薬物注意報
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図書館を出た私は、足早に最寄りのドラッグストアへと向かった。
外はすっかり夕暮れ。
自動ドアをくぐると、私は迷わず店内の奥にある“頭痛”と書かれたポップがぶら下がるコーナーへと足を運んだ。
私は棚に並んだ愛用の鎮痛剤の前で立ち止まった。
前は60錠入りを買ったけれど、今回は90錠入りにしようかな……。
でも、量に余裕があると安心して飲み過ぎちゃうかもしれない……。
「う〜ん……」
私は60錠入りと90錠入りの箱を両手に持ち、真剣な表情でにらめっこをした。
その時、背後から声をかけられた。
鋭く、少し冷ややかな、聞き慣れた声。
「●●?」
「えっ?」
呼ばれた方を慌てて振り向くと、そこには白鳥沢の制服姿の白布君が立っていた。
「今、学校帰りか?」
「ううん。図書館寄ってた。白布君は?」
「部活が始まる前にテーピングを買っておこうと思って」
そう言って、彼は視線を手元にやるよう促した。
その手には、会計前の真っ白いテーピングがしっかりと握られていた。
……ああ、そうか。
優秀な人は、テスト期間中でも、目の前のことだけでなく、その後の部活の準備までできているんだ。
なんて、体調が悪いせいか、ひどくひねくれた思考が頭をよぎる。
そんな醜い感情を悟られないよう、私はきゅっと口を結んだ。
そんな私の考えなんてお構いなしに、白布君は私の持っている痛み止めを指差しながら、いつも通り淡々と話題を振ってきた。
「それ、買うのか?」
「うん。前と同じ量か、多い方にしようか迷って」
「……こっちにしとけ」
「あっ」
そう言うと、白布君は私の手から迷いなく60錠の方の箱を奪い取った。
そして、そのまま何の躊躇いもなく、スタスタとレジの方へ歩き出す。
「ねえ!待って」
私は慌てて呼びかけたけれど、彼は歩みを止めてくれない。
私が追いついた時には、すでにテーピングと一緒に私の鎮痛剤もレジを通され、白布君が財布から札を出しているところだった。
取り消してくださいって言うべき?
でも、今さら迷惑かも……。
うじうじと躊躇っている私に、会計を終えた白布君は、シャカシャカと音を立てるビニール袋から薬の箱を取り出し、ポンッと手渡した。
「ほら」
「お金っ!いくらだった?」
私は反射的に鞄から財布を取り出そうとした。
だけど、白布君は私の腕を掴んでその動きを阻止した。
「いい」
意外な力強さに、私は動きを止める。
「でも……」
「そこは“ありがとう”、でいいんだよ」
一瞬、彼の表情が緩んだ気がした。
私は戸惑いながらも、素直に言葉を絞り出す。
「……ありがとう」
「よし」
何故か満足気な白布君に、私の戸惑いはさらに深まる。
ドラッグストアを出ると、外はもう完全に夜になっていた。
冷たい空気が頬を撫でる。
「外出申請出していないから、送ってやれないけど、1人で帰れるよな?」
白布君は、白鳥沢の校門とは逆方向の道を指差しながら言った。
彼の家は寮なのだと思い出し、胸の奥に、ほんの少しの寂しさを感じた。
……寂しさ?
