183センチ
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あの日以来、体育館の側を通るたびに、私の視線は自然と自動販売機へ向かうようになった。
そして、赤葦君の横顔が重なって見える。
183センチという数字は、私の中で特別なものになってしまった。
ある日の放課後。
今日は、定期的に行われる美化委員の仕事で、割り振られたエリアの掃除用具のチェックをしていた。
古びた用具入れの扉を開け、中身を調べていく。
「紛失……破損……。ここも異常なし……っと」
私はチェックシートに記入を終えた。
「次は……体育館だ」
体育館の入り口は、閉め切られていたけれど、中から漏れ出る音で、活動が盛んに行われていることが分かる。
私はそっと扉を開けた。
ボールが床を叩く軽快な音と、部員たちの大きな声が響き渡っている。
邪魔にならないように、早く終わらせないと。
「失礼しまーす」
私は視線を上げずに、体育館の隅に設置されている掃除用具入れへと速やかに向かった。
幸いにも、点検も滞りなく終わった。
「失礼しました」
体育館の外へ一歩踏み出したちょうどその時、休憩時間に入ったのだろう、部員たちが一斉に給水所や、件の自動販売機の周りに集まって来た。
「あれ、キミは?」
そんな中、声をかけてきたのは、先日自動販売機の前で会った、あの特徴的な髪型をした先輩だった。
黒と白の毛先がツンツンと跳ねている。
「この間はごめんな?今日は自販機占領してないから!」
先輩は屈託のない笑顔で言った。
「あ、いえ。今日は飲み物を買いに来たワケじゃないので……」
私がそう答えると、先輩は心底安堵したように胸を撫で下ろした。
フレンドリーな先輩だけれど、やはり体格が良い上に背が高く、少し緊張してしまう。
私がどう対応しようかと考えていると、静かに隣から声がかけられた。
「◯◯さん?」
赤葦君だった。
手にはスポーツドリンクのペットボトルが握られている。
彼は、少し不思議そうな表情で私を見ていた。
「あ、赤葦君」
木兎先輩は、途端に興味津々といった様子で、私たち2人を交互に見た。
「なんだ、なんだ、お前ら仲良しなのか〜?!」
その大きな声に、周囲にいた他の部員たちもこちらに視線を向けた。
「違います、木兎さん。普通にクラスメイトです」
赤葦君は即座に訂正した。
その冷静な声に、私はなぜか少しだけショックを受けた。
間違ったことなんて、何も言っていないのに。
すると、先輩は閃いたように手を叩いた。
「そうだ!後輩ちゃんもちょっとバレーやってくか?!」
後輩ちゃん、とは私のことだろうか。
ボールを扱う運動なんて、体育の授業以外でまともにやったことがない。
戸惑いの色を隠せない私に向かって、先輩はさらにグイッと身を乗り出した。
「ほらほら、後輩ちゃん!」
そして、私の腕を軽く引こうとした、その瞬間。
「ちょっと、木兎さん!」
私が拒むよりも早く、赤葦君はスルりと私たち2人の間に割って入った。
「彼女は急いでると思います」
彼の背中が、先輩の姿を遮る。
これが、183センチの壁……!
