゃんだっけ?来てないんだね」
嫌味を込めて聞いてみた。
振られたばかりのマコちゃんの次は、サヤカちゃんにデートしてもらえばいいのに。
そう思って。
「あー……、なんか、俺と喋るのは楽しいけど、付き合うのは違うって。今朝、きっぱり言われた」
「えっ……」
まさかの連敗。
私が登校するまでのわずかな間に、彼はまた1つ玉砕していたらしい。
一瞬だけ同情しそうになったけれど、すぐに思い直す。
自業自得だ。
色んな子に愛想を振りまいているから、誰からも本気にされないんだ。
「これに懲りたら、もっと誠実になることだね」
呆れ果ててアドバイスを送ると、矢巾君はパッと顔を上げ、笑顔で私を見つめた。
「それじゃあ、◯◯さん。誠実に俺とデートしない?」
「しない」
「即答かよ!」
当然だ。
彼は誠実の意味を分かっていない。
がっくりと肩を落とす矢巾君を無視して、私は彼の反対を向いた。
かすかに上がっている口角を、彼に見られないために。
いつもなら女の子に鼻の下を伸ばしているはずの矢巾君が、珍しく1人きりで自分の席に座っていたのだ。
まあ、そんな日もあるよね……。
特に気にも留めずに、私は自分の席に着き、鞄から教科書を取り出した。
すると、隣からじっと刺さるような視線を感じる。
「……ねえ、◯◯さん」
「何?」
顔を上げずに聞き返すと、矢巾君は椅子の背もたれに体重を預け、少し不満そうに私を見ていた。
「挨拶くらいしてもよくない?仮にも隣の席なんだし」
思わず教科書を出す手が止まる。
いつも女の子と喋っているから、私と朝の挨拶なんかしたことがないクセに。
どうして今日に限って挨拶を要求してくるんだろう。
自分勝手な理屈に呆れながらも、無視する理由もなく、私は努めて平静を装って答えた。
「……おはよう」
「ん、おはよう……」
「……」
それで会話は途切れた。
それだけのために、わざわざあんな言い方をしたの?
不審に思って横目で彼を盗み見ると、矢巾君はまだ何か言いたそうに口をモゴモゴさせている。
その落ち着かない様子に、私は黙って次の言葉を待った。
「あの、さ……。昨日のことなんだけど、からかっているように聞こえたなら謝る。ごめん」
「……大丈夫だよ」
そっけなく返したけれど、本当は全然大丈夫なんかじゃない。
昨日の帰り道、すれ違った友達に「顔が真っ赤だけど熱でもあるの?」なんて心配されるほど、私は動揺していたのだから。
「でも、◯◯さんともデートしてみたいと思ったのは本当だから!」
身を乗り出して、彼は必死に付け加えた。
「私とも」ね。
その余計な一言が、私の心を閉ざす。
「それはどうも。話はそれだけ?」
「あ、うん……」
突き放すような言い方をしてしまった自覚はある。
だけど、調子のいい言葉でその場を凌ごうとする彼が悪いのだ。
それなのに、矢巾君は一瞬だけ傷ついた顔をした。
その表情に、私の胸がわずかに疼く。
「そう言えば、今日はサヤカちゃんだっけ?来てないんだね」
嫌味を込めて聞いてみた。
振られたばかりのマコちゃんの次は、サヤカちゃんにデートしてもらえばいいのに。
そう思って。
「あー……、なんか、俺と喋るのは楽しいけど、付き合うのは違うって。今朝、きっぱり言われた」
「えっ……」
まさかの連敗。
私が登校するまでのわずかな間に、彼はまた1つ玉砕していたらしい。
一瞬だけ同情しそうになったけれど、すぐに思い直す。
自業自得だ。
色んな子に愛想を振りまいているから、誰からも本気にされないんだ。
「これに懲りたら、もっと誠実になることだね」
呆れ果ててアドバイスを送ると、矢巾君はパッと顔を上げ、笑顔で私を見つめた。
「それじゃあ、◯◯さん。誠実に俺とデートしない?」
「しない」
「即答かよ!」
当然だ。
彼は誠実の意味を分かっていない。
がっくりと肩を落とす矢巾君を無視して、私は彼の反対を向いた。
かすかに上がっている口角を、彼に見られないために。
