キミは何も悪くない
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〜キミは何も悪くない〜
「ごめん、俺たち別れよう」
誰もいない放課後の教室。
賢二郎はいつもと同じ、感情の読めない澄ました表情で言った。
それはまるで、「明日は雨が降るらしい」と、他愛もない天気予報でも告げるかのような、あまりにも平坦で温度のない声だった。
だから、すぐに現実の言葉として受け止められなかった。
「今……なんて?」
私の問いかけに、賢二郎はため息一つで答える。
「だから、俺たち別れようって言ったんだ」
何度聞いても、一文字も変わらない、冷たく鋭い言葉。
私の体は、鉛のように重いのに、本能的に賢二郎の制服の袖口を掴んで引き止めていた。
「なん……で。私、何かした?ダメなところがあれば直すから!何でも言うこと聞くから!」
反射的に言葉が飛び出す。
頭の中は真っ白なのに、口だけが勝手に動いていた。
傍から見たら、きっと情けなくて、滑稽に見えるだろう。
それでも、私は賢二郎と別れたくなかった。
すると、私の想いが届いたのか、目の前にいる賢二郎の無表情の仮面が、剥がれるように崩れ始めた。
口元は歪み、目も揺れ動き、迷いが感じられる。
その微かな変化に、一筋の希望が見えた。
きっと、賢二郎も別れたくないんだ。
だけど、そんな淡い期待は、すぐに打ち砕かれた。
彼は、私が縋るように掴んでいた袖口を無理やり引き剥がした。
そして、真っ直ぐ私を映していたその黒い瞳は、ふいっと教室の扉へと逸らされた。
もう、私を映そうとはしない。
「●●は、何も悪くない」
それだけを絞り出すように言って、賢二郎は私に背を向け、教室から出ていった。
ガタンッ
扉が閉まる重い音だけが響き渡る。
こうして、納得できる理由を教えてもらえないまま、私と賢二郎の、たった3ヶ月の短い恋は、唐突に終わりを告げた。
1人残された教室で、私は動けないでいる。
現実を受け入れられない。
だって、別れたい前兆なんて微塵も感じなかったから。
直前まで、来週のデートの計画を立てて、笑い合っていたじゃない。
思い出すのは、楽しかった記憶ばかりだ。
初めて手を繋いだ帰り道。
テスト期間中に眠気と闘いながら一緒に勉強した図書室。
サプライズで「たまには出かけよう」と誘ってくれた水族館。
2人とも笑っている映像が、鮮明に脳裏に浮かぶ。
だけど、あのときも、このときも賢二郎の心の内では別れたがっていたのかもしれない。
そう思うと、楽しかった思い出も、急に苦しいものと変わった。
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