彼の肩越しに見る先輩は、一瞬呆けたように目を丸くしていた。
「えー、ダメなのか?」
先輩はまだ不満そうだ。
「す、すみません。まだ委員会の仕事が残っていて……」
私は赤葦君の背中の陰から、か細い声で答えた。
「そっか……じゃあ、しょうがないな」
先輩はようやく状況を理解してくれたようだ。
「あ、はい。では、これで失礼します」
私は赤葦君の作った183センチの壁の陰から、そそくさとその場を離れた。
校舎へ戻る直前で振り返ると、彼は私を見送るように立っていた。
そして、私の視線に気が付くと、小さく会釈をしてくれた。
その後も、心臓のドキドキが収まらなかった。
もし、あの時、赤葦君が割って入ってくれなかったら、私は先輩たちに囲まれてもっと戸惑っていただろう。
本当に赤葦君には助けられてばかりだ。
そして、赤葦君の横顔が重なって見える。
183センチという数字は、私の中で特別なものになってしまった。
ある日の放課後。
今日は、定期的に行われる美化委員の仕事で、割り振られたエリアの掃除用具のチェックをしていた。
古びた用具入れの扉を開け、中身を調べていく。
「紛失……破損……。ここも異常なし……っと」
私はチェックシートに記入を終えた。
「次は……体育館だ」
体育館の入り口は、閉め切られていたけれど、中から漏れ出る音で、活動が盛んに行われていることが分かる。
私はそっと扉を開けた。
ボールが床を叩く軽快な音と、部員たちの大きな声が響き渡っている。
邪魔にならないように、早く終わらせないと。
「失礼しまーす」
私は視線を上げずに、体育館の隅に設置されている掃除用具入れへと速やかに向かった。
幸いにも、点検も滞りなく終わった。
「失礼しました」
体育館の外へ一歩踏み出したちょうどその時、休憩時間に入ったのだろう、部員たちが一斉に給水所や、件の自動販売機の周りに集まって来た。
「あれ、キミは?」
そんな中、声をかけてきたのは、先日自動販売機の前で会った、あの特徴的な髪型をした先輩だった。
黒と白の毛先がツンツンと跳ねている。
「この間はごめんな?今日は自販機占領してないから!」
先輩は屈託のない笑顔で言った。
「あ、いえ。今日は飲み物を買いに来たワケじゃないので……」
私がそう答えると、先輩は心底安堵したように胸を撫で下ろした。
フレンドリーな先輩だけれど、やはり体格が良い上に背が高く、少し緊張してしまう。
私がどう対応しようかと考えていると、静かに隣から声がかけられた。
「◯◯さん?」
赤葦君だった。
手にはスポーツドリンクのペットボトルが握られている。
彼は、少し不思議そうな表情で私を見ていた。
「あ、赤葦君」
木兎先輩は、途端に興味津々といった様子で、私たち2人を交互に見た。
「なんだ、なんだ、お前ら仲良しなのか〜?!」
その大きな声に、周囲にいた他の部員たちもこちらに視線を向けた。
「違います、木兎さん。普通にクラスメイトです」
赤葦君は即座に訂正した。
その冷静な声に、私はなぜか少しだけショックを受けた。
間違ったことなんて、何も言っていないのに。
すると、先輩は閃いたように手を叩いた。
「そうだ!後輩ちゃんもちょっとバレーやってくか?!」
後輩ちゃん、とは私のことだろうか。
ボールを扱う運動なんて、体育の授業以外でまともにやったことがない。
戸惑いの色を隠せない私に向かって、先輩はさらにグイッと身を乗り出した。
「ほらほら、後輩ちゃん!」
そして、私の腕を軽く引こうとした、その瞬間。
「ちょっと、木兎さん!」
私が拒むよりも早く、赤葦君はスルりと私たち2人の間に割って入った。
「彼女は急いでると思います」
彼の背中が、先輩の姿を遮る。
これが、183センチの壁……!
彼の肩越しに見る先輩は、一瞬呆けたように目を丸くしていた。
「えー、ダメなのか?」
先輩はまだ不満そうだ。
「す、すみません。まだ委員会の仕事が残っていて……」
私は赤葦君の背中の陰から、か細い声で答えた。
「そっか……じゃあ、しょうがないな」
先輩はようやく状況を理解してくれたようだ。
「あ、はい。では、これで失礼します」
私は赤葦君の作った183センチの壁の陰から、そそくさとその場を離れた。
校舎へ戻る直前で振り返ると、彼は私を見送るように立っていた。
そして、私の視線に気が付くと、小さく会釈をしてくれた。
その後も、心臓のドキドキが収まらなかった。
もし、あの時、赤葦君が割って入ってくれなかったら、私は先輩たちに囲まれてもっと戸惑っていただろう。
本当に赤葦君には助けられてばかりだ。
