見てくれるその日まで
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ーーおまけ(赤葦side)ーー
大学4年生の春、企業説明会に参加したり、面接へと伺ったり、すっかりリクルートスーツも着慣れてきた。
そして今日は本命の大手出版社の面接。
ネクタイをキュッと結び、会場へと向かった。
……。
…………。
高いビル。
ここが面接会場であり、受かれば俺の職場になる場所。
しばらく建物を見上げていると、
「っ!」
ドンッとした音と共に痛む肩。
地面には俺が落とした鞄から中身が散らばっていた。
「悪いね、急いでいるから!」
どうやら急いでいる様子の中年男性とぶつかった様だ。
男性は軽く謝るだけで去っていってしまった。
仕方なく散らばった荷物を拾うためにしゃがみ込む。
余裕を持って家を出て良かった。
いや、少しでも時間がずれていればぶつかることもなかったのか。
「……」
これから面接だと言うのに、俺は地面に這いつくばるように、何してんだろう。
手伝ってくれる人はいない。
別にそうしてほしいワケでもない。
ただ、背中から浴びる白い視線が痛かった。
考えないようにしていたけれど、ひょっとしてこの荷物が落ちたように、面接も落ちることを暗示しているのか。
そう思うと急に胸が苦しくなった。
割とメンタルは強い方だと思っていたのに。
そんなとき、
「あの……大丈夫ですか?」
頭の上から女性の声がした。
「あっちにペンが落ちてたんだけど、これって君のかな?」
顔を上げると、女性の手に持っていたペンは確かに自分の物だった。
「そうです、ありがとうございます」
女性からペンを受け取ろうとしたが、中々手を離してくれない。
「あの……?」
「あ、ごめんごめん!もしかして就活生?」
女性は慌ててパッと手を離した。
「はい、そうです。これから面接があって」
「だから手が震えていたんだー!」
震えていた?俺が?
それで不思議に思った彼女は直ぐに手を離さなかったのか。
「ちょっと手のひらを出して?」
「はい?」
意味が分からなかったけれど、素直に彼女に向けて手のひらを出した。
すると、おもむろに自分の人差し指で俺の手のひらに“人”と言う字を書いた。
「ベタだけどこれでも飲んで面接頑張ってね!」
「……ふっ」
思わず吹き出してしまった。
「なんですか、それ」
「え!?今どきの子ってやらないの!?おかしいな〜」
「あ、いえ。ありがとうございます」
「そう?それならいいんだけど……あっ!会議の時間が!引き止めてごめんね!それじゃあ!」
彼女は俺が面接を受ける予定のビルへと入っていった。
もしかして、同じ職場になったり……なんて夢の見過ぎか。
俺の手の震えはいつの間にか止まっていた。
ーーーー
それからほどなくして、採用の通知が届いた。
もちろん、本命の大手出版社から。
1つ不満を上げるのであれば、文芸部希望だったのに、何故か配属されたのは週刊少年漫画誌。
そんな不満を抱えながらの初出勤の日。
「赤葦京治です。よろしくお願いいたします」
これからお世話になる先輩や上司の顔を見ていく。
……あっ、彼女は。
その中に見覚えのある女性がいた。
面接の日にペンを拾ってくれた人。
◯◯●●さんと言うのか。
希望の部所じゃなかったけれど、彼女と同じ職場ならやっていける、そんな気がした。
これは運命だ。
彼女を好きになるのに時間はかからなかった。
しかし、どうやら既に恋人がいるらしい。
もちろんそれだけで諦めるワケがない。
それほど彼女に惹かれていたから。
ハイエナのようにチャンスをうかがった。
俺のことを見てくれるその日まで。
大学4年生の春、企業説明会に参加したり、面接へと伺ったり、すっかりリクルートスーツも着慣れてきた。
そして今日は本命の大手出版社の面接。
ネクタイをキュッと結び、会場へと向かった。
……。
…………。
高いビル。
ここが面接会場であり、受かれば俺の職場になる場所。
しばらく建物を見上げていると、
「っ!」
ドンッとした音と共に痛む肩。
地面には俺が落とした鞄から中身が散らばっていた。
「悪いね、急いでいるから!」
どうやら急いでいる様子の中年男性とぶつかった様だ。
男性は軽く謝るだけで去っていってしまった。
仕方なく散らばった荷物を拾うためにしゃがみ込む。
余裕を持って家を出て良かった。
いや、少しでも時間がずれていればぶつかることもなかったのか。
「……」
これから面接だと言うのに、俺は地面に這いつくばるように、何してんだろう。
手伝ってくれる人はいない。
別にそうしてほしいワケでもない。
ただ、背中から浴びる白い視線が痛かった。
考えないようにしていたけれど、ひょっとしてこの荷物が落ちたように、面接も落ちることを暗示しているのか。
そう思うと急に胸が苦しくなった。
割とメンタルは強い方だと思っていたのに。
そんなとき、
「あの……大丈夫ですか?」
頭の上から女性の声がした。
「あっちにペンが落ちてたんだけど、これって君のかな?」
顔を上げると、女性の手に持っていたペンは確かに自分の物だった。
「そうです、ありがとうございます」
女性からペンを受け取ろうとしたが、中々手を離してくれない。
「あの……?」
「あ、ごめんごめん!もしかして就活生?」
女性は慌ててパッと手を離した。
「はい、そうです。これから面接があって」
「だから手が震えていたんだー!」
震えていた?俺が?
それで不思議に思った彼女は直ぐに手を離さなかったのか。
「ちょっと手のひらを出して?」
「はい?」
意味が分からなかったけれど、素直に彼女に向けて手のひらを出した。
すると、おもむろに自分の人差し指で俺の手のひらに“人”と言う字を書いた。
「ベタだけどこれでも飲んで面接頑張ってね!」
「……ふっ」
思わず吹き出してしまった。
「なんですか、それ」
「え!?今どきの子ってやらないの!?おかしいな〜」
「あ、いえ。ありがとうございます」
「そう?それならいいんだけど……あっ!会議の時間が!引き止めてごめんね!それじゃあ!」
彼女は俺が面接を受ける予定のビルへと入っていった。
もしかして、同じ職場になったり……なんて夢の見過ぎか。
俺の手の震えはいつの間にか止まっていた。
ーーーー
それからほどなくして、採用の通知が届いた。
もちろん、本命の大手出版社から。
1つ不満を上げるのであれば、文芸部希望だったのに、何故か配属されたのは週刊少年漫画誌。
そんな不満を抱えながらの初出勤の日。
「赤葦京治です。よろしくお願いいたします」
これからお世話になる先輩や上司の顔を見ていく。
……あっ、彼女は。
その中に見覚えのある女性がいた。
面接の日にペンを拾ってくれた人。
◯◯●●さんと言うのか。
希望の部所じゃなかったけれど、彼女と同じ職場ならやっていける、そんな気がした。
これは運命だ。
彼女を好きになるのに時間はかからなかった。
しかし、どうやら既に恋人がいるらしい。
もちろんそれだけで諦めるワケがない。
それほど彼女に惹かれていたから。
ハイエナのようにチャンスをうかがった。
俺のことを見てくれるその日まで。
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