やっと会えた
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ある日の夕暮れ。
いつものように1人で公園の壁当てをしていた私は、ふと足を止めて公衆トイレへと向かった。
冷たい水で手を洗おうとした、その時だった。
「……なぁ、人使の個性ってさ、なんかヴィランっぽいよな!」
心臓が跳ねた。
隣の男子トイレの方から聞こえてきた、心ない笑いを含んだ少年の声。
「ははは……そうかな……」
それに答える、少し低くて、どこか冷めたような、でも酷く自信なさげな声。
今、人使って言った……?
間違いなかった。
あの手紙に綴られていた名前だ。
薄い壁1枚隔てた向こう側に、私がずっと会いたいと願っていた彼がいる。
……どうしよう。
今、ここを出れば会える?
トイレの出口を見つめ、私は迷う。
タイミングを合わせれば、鉢合わせる形で彼の顔を見ることができるはずだ。
だけど、足がすくんで動けない。
怖かったのだ。
だって、私は彼の名前を知っているけれど、彼は私のことなんて何も知らない。
いきなりトイレの前で待ち伏せして話しかけるなんて、不自然どころか不気味すぎる。
それに、何よりも私の心を刺したのは、向こう側から聞こえてくる話し声そのものだった。
……友達、いるんだ。
「ヴィランっぽい」なんて酷いことを言われても、彼は誰かと一緒にそこにいる。
勝手に自分と同じように独りぼっちなんだと思い込んで、勝手に仲間意識を抱いていた自分が、急に惨めで、恥ずかしくなった。
人使君には、個性をからかわれながらも隣を歩く誰かがいる。
私とは違うんだ。
やがて、ザッザッという砂利をふむ足音と共に、話し声は遠のいていった。
彼らが外へ出たのが分かる。
私は数秒待ってから、深呼吸を1つして、あたかも今さっき用を済ませた、と言わんばかりの無関心な顔で、トイレの入り口から外へ出た。
……結局、諦めきれなかった。
惨めだと思っても、一目だけでも、その顔を確認したかった。
私は何食わぬ顔でブランコの方へ歩きながら、視線だけを周囲に走らせる。
公園で遊んでいる男の子たちの顔を、1人1人盗み見るように。
あの金髪の子かな?
それとも、あっちの短パンの子?
あの、うねうねした癖っ毛の子がそうなのかな……。
「キャハハ!待てよー!」
「こっちこっちー!」
楽しげにはしゃぐ声が響く。
もう一度、誰かが人使君の名前を呼んでくれたら一発で分かるのに。
だけど、彼らの輪の中にその名前が呼ばれることは二度となかった。
もしかしたら、もう公園の外へ出ていってしまったのかもしれない。
それとも、あの楽しそうな集団の中に、さっきの低い声の主が混ざっているのだろうか。
結局、私は最後まで人使君の正体を突き止めることはできなかった。
オレンジ色だった空は、いつの間にか濃い群青色に染まっている。
「……帰らなきゃ」
誰に言うでもなく呟き、私は重い足取りで公園を後にした。
いつものように1人で公園の壁当てをしていた私は、ふと足を止めて公衆トイレへと向かった。
冷たい水で手を洗おうとした、その時だった。
「……なぁ、人使の個性ってさ、なんかヴィランっぽいよな!」
心臓が跳ねた。
隣の男子トイレの方から聞こえてきた、心ない笑いを含んだ少年の声。
「ははは……そうかな……」
それに答える、少し低くて、どこか冷めたような、でも酷く自信なさげな声。
今、人使って言った……?
間違いなかった。
あの手紙に綴られていた名前だ。
薄い壁1枚隔てた向こう側に、私がずっと会いたいと願っていた彼がいる。
……どうしよう。
今、ここを出れば会える?
トイレの出口を見つめ、私は迷う。
タイミングを合わせれば、鉢合わせる形で彼の顔を見ることができるはずだ。
だけど、足がすくんで動けない。
怖かったのだ。
だって、私は彼の名前を知っているけれど、彼は私のことなんて何も知らない。
いきなりトイレの前で待ち伏せして話しかけるなんて、不自然どころか不気味すぎる。
それに、何よりも私の心を刺したのは、向こう側から聞こえてくる話し声そのものだった。
……友達、いるんだ。
「ヴィランっぽい」なんて酷いことを言われても、彼は誰かと一緒にそこにいる。
勝手に自分と同じように独りぼっちなんだと思い込んで、勝手に仲間意識を抱いていた自分が、急に惨めで、恥ずかしくなった。
人使君には、個性をからかわれながらも隣を歩く誰かがいる。
私とは違うんだ。
やがて、ザッザッという砂利をふむ足音と共に、話し声は遠のいていった。
彼らが外へ出たのが分かる。
私は数秒待ってから、深呼吸を1つして、あたかも今さっき用を済ませた、と言わんばかりの無関心な顔で、トイレの入り口から外へ出た。
……結局、諦めきれなかった。
惨めだと思っても、一目だけでも、その顔を確認したかった。
私は何食わぬ顔でブランコの方へ歩きながら、視線だけを周囲に走らせる。
公園で遊んでいる男の子たちの顔を、1人1人盗み見るように。
あの金髪の子かな?
それとも、あっちの短パンの子?
あの、うねうねした癖っ毛の子がそうなのかな……。
「キャハハ!待てよー!」
「こっちこっちー!」
楽しげにはしゃぐ声が響く。
もう一度、誰かが人使君の名前を呼んでくれたら一発で分かるのに。
だけど、彼らの輪の中にその名前が呼ばれることは二度となかった。
もしかしたら、もう公園の外へ出ていってしまったのかもしれない。
それとも、あの楽しそうな集団の中に、さっきの低い声の主が混ざっているのだろうか。
結局、私は最後まで人使君の正体を突き止めることはできなかった。
オレンジ色だった空は、いつの間にか濃い群青色に染まっている。
「……帰らなきゃ」
誰に言うでもなく呟き、私は重い足取りで公園を後にした。
