熟年夫婦初心者
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ーー松川sideーー
「●●ちゃん、なんて言ってた?」
体育館へ向かう渡り廊下。
隣を歩く及川が、意地の悪い笑みを浮かべて覗き込んできた。
興味津々のところ悪いが、期待させることは何もない。
俺は視線を前方に向けたまま、短く吐き捨てた。
「別に……行った行った、って振り払われたよ」
淡々と答えると、及川は大げさに肩を落とし、わざとらしく嘆いてみせる。
「えー、約束していたのにー!とか、行かないでーって引き止められなかったの?」
「アイツはそんなキャラじゃないよ」
俺は苦笑いをしながら、肩をすくめるだけだった。
◯◯との付き合いは、もう随分長い。
始まりがいつだったか、どんな言葉で付き合ったのかさえ、正直よく思い出せない。
きっと、友達の延長線上のまま自然とそうなったんだろう。
今日だって、予定をキャンセルした俺に対して、彼女は眉ひとつ動かさなかった。
昔はもう少し、不満そうな顔をしていた気もするが、それもいつの間にかなくなった。
だから、一緒にいて苦じゃない。
わがままも言わない、束縛もしない、こちらの事情をすべて察して、微笑んで引いてくれる。
いい意味で、いてもいなくても良い存在。
空気みたいだ。
もちろん、付き合いたてのときは新鮮で毎日が楽しかったと思う。
だけど、人はそれに慣れてしまう。
別れる理由がないからそれを維持している。
きっと◯◯も同じことを思っているはずだ。
それが俺たちの関係。
「長く付き合う秘訣とか教えてほしいよ」
だから、たまに今みたいに長続きの秘訣を聞かれるけど、なんとなく、としか答えられない。
「ははは、及川は別れたばっかりだもんな」
「ちょっと、傷口えぐらないで!」
及川がオーバーに顔をしかめてみせる。
その芝居がかった仕草に、思わず口元が緩んだ。
もし、俺も◯◯と別れることになったら……。
そのときは、やっぱり及川みたいに悲しくなるのだろうか。
それとも、何も変わらない日常を過ごすのだろうか。
そんなことを考えているうちに、体育館へのドアがすぐそこに見えてきた。
「●●ちゃん、なんて言ってた?」
体育館へ向かう渡り廊下。
隣を歩く及川が、意地の悪い笑みを浮かべて覗き込んできた。
興味津々のところ悪いが、期待させることは何もない。
俺は視線を前方に向けたまま、短く吐き捨てた。
「別に……行った行った、って振り払われたよ」
淡々と答えると、及川は大げさに肩を落とし、わざとらしく嘆いてみせる。
「えー、約束していたのにー!とか、行かないでーって引き止められなかったの?」
「アイツはそんなキャラじゃないよ」
俺は苦笑いをしながら、肩をすくめるだけだった。
◯◯との付き合いは、もう随分長い。
始まりがいつだったか、どんな言葉で付き合ったのかさえ、正直よく思い出せない。
きっと、友達の延長線上のまま自然とそうなったんだろう。
今日だって、予定をキャンセルした俺に対して、彼女は眉ひとつ動かさなかった。
昔はもう少し、不満そうな顔をしていた気もするが、それもいつの間にかなくなった。
だから、一緒にいて苦じゃない。
わがままも言わない、束縛もしない、こちらの事情をすべて察して、微笑んで引いてくれる。
いい意味で、いてもいなくても良い存在。
空気みたいだ。
もちろん、付き合いたてのときは新鮮で毎日が楽しかったと思う。
だけど、人はそれに慣れてしまう。
別れる理由がないからそれを維持している。
きっと◯◯も同じことを思っているはずだ。
それが俺たちの関係。
「長く付き合う秘訣とか教えてほしいよ」
だから、たまに今みたいに長続きの秘訣を聞かれるけど、なんとなく、としか答えられない。
「ははは、及川は別れたばっかりだもんな」
「ちょっと、傷口えぐらないで!」
及川がオーバーに顔をしかめてみせる。
その芝居がかった仕草に、思わず口元が緩んだ。
もし、俺も◯◯と別れることになったら……。
そのときは、やっぱり及川みたいに悲しくなるのだろうか。
それとも、何も変わらない日常を過ごすのだろうか。
そんなことを考えているうちに、体育館へのドアがすぐそこに見えてきた。
