あやとりかけとり
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
季節は秋へとすっかり移り変わり、外でも涼しく過ごしやすくなっていた。
そんなある日の昼休み。
いつものベンチに座る私の手元には、もちろん1本の赤い毛糸だ。
その横では、心操君が持ち込んだ黒い毛糸と格闘していた。
「クソッ……!八段まではスムーズにできるようになったんだけどな」
悔しそうに唸る心操君。
以前、私に四段はしごから東京タワーを披露してくれた彼だったけれど、あの後、私が十二段はしごまで作れることがあっさりバレてしまった。
おかげで、その日から私が心操君にあやとりを教えている。
「……そこ、格子状が小さくて絡まりやすいから気を付けて。……そうそう、いい感じ」
捕縛布の練習を終えたばかりの彼の体からは、ほのかに汗の匂いがする。
「……あ、こうだっけ?」
「あってるよ。……あっ、ちょっと待って。ここの指が……」
私は彼の指元の糸の輪に、滑り込ませるように右手を伸ばした。
その時だった。
「わっ……!」
心操君が手元を動かした瞬間、糸の輪が急激にキュッと縮まり、見事に私の右手の小指を締め付けた。
「悪い、引っ張った。今緩めるから」
心操君は糸を緩めようとする。
だけど、彼の指に複雑に巻きついた糸が、それを阻んだ。
「なんか、逆に絡まってない……?」
「あれ?おかしいな……」
解こうとすればするほど黒い糸は交差し、今度は心操君の左手の小指にもキュッと小さな結び目を作ってしまう。
「……あ」
その瞬間、時間が止まったような錯覚に陥った。
視線を落とすと、1本の黒い毛糸が、2人の小指同士をきつく繋ぎ止めている。
う、嘘……でしょ……!?
血の気が引くと同時に、心臓が破裂しそうなほど跳ね上がった。
私の個性『縁結び』。
赤い糸で互いの小指を結べば、互いに強制的に惹かれ合ってしまう。
今、この毛糸は赤ではなく黒だ。
個性なんて発動するはずない。
そもそも、彼に対して個性を発動させる意思なんて全くない。
だけど“糸で互いの小指を結ぶ”という、その情景そのものが頭の中を支配して、パニックに陥っていた。
「……おい、◯◯さん?」
心操君の声でハッと我に返る。
見上げると、彼は不思議そうに眉をひそめていた。
だけど、小指から伝わってくる彼の体温があまりにも鮮明で、より一層私の気持ちを焦らせる。
「ご、ごめん!自分で解くから!すぐ解くから……っ!」
裏返った声で叫びながら、私は慌てて左手を伸ばし、結び目を解こうとした。
だけど、焦れば焦るほど手元は狂い、指先がガタガタと震えて黒い毛糸の結び目をより一層固く締めてしまう。
「おい、落ち着けって。そんな引っ張ったら余計に……」
「大丈夫だから!本当にごめん、すぐ、すぐに……っ!」
顔が熱いのが自分でも分かる。
もし、この毛糸に私の個性が乗っていたら?
もし、彼を私の意思で縛り付けてしまったら?
申し訳なさと恥ずかしさ、そして彼との至近距離に対する過剰な緊張感で、視界がじんわりと滲みそうだった。
「……●●!」
心操君の大きな声と共に、彼の右手がパニックになる私の両手を優しく包み込んだ。
「ひゃい!?」
「暴れるな。俺が解くから、手、止めろ」
大きな手に包まれた瞬間、ピタリと動きが止まる。
心操君はため息をひとつ吐くと、繋がったままの小指をゆっくりと持ち上げた。
指先が触れ合う。
彼の長い指が丁寧に毛糸の絡まりを解いていくのを、私は息を殺して見つめることしかできない。
秋の風が頬を撫でていくけれど、火照った顔は一向に冷めてくれなかった。
視線をどこに向けていいか分からず彷徨わせていると、ふと毛糸を解く心操君の側顔が目に入った。
彼の耳元が、ほんのりと赤く染まっている。
「……よし、解けた」
するりと小指から毛糸が離れ、締め付けられていた痛みが消えた。
心操君は糸を回収すると、気まずそうに少しだけ顔を逸らして首の後ろを掻いた。
「……絡まったくらいで、動揺しすぎなんだよ」
「うぅ……。ごめん……」
「まあ、いいけど」
心操君は呆れたようなトーンでそう言った。
そう、個性なんて発動していない。
ただのハプニングだ。
その証拠に、心操君の様子はいつも通りで、彼が私に強制的に惹かれている様子なんてどこにもない。
それなのに……。
私の胸のバクバクとした激しい高鳴りは、一向に収まる気配を見せなかった。
なんで……?
