いつの間にかほぼ毎週休みの日に赤葦君が家に来て家事と勉強をするようになった。


「ほら●●さん、起きてください。天気が良いので布団干しますよ」


朝からチャイムを鳴らされるのが嫌で、合鍵を渡した結果がこれだ。
もちろん、家事をしてくれるのは助かるけど、休みの日くらいはゆっくり寝ていたい。


「あと1時間～」

「長すぎます、あと5分で布団剥ぎますから」


手厳しい。

赤葦君は宣言通りきっちり5分後に布団を剥いできた。


「きゃーえっち」

「冗談言っていないで顔洗ってきてください」

「はーい」


顔を洗って着替えを済ませると、テーブルには豪華な朝食が並べられていた。


「うわー、今日は和食かー！味噌汁が染みる。この菜の花のからし和えも渋くていいね」

「よかったです」


赤葦君も私の反応を見てから自分の分の朝食に手をつけた。

元々我が家には一人分の必要最低限の食器しか置いていなかった。

それが二人分となり小鉢が増え、いつの間にか食器棚が充実。

ユウタ……もとい元カレを部屋に招くときは、食事のほとんどを惣菜やテイクアウトで済ませていたため、食器は必要なかったから。

そもそもいつも散らかった部屋だったから元カレを滅多に呼べなかった。

どうしても来たいと言われたら前日に大掃除。
と、言っても押し入れに詰め込む作業だけど。

思い返せば、そう言うところに愛想を付かされて浮気されていたのかもしれない。
もちろん浮気をしていい理由にはならないけれど。


「ねぇ、来週は息抜きに出掛けない？」


こんな私でも愛想つかないで世話を焼いてくれる赤葦君に少しでもお礼がしたかった。


「いいですけど、どこへ行きますか？」

「内緒。じゃあ、来週は公園で待ち合わせね」


私はルンルン気分で味噌汁をすすった。