やっと会えた
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〜やっと会えた〜
友達がいなかった小学生時代。
それは私の個性『不運』に関係していた。
測ったワケじゃないけれど、体感10分程度話した相手に不運が降りかかる。
厄介なのが“自分”ではなく“相手”にのみ降りかかるということ。
もちろん車に轢かれるだとか、強盗に遭うだとか、命に関わるような物騒なことは起きない。
せいぜい、歩けばガムを踏む、空から落ちてくる鳥の糞が命中する、筆箱から消しゴムが消える……。
その程度の、笑い飛ばせそうな些細なこと。
だけど、そんな些細なことが積み重なればストレスになるワケで、徐々に私の周りからは友達がいなくなった。
最初は「気にしないから」と笑っていたあの子たちだって、最後には冷たい視線を投げ掛けて去っていく。
「告白の前に●●ちゃんと喋ったせいで振られた!」
「大事な発表会の前に●●ちゃんと喋ったせいで失敗した!」
吐き捨てられる言葉の数々に、私はただ俯くことしかできなかった。
本当に私のせいなの?
そう叫びたい日もあったけれど、確信が持てなくて、結局謝ることしかできなかった。
……だけど、別にいいもんね。
友達がいなくたって生きていけるから。
寂しくなんてない。
平気だし。
学校ではそんな風に強がっているけれど、母には心配させたくなくて、いつも学校が終わると、あたかも友達がいるかのように「友達と遊んでくる」と伝えて家を飛び出していた。
皮肉なことに、私の両親はこの力は効かない。
似たような個性が相殺し合っているのか、それとも打ち消しているのか分からないけれど、家だけが、私が普通の子でいられる唯一の場所だった。
ーーーー
学校から帰宅するや否や、私は背負っていたランドセルを玄関の床に投げ捨てた。
「行ってきます!」
「宿題はー?」
庭の物干し場で洗濯物を取り込んでいた母が、揺れるシーツの間からひょっこりと顔を出した。
「帰ったらちゃんとやるから!」
「遅くならないようにね〜」
「はーい!」
嘘を吐くたびに胸の奥が痛む。
私は丸いゴムボールを片手に、逃げるように家を飛び出した。
近所の公園に着くと、同じくらいの年頃の子が遊具の周りでワイワイと遊んでいる。
そんな彼らを尻目に、今日も今日とて1人でボール遊び。
誰に投げるでもなく、コンクリートの壁に投げては跳ね返ったボールを追いかける。
拾っては投げ、投げては拾う。
その繰り返し。
「あっ……」
少しだけ、指先に力が入りすぎた。
ボールは予想外の角度で鋭く跳ね返り、放物線を描く。
そして、ガシャンッと音を立ててゴミ箱の中に吸い込まれた。
「……ナイッシュー」
誰に言うワケでもなく、私は自嘲気味にそう呟いた。
「よいしょ……」
ゴミ箱に手を伸ばしてボールを拾い上げたとき、1枚の手紙が目についた。
ぐしゃっと丸められ、シワだらけになっていたけれど、捨てられたばかりなのか汚れ1つない。
私は吸い寄せられるように、その紙を拾い上げた。
人様の手紙を読むなんて、悪趣味かもしれない。
けれど、こんな公共の場に捨てる人も悪い。
そう自分に言い聞かせて、読むことを正当化させた。
手紙を広げると“人使君のお母様へ”から始まっていた。
並んでいるのは、子供の私には難しい言葉や漢字ばかりだった。
内容の半分も理解できない。
だけど、タロウ君と言う子の母親が、人使君の個性を危険視し、我が子に関わらないようにしてくれ、と言うお願いの内容なのは理解できた。
虐めがあったワケでも、喧嘩したワケでもないのに。
親の都合で友達との仲を引き裂かれる。
それって、どんな気持ちなんだろう。
自分に向けられた手紙ではないのに、何故か気まずさを覚えた。
「……私ならいいのに」
私の個性を受け入れてくれる人となら、どんなに恐れられている個性を持った子とだって、友達になりたい。
「人使君……どんな個性の子なんだろう」
会ってみたい。
心からそう思った。
私は読み終わった手紙を、そっとゴミ箱へと戻した。
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