告白する相手を間違えました
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~告白する相手を間違えました〜
昇降口から逃げるように去る私。
今まさに私にとって一世一代の勇気を振り絞ったところだ。
思いを寄せている矢野君。
彼の下駄箱に告白の手紙を入れてきた。
矢野君とは1年生のときに同じクラスになり、仲が良くなった。
だけど2年生に上がった今ではクラスが分かれてしまったせいで、話す機会が減った。
だから、このまま疎遠になるくらいなら告白をするんだ。
ちゃんと手紙を読んでくれれば、授業終わりに体育館裏にある大きな木の下まで来てくれるはず。
ーーーー
約束の時間。
私は誰よりも早く教室を出て、待ち合わせ場所の木の下で、矢野君が来るのを待った。
ああ、緊張する。
手に“人”の字を書いて何回飲み込んだことか。
俯いて、足元を見ていると、視界に私以外の靴が映り込んだ。
「●●ちゃん?」
や、矢野君だ!
顔を見ると緊張で言葉が出なくなってしまうかもしれない。
私は俯いたまま、矢野君に思いを伝えた。
「あの……手紙読んでくれてありがとう。私、ずっとアナタのことが好きで……その……えっと……もしよければ私と付き合ってください!」
目をぎゅっと閉じて右手を前に出した。
すると、
「こちらこそ、よろしく」
そっと私の手を握ってくれた矢野君………じゃない?!
顔を上げると矢野君と同じクラスの矢巾君がいた。
もしかして私、下駄箱を一つ間違えて矢巾君のところに手紙を入れちゃった?!
今さら間違えました、なんて言い難くて、
「あ、はい」
と、よく分からない返事をしてしまった。
「それじゃあ、早速連絡先を交換しようか」
スマホを取り出してニッコリと笑う矢巾君。
矢巾君のことはよく知らないけれど、悪い人ではなさそう?
ひょっとして訂正するなら今なのでは?
そそっかしいなって笑い飛ばしてくれるはず。
「あのっ!」
勇気を振り絞って矢巾君に呼びかけると、
「あ、ちょっと待ってね」
矢巾君は遠くに見えた男子生徒に向って叫びだした。
「おい、京谷!部活サボるなよ!」
「あ゛あ?うるせーな!」
京谷と呼ばれた男子生徒は矢巾君の言葉を無視して、体育館とは逆の方向へと歩いていった。
京谷君とは話したことないけれど、名前くらいは知っている。
隈取のような目元に、目つきはキツく、金髪坊主を刈り上げた2本線が特徴的な髪型をしている。
そんな怖そうな人に向かって強気な発言をする矢巾君も実は怖い人なのかも。
「ったく、アイツ……ごめんね〜。で、なんだっけ」
京谷君と話していたときとは違って優しい声色だけど、裏があるように見えて仕方がない。
「えっと……」
こんな人に告白する相手を間違えました、なんてやっぱり言えない。
「スマホを教室に忘れちゃって……」
咄嗟に下らない嘘を吐いてしまった。
「そっか〜。俺、この後直ぐに部活行かないと行けないから、また今度交換しようね」
そう言うと、矢巾君は部活へと向かった。
「……はぁ〜」
息が詰まるかと思った。
結局私はよく知らない矢巾君と付き合うことになってしまった。
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