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数日後。
いつものようにレナと食堂でお昼ご飯を食べていると、賢二郎からのメッセージを受信した。
“午後の講義、休講になった。会う?”
不意打ちの誘いに、心臓が跳ねる。
会わないワケがない。
だけど、こんなときに限って、私の午後の予定表には、外せない必修科目の講義が書き込まれている。
「なになに、彼氏君?それにしては難しい顔してるけど」
向かい側に座っていたレナが、私のスマホを覗き込んできた。
「うわっ!相変わらずクールだねぇ……」
レナは呆れたように肩をすくめ、戯っぽく身を乗り出してきた。
「講義、サボっちゃえば?代返なら、私がしてあげるし」
レナがニヤニヤしながら私の声真似をして茶化してくる。
だけど、そんな不誠実なことをしたら、あの真面目な賢二郎はいい顔をしないだろう。
私は素直に、講義があることを伝えた。
“ごめん、講義ある”
送信ボタンを押すと、数秒もしないうちに画面が再び光った。
“なら、終わるまで待ってる”
「……えっ」
思わず声が漏れた。
スマホを覗き込んだままのレナが、今度は大袈裟に目を見開く。
「待ってるって。●●、愛されてる〜!」
「もう、見ないでよ!」
私は熱くなった頬を誤魔化すように、スマホの電源を消した。
……。
…………。
街が夕焼けに染まる頃。
駅前のカフェの入り口で、賢二郎は壁に背を預けて立っていた。
「ごめんね、お待たせ!」
駆け寄る私の声に、彼はゆっくりと顔を上げた。
「別に……。そこのカフェでレポートやってたから」
相変わらずの素っ気ない口調。
賢二郎は視線を逸らしながら、鞄を肩にかけ直した。
「そっか。じゃあ、行こうか。私の家でいいよね?」
「……その前に」
歩き出そうとした私を、彼が呼び止める。
立ち止まった私に対し、賢二郎はポケットをゴソゴソと探り、手のひらに何かを乗せて差し出してきた。
「これ、やるよ」
それは、トランプのスペードをモチーフにした、小さな目印チャームだった。
「え、ありがとう……。でも、これ、どうしたの?」
「待ってる間、暇潰しにそこのガチャガチャやった。……いらないなら、返せ」
「いる!いる!絶対返さない!」
私が慌てて握りしめると、彼は「ふん」と鼻を鳴らして、さっさと歩き出した。
その後ろ姿を追いかけようとして、ふと、彼が立っていた場所のすぐ横にあるガチャガチャの筐体が目に留まった。
ラインナップの筆頭にあるのは、赤く輝くハートのチャーム。
もしかして、この間、心臓を描いたことを彼なりに気にしていたんだろうか。
本当は、あの赤いハートを渡したかったんだろうか。
「……」
「ほら、何ボサっとしてんだ。行くぞ」
「あ、うん。待って!」
ぶっきらぼうな彼の背中を追いかける。
夕日に照らされた彼の耳たぶが、ほんの少しだけ赤く見えた。
それだけで、私にとってこのスペードはハート以上の価値になる。
ーーFinーー
いつものようにレナと食堂でお昼ご飯を食べていると、賢二郎からのメッセージを受信した。
“午後の講義、休講になった。会う?”
不意打ちの誘いに、心臓が跳ねる。
会わないワケがない。
だけど、こんなときに限って、私の午後の予定表には、外せない必修科目の講義が書き込まれている。
「なになに、彼氏君?それにしては難しい顔してるけど」
向かい側に座っていたレナが、私のスマホを覗き込んできた。
「うわっ!相変わらずクールだねぇ……」
レナは呆れたように肩をすくめ、戯っぽく身を乗り出してきた。
「講義、サボっちゃえば?代返なら、私がしてあげるし」
レナがニヤニヤしながら私の声真似をして茶化してくる。
だけど、そんな不誠実なことをしたら、あの真面目な賢二郎はいい顔をしないだろう。
私は素直に、講義があることを伝えた。
“ごめん、講義ある”
送信ボタンを押すと、数秒もしないうちに画面が再び光った。
“なら、終わるまで待ってる”
「……えっ」
思わず声が漏れた。
スマホを覗き込んだままのレナが、今度は大袈裟に目を見開く。
「待ってるって。●●、愛されてる〜!」
「もう、見ないでよ!」
私は熱くなった頬を誤魔化すように、スマホの電源を消した。
……。
…………。
街が夕焼けに染まる頃。
駅前のカフェの入り口で、賢二郎は壁に背を預けて立っていた。
「ごめんね、お待たせ!」
駆け寄る私の声に、彼はゆっくりと顔を上げた。
「別に……。そこのカフェでレポートやってたから」
相変わらずの素っ気ない口調。
賢二郎は視線を逸らしながら、鞄を肩にかけ直した。
「そっか。じゃあ、行こうか。私の家でいいよね?」
「……その前に」
歩き出そうとした私を、彼が呼び止める。
立ち止まった私に対し、賢二郎はポケットをゴソゴソと探り、手のひらに何かを乗せて差し出してきた。
「これ、やるよ」
それは、トランプのスペードをモチーフにした、小さな目印チャームだった。
「え、ありがとう……。でも、これ、どうしたの?」
「待ってる間、暇潰しにそこのガチャガチャやった。……いらないなら、返せ」
「いる!いる!絶対返さない!」
私が慌てて握りしめると、彼は「ふん」と鼻を鳴らして、さっさと歩き出した。
その後ろ姿を追いかけようとして、ふと、彼が立っていた場所のすぐ横にあるガチャガチャの筐体が目に留まった。
ラインナップの筆頭にあるのは、赤く輝くハートのチャーム。
もしかして、この間、心臓を描いたことを彼なりに気にしていたんだろうか。
本当は、あの赤いハートを渡したかったんだろうか。
「……」
「ほら、何ボサっとしてんだ。行くぞ」
「あ、うん。待って!」
ぶっきらぼうな彼の背中を追いかける。
夕日に照らされた彼の耳たぶが、ほんの少しだけ赤く見えた。
それだけで、私にとってこのスペードはハート以上の価値になる。
ーーFinーー
