ハートをください
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翌日。
私の部屋にやってきた賢二郎は、案の定、挨拶もそこそこにノートパソコンを広げていた。
「……賢二郎」
「んー?」
画面を見つめたまま、指先だけが規則正しくキーボードを叩く。
少しは私の方を見てほしい。
そんな独占欲が、昨日のレナとの会話を思い出させた。
「ちょっと、これにハート描いてみてよ」
私は手近なノートとペンを、彼のキーボードの上に強引に置いた。
賢二郎は一瞬だけ指を止め、怪訝そうに眉を寄せる。
「は?なんだよ急に。今、レポートのまとめを……」
「お願い!簡単でいいから、ここにハート描いて」
子供っぽいワガママだとは分かっている。
だけど、彼が描く不器用なハートマークが見てみたかった。
いつも冷たい態度を崩さない彼が、私のためになぞる可愛らしい記号。
そのギャップが欲しかったのだ。
「……めんどくせぇな」
毒づきながらも、賢二郎はペンを取った。
彼はそのまま、サラサラと迷いなくペンを走らせる。
どれどれと、横から覗こうとしたけれど、彼は腕で器用に手元を隠した。
ただ、そのペンの動きはハートを描くにしては、あまりに複雑で、あまりに長い。
もしかして……「好き」とか、メッセージも書いてくれてる?
期待に胸が高鳴る。
数分後。
「ほらよ、これで満足かよ」
ぶっきらぼうに投げ返されたノートを、私は勢いよくひったくった。
「ありが……えっ!?」
目に飛び込んできたのは、期待していたピンク色の記号ではなかった。
緻密な線で描かれた臓器。
「これって……」
「心臓 だけど」
賢二郎は平然とした顔で、再びパソコンに向き直った。
「いや、違わなくはないけど……そうじゃないでしょ!普通、ハートって言われたら、記号の方を想像しない?」
「●●がハートを描けって言ったんだろ。記号なんて言われてねぇし」
呆れたように鼻で笑う彼を見て、私は思わず脱力してしまった。
ロマンチックの欠片もない。
だけど、一生懸命に描いてくれたこの生々しいハートこそ、毎日必死に医学と向き合っている彼の表れなのかもしれない。
「……ふふっ、あはは!」
「何笑ってんだよ、気持ち悪い」
「なんでもなーい。あーあ、賢二郎らしいや」
レナの彼氏のような甘い言葉は、きっと一生もらえないだろう。
それでも、私の突拍子もない無茶振りに、彼なりの全力で応えてくれたこのリアルな心臓が、今は愛おしくて仕方がなかった。
私の部屋にやってきた賢二郎は、案の定、挨拶もそこそこにノートパソコンを広げていた。
「……賢二郎」
「んー?」
画面を見つめたまま、指先だけが規則正しくキーボードを叩く。
少しは私の方を見てほしい。
そんな独占欲が、昨日のレナとの会話を思い出させた。
「ちょっと、これにハート描いてみてよ」
私は手近なノートとペンを、彼のキーボードの上に強引に置いた。
賢二郎は一瞬だけ指を止め、怪訝そうに眉を寄せる。
「は?なんだよ急に。今、レポートのまとめを……」
「お願い!簡単でいいから、ここにハート描いて」
子供っぽいワガママだとは分かっている。
だけど、彼が描く不器用なハートマークが見てみたかった。
いつも冷たい態度を崩さない彼が、私のためになぞる可愛らしい記号。
そのギャップが欲しかったのだ。
「……めんどくせぇな」
毒づきながらも、賢二郎はペンを取った。
彼はそのまま、サラサラと迷いなくペンを走らせる。
どれどれと、横から覗こうとしたけれど、彼は腕で器用に手元を隠した。
ただ、そのペンの動きはハートを描くにしては、あまりに複雑で、あまりに長い。
もしかして……「好き」とか、メッセージも書いてくれてる?
期待に胸が高鳴る。
数分後。
「ほらよ、これで満足かよ」
ぶっきらぼうに投げ返されたノートを、私は勢いよくひったくった。
「ありが……えっ!?」
目に飛び込んできたのは、期待していたピンク色の記号ではなかった。
緻密な線で描かれた臓器。
「これって……」
「
賢二郎は平然とした顔で、再びパソコンに向き直った。
「いや、違わなくはないけど……そうじゃないでしょ!普通、ハートって言われたら、記号の方を想像しない?」
「●●がハートを描けって言ったんだろ。記号なんて言われてねぇし」
呆れたように鼻で笑う彼を見て、私は思わず脱力してしまった。
ロマンチックの欠片もない。
だけど、一生懸命に描いてくれたこの生々しいハートこそ、毎日必死に医学と向き合っている彼の表れなのかもしれない。
「……ふふっ、あはは!」
「何笑ってんだよ、気持ち悪い」
「なんでもなーい。あーあ、賢二郎らしいや」
レナの彼氏のような甘い言葉は、きっと一生もらえないだろう。
それでも、私の突拍子もない無茶振りに、彼なりの全力で応えてくれたこのリアルな心臓が、今は愛おしくて仕方がなかった。