いつも1人で帰っているのに、変なの。
「うん、大丈夫。ありがとう」
「じゃあな。あんま薬飲みすぎるなよ」
その一言に、彼の取った行動のワケを垣間見た気がした。
60錠の方にしたのは、薬の量を減らしたい、彼なりの牽制だったのかもしれない。
「善処します……」
私はそう返事をしつつも、正直、自信はなかった。
白布君は、後ろ向きに歩きながら、ヒラヒラと私に手を振った。
私も、さっさと帰って、残りの勉強をしないと。
私は、白布君に買ってもらったばかりの鎮痛剤の箱を、手のひらできゅっと握り締めた。
そして、一度も振り返ることなく、白布君とは反対の方向へと足を進めた。
外はすっかり夕暮れ。
自動ドアをくぐると、私は迷わず店内の奥にある“頭痛”と書かれたポップがぶら下がるコーナーへと足を運んだ。
私は棚に並んだ愛用の鎮痛剤の前で立ち止まった。
前は60錠入りを買ったけれど、今回は90錠入りにしようかな……。
でも、量に余裕があると安心して飲み過ぎちゃうかもしれない……。
「う〜ん……」
私は60錠入りと90錠入りの箱を両手に持ち、真剣な表情でにらめっこをした。
その時、背後から声をかけられた。
鋭く、少し冷ややかな、聞き慣れた声。
「●●?」
「えっ?」
呼ばれた方を慌てて振り向くと、そこには白鳥沢の制服姿の白布君が立っていた。
「今、学校帰りか?」
「ううん。図書館寄ってた。白布君は?」
「部活が始まる前にテーピングを買っておこうと思って」
そう言って、彼は視線を手元にやるよう促した。
その手には、会計前の真っ白いテーピングがしっかりと握られていた。
……ああ、そうか。
優秀な人は、テスト期間中でも、目の前のことだけでなく、その後の部活の準備までできているんだ。
なんて、体調が悪いせいか、ひどくひねくれた思考が頭をよぎる。
そんな醜い感情を悟られないよう、私はきゅっと口を結んだ。
そんな私の考えなんてお構いなしに、白布君は私の持っている痛み止めを指差しながら、いつも通り淡々と話題を振ってきた。
「それ、買うのか?」
「うん。前と同じ量か、多い方にしようか迷って」
「……こっちにしとけ」
「あっ」
そう言うと、白布君は私の手から迷いなく60錠の方の箱を奪い取った。
そして、そのまま何の躊躇いもなく、スタスタとレジの方へ歩き出す。
「ねえ!待って」
私は慌てて呼びかけたけれど、彼は歩みを止めてくれない。
私が追いついた時には、すでにテーピングと一緒に私の鎮痛剤もレジを通され、白布君が財布から札を出しているところだった。
取り消してくださいって言うべき?
でも、今さら迷惑かも……。
うじうじと躊躇っている私に、会計を終えた白布君は、シャカシャカと音を立てるビニール袋から薬の箱を取り出し、ポンッと手渡した。
「ほら」
「お金っ!いくらだった?」
私は反射的に鞄から財布を取り出そうとした。
だけど、白布君は私の腕を掴んでその動きを阻止した。
「いい」
意外な力強さに、私は動きを止める。
「でも……」
「そこは“ありがとう”、でいいんだよ」
一瞬、彼の表情が緩んだ気がした。
私は戸惑いながらも、素直に言葉を絞り出す。
「……ありがとう」
「よし」
何故か満足気な白布君に、私の戸惑いはさらに深まる。
ドラッグストアを出ると、外はもう完全に夜になっていた。
冷たい空気が頬を撫でる。
「外出申請出していないから、送ってやれないけど、1人で帰れるよな?」
白布君は、白鳥沢の校門とは逆方向の道を指差しながら言った。
彼の家は寮なのだと思い出し、胸の奥に、ほんの少しの寂しさを感じた。
……寂しさ?
いつも1人で帰っているのに、変なの。
「うん、大丈夫。ありがとう」
「じゃあな。あんま薬飲みすぎるなよ」
その一言に、彼の取った行動のワケを垣間見た気がした。
60錠の方にしたのは、薬の量を減らしたい、彼なりの牽制だったのかもしれない。
「善処します……」
私はそう返事をしつつも、正直、自信はなかった。
白布君は、後ろ向きに歩きながら、ヒラヒラと私に手を振った。
私も、さっさと帰って、残りの勉強をしないと。
私は、白布君に買ってもらったばかりの鎮痛剤の箱を、手のひらできゅっと握り締めた。
そして、一度も振り返ることなく、白布君とは反対の方向へと足を進めた。