個性の力なんかじゃない。
もしかして、私、ずっと前から心操君のことが……。
手のひらに残る熱を感じながら、私は自分の気持ちに自問自答した。
そんなある日の昼休み。
いつものベンチに座る私の手元には、もちろん1本の赤い毛糸だ。
その横では、心操君が持ち込んだ黒い毛糸と格闘していた。
「クソッ……!八段まではスムーズにできるようになったんだけどな」
悔しそうに唸る心操君。
以前、私に四段はしごから東京タワーを披露してくれた彼だったけれど、あの後、私が十二段はしごまで作れることがあっさりバレてしまった。
おかげで、その日から私が心操君にあやとりを教えている。
「……そこ、格子状が小さくて絡まりやすいから気を付けて。……そうそう、いい感じ」
捕縛布の練習を終えたばかりの彼の体からは、ほのかに汗の匂いがする。
「……あ、こうだっけ?」
「あってるよ。……あっ、ちょっと待って。ここの指が……」
私は彼の指元の糸の輪に、滑り込ませるように右手を伸ばした。
その時だった。
「わっ……!」
心操君が手元を動かした瞬間、糸の輪が急激にキュッと縮まり、見事に私の右手の小指を締め付けた。
「悪い、引っ張った。今緩めるから」
心操君は糸を緩めようとする。
だけど、彼の指に複雑に巻きついた糸が、それを阻んだ。
「なんか、逆に絡まってない……?」
「あれ?おかしいな……」
解こうとすればするほど黒い糸は交差し、今度は心操君の左手の小指にもキュッと小さな結び目を作ってしまう。
「……あ」
その瞬間、時間が止まったような錯覚に陥った。
視線を落とすと、1本の黒い毛糸が、2人の小指同士をきつく繋ぎ止めている。
う、嘘……でしょ……!?
血の気が引くと同時に、心臓が破裂しそうなほど跳ね上がった。
私の個性『縁結び』。
赤い糸で互いの小指を結べば、互いに強制的に惹かれ合ってしまう。
今、この毛糸は赤ではなく黒だ。
個性なんて発動するはずない。
そもそも、彼に対して個性を発動させる意思なんて全くない。
だけど“糸で互いの小指を結ぶ”という、その情景そのものが頭の中を支配して、パニックに陥っていた。
「……おい、◯◯さん?」
心操君の声でハッと我に返る。
見上げると、彼は不思議そうに眉をひそめていた。
だけど、小指から伝わってくる彼の体温があまりにも鮮明で、より一層私の気持ちを焦らせる。
「ご、ごめん!自分で解くから!すぐ解くから……っ!」
裏返った声で叫びながら、私は慌てて左手を伸ばし、結び目を解こうとした。
だけど、焦れば焦るほど手元は狂い、指先がガタガタと震えて黒い毛糸の結び目をより一層固く締めてしまう。
「おい、落ち着けって。そんな引っ張ったら余計に……」
「大丈夫だから!本当にごめん、すぐ、すぐに……っ!」
顔が熱いのが自分でも分かる。
もし、この毛糸に私の個性が乗っていたら?
もし、彼を私の意思で縛り付けてしまったら?
申し訳なさと恥ずかしさ、そして彼との至近距離に対する過剰な緊張感で、視界がじんわりと滲みそうだった。
「……●●!」
心操君の大きな声と共に、彼の右手がパニックになる私の両手を優しく包み込んだ。
「ひゃい!?」
「暴れるな。俺が解くから、手、止めろ」
大きな手に包まれた瞬間、ピタリと動きが止まる。
心操君はため息をひとつ吐くと、繋がったままの小指をゆっくりと持ち上げた。
指先が触れ合う。
彼の長い指が丁寧に毛糸の絡まりを解いていくのを、私は息を殺して見つめることしかできない。
秋の風が頬を撫でていくけれど、火照った顔は一向に冷めてくれなかった。
視線をどこに向けていいか分からず彷徨わせていると、ふと毛糸を解く心操君の側顔が目に入った。
彼の耳元が、ほんのりと赤く染まっている。
「……よし、解けた」
するりと小指から毛糸が離れ、締め付けられていた痛みが消えた。
心操君は糸を回収すると、気まずそうに少しだけ顔を逸らして首の後ろを掻いた。
「……絡まったくらいで、動揺しすぎなんだよ」
「うぅ……。ごめん……」
「まあ、いいけど」
心操君は呆れたようなトーンでそう言った。
そう、個性なんて発動していない。
ただのハプニングだ。
その証拠に、心操君の様子はいつも通りで、彼が私に強制的に惹かれている様子なんてどこにもない。
それなのに……。
私の胸のバクバクとした激しい高鳴りは、一向に収まる気配を見せなかった。
なんで……?
個性の力なんかじゃない。
もしかして、私、ずっと前から心操君のことが……。
手のひらに残る熱を感じながら、私は自分の気持ちに自問自答した。
