あやとりかけとり
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翌日のお昼休み。
教室でササッとお弁当をかき込み済ませる。
ふと教室を見渡してみたけれど、目当ての薄紫色の髪は見当たらなかった。
きっと、今日も中庭にいるんだ……。
期待と少しの緊張でザワつく胸を抑えながら、私は足早に中庭へと向かった。
日の光が降り注ぐ中、予想通り彼の姿があった。
「心操君!」
声をかけると、捕縛布に弄ばれていた心操君の手がピタリと止まり、ゆっくりとこちらへ振り返った。
「……◯◯さんか」
「毎日練習してるの?」
私は彼の邪魔にならないよう、近くの木陰にあるベンチへ腰掛けながら尋ねた。
「ああ。まだまだ思い通りに動かせないからな」
「そっか。精が出るね」
「……」
心操君は捕縛布を首に巻き直すと、じっと私の顔を見つめて黙り込んだ。
気まずさに耐えかねて首を傾げる。
「……なに?」
「今日はあやとりに付き合ってやれないぞ」
どこか牽制するような彼の言い方に、私は思わずクスッと笑ってしまった。
「ふふ、大丈夫。今日は近々受けるあやとり検定の練習をしたいだけだから」
咄嗟に吐いた適当な嘘。
あやとりの検定なんて存在するのかも分からない。
だけど、「ただ心操君の近くにいたいから来た」なんて口が滑っても言えるはずがなかった。
私はポケットから昨日と同じ赤い毛糸を取り出し、慣れた手つきで指に掛けた。
シュッシュッと、少し離れた場所から彼が捕縛布を振る重い音が響く。
静かな中庭に流れる、どこか心地いい2人の時間。
この時間だけは、個性による呪縛を忘れられた。
私は指先を動かしながら、チラリと彼の横顔を盗み見た。
真剣な眼差しで布の軌道を追う瞳。
キュッと結ばれた唇と、うっすらと眉間に寄せられたシワ。
時折、絡まった布を解くときに小さく零れるため息。
昨日は私が解いてあげたけれど、真剣に努力している彼の邪魔をしてはいけないと、私はぐっとその衝動を踏み留まった。
「……おい」
不意に上から声をかけられ、ハッと我に返った。
いつの間にか練習を区切った心操君が、汗を拭いながら見下ろしている。
「糸、絡まってるぞ」
「え……っ!?」
慌てて手元に視線を落とすと、指に掛かっていたはずの毛糸は、ぐちゃぐちゃに絡まっていた。
心操君は呆れたように小さく息を吐くと、私の隣にそっと腰を下ろした。
彼の身体から、運動した後の熱がほんのりと伝わってくる。
「あやとり、得意なんじゃなかったのか」
「えへへ……。検定、不合格かも」
心操君に見惚れていたなんて口が裂けても言えない。
恥ずかしさで顔がカッと熱くなり、下を向いて必死に糸を解こうと指を動かしていると、ひょいっと大きな手に糸の端を奪われた。
糸を解きほぐすと、一瞬で綺麗な形に作り変えていく。
「……取ってみろよ」
差し出された彼の両手には、昨日も見た、あのつり橋が架かっていた。
「練習、もういいの?」
「ちょっと休憩。◯◯さん見てたら、やりたくなった」
そう言って少しだけ意地悪く笑う心操君の指先を、私は胸の高鳴りを隠しながら、そっと糸を引き取った。
この日をきっかけに、私はお昼休みに心操君と過ごすのが日課となった。
教室でササッとお弁当をかき込み済ませる。
ふと教室を見渡してみたけれど、目当ての薄紫色の髪は見当たらなかった。
きっと、今日も中庭にいるんだ……。
期待と少しの緊張でザワつく胸を抑えながら、私は足早に中庭へと向かった。
日の光が降り注ぐ中、予想通り彼の姿があった。
「心操君!」
声をかけると、捕縛布に弄ばれていた心操君の手がピタリと止まり、ゆっくりとこちらへ振り返った。
「……◯◯さんか」
「毎日練習してるの?」
私は彼の邪魔にならないよう、近くの木陰にあるベンチへ腰掛けながら尋ねた。
「ああ。まだまだ思い通りに動かせないからな」
「そっか。精が出るね」
「……」
心操君は捕縛布を首に巻き直すと、じっと私の顔を見つめて黙り込んだ。
気まずさに耐えかねて首を傾げる。
「……なに?」
「今日はあやとりに付き合ってやれないぞ」
どこか牽制するような彼の言い方に、私は思わずクスッと笑ってしまった。
「ふふ、大丈夫。今日は近々受けるあやとり検定の練習をしたいだけだから」
咄嗟に吐いた適当な嘘。
あやとりの検定なんて存在するのかも分からない。
だけど、「ただ心操君の近くにいたいから来た」なんて口が滑っても言えるはずがなかった。
私はポケットから昨日と同じ赤い毛糸を取り出し、慣れた手つきで指に掛けた。
シュッシュッと、少し離れた場所から彼が捕縛布を振る重い音が響く。
静かな中庭に流れる、どこか心地いい2人の時間。
この時間だけは、個性による呪縛を忘れられた。
私は指先を動かしながら、チラリと彼の横顔を盗み見た。
真剣な眼差しで布の軌道を追う瞳。
キュッと結ばれた唇と、うっすらと眉間に寄せられたシワ。
時折、絡まった布を解くときに小さく零れるため息。
昨日は私が解いてあげたけれど、真剣に努力している彼の邪魔をしてはいけないと、私はぐっとその衝動を踏み留まった。
「……おい」
不意に上から声をかけられ、ハッと我に返った。
いつの間にか練習を区切った心操君が、汗を拭いながら見下ろしている。
「糸、絡まってるぞ」
「え……っ!?」
慌てて手元に視線を落とすと、指に掛かっていたはずの毛糸は、ぐちゃぐちゃに絡まっていた。
心操君は呆れたように小さく息を吐くと、私の隣にそっと腰を下ろした。
彼の身体から、運動した後の熱がほんのりと伝わってくる。
「あやとり、得意なんじゃなかったのか」
「えへへ……。検定、不合格かも」
心操君に見惚れていたなんて口が裂けても言えない。
恥ずかしさで顔がカッと熱くなり、下を向いて必死に糸を解こうと指を動かしていると、ひょいっと大きな手に糸の端を奪われた。
糸を解きほぐすと、一瞬で綺麗な形に作り変えていく。
「……取ってみろよ」
差し出された彼の両手には、昨日も見た、あのつり橋が架かっていた。
「練習、もういいの?」
「ちょっと休憩。◯◯さん見てたら、やりたくなった」
そう言って少しだけ意地悪く笑う心操君の指先を、私は胸の高鳴りを隠しながら、そっと糸を引き取った。
この日をきっかけに、私はお昼休みに心操君と過ごすのが日課となった。
