見てくれるその日まで
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鞄を取りに戻る間にお店の予約を済ませてくれていたようで、スムーズに入店することができた。
しかも個室を選んでくれただなんて、出来る後輩だ。
「ここなら遠慮なく話せますから」
「ありがとう」
「取り敢えず、先に注文を済ませましょうか。嫌いな物とかアレルギーはありますか?」
「特にないよ」
「じゃあ、適当につまめるものでも……」
テキパキと注文を済ませてくれた赤葦君。
仕事もできると思っていたけれど、こういう場面でもそういうことは発揮されるのか、と感心してしまった。
「では、お仕事お疲れ様です」
「お疲れ様〜」
カチャンと控えめにグラスを慣らしてから口をつける。
「あぁ〜アルコールが五臓六腑に染み渡る〜!……あっ」
コースケと飲むときのテンションで言ってしまった。
赤葦君に引かれていないかな、と顔を見ると、
「それは良かったです」
引くどころか微笑んでいた。
私の方が年上なのに、落ち着きがあってどこか余裕を感じる。
ほどなくして、料理が次々に運ばれてきて、それはどれも美味しかった。
「それで、なんで泣いていたんですか?話してスッキリするなら聞きますよ」
そうだった。
お酒と料理が美味しくて一瞬忘れかけていたけれど、少し前に修羅場に出くわしてしまったんだった。
「実は……」
私はこれまでにあったことを話した。
長く付き合っている彼氏がいること、ここ数ヶ月彼氏が素っ気ないこと、浮気現場の目撃をしたことを。
正確には目撃ではなく盗み聞きをしただけだけど、似たようなものだろう。
涙混じりになりながらも全てぶち撒けた。
「なるほど……」
赤葦君は最後まで静かに聞いてくれた後、一口お酒を口に含んだ。
その口からどんな言葉が出るのだろう、そう思っていたのに、
「そんな男、別れましょう」
至ってシンプルかつ正論を言われてしまった。
「いや、そうなんだけどね……」
長く付き合ってきた分、情がある。
それに、怪しい音は聞いたけれど決定的な現場を見たわけではない。
その上、良い歳の私がコースケと別れたところで今後出会いがあるとは限らない。
そんな自信のなさから歯切れの悪いことしか言えなかった。
頭が切れて鋭い赤葦君なら私の心情を汲んでくれるはず。
そう願ってチラッと顔を見たけれど、
「縋るだけ時間の無駄ですよ」
珍しく折れずに私の傷をえぐるようなことばかり言ってくる。
正論しか言っていないのは分かるし、私だって同じ相談をされたら似たような答えを言うと思う。
だけど、あの赤葦君がここまで言うなんて。
「なんか、今日は遠慮がないね」
「それはそうですよ。だって俺にとっては好きな人を振り向かせるチャンスですから」
仕事モードでは“僕”って言うのに、プライベートだと“俺”って言うのか。
そんなことよりも、
「え、好きな人?」
「そう、アナタですよ」
そう言って指を差す赤葦君に対して、どこどこ、と周りを見渡す素振りをしたけれど、ここは個室。
当たり前だけれど私と赤葦君しかいない。
ひょっとしなくても、
「私?」
「そうです」
「え〜〜っ!!」
なんで、どうして、いつから。
アルコールが回って働かない頭で必死に考えたけれど答えは出ず。
固まっていると、個室の扉がノックされた。
さっきの声が煩かったのかも。
しかし入ってきたのは定員さんで、ラストオーダーの確認だった。
「大丈夫です。お会計お願いします」
「かしこまりました」
相変わらず固まったままの私を気にせず、赤葦君は淡々と店員さんに対応した。
店員さんが伝票を取りに部屋を出ると、
「勝手に対応しちゃいましたけど、良かったですよね?」
なんて涼しい顔をして聞いてくる。
「あ、はい」
動揺したのは私だけのようで、少しだけ面白くなかった。
しかも個室を選んでくれただなんて、出来る後輩だ。
「ここなら遠慮なく話せますから」
「ありがとう」
「取り敢えず、先に注文を済ませましょうか。嫌いな物とかアレルギーはありますか?」
「特にないよ」
「じゃあ、適当につまめるものでも……」
テキパキと注文を済ませてくれた赤葦君。
仕事もできると思っていたけれど、こういう場面でもそういうことは発揮されるのか、と感心してしまった。
「では、お仕事お疲れ様です」
「お疲れ様〜」
カチャンと控えめにグラスを慣らしてから口をつける。
「あぁ〜アルコールが五臓六腑に染み渡る〜!……あっ」
コースケと飲むときのテンションで言ってしまった。
赤葦君に引かれていないかな、と顔を見ると、
「それは良かったです」
引くどころか微笑んでいた。
私の方が年上なのに、落ち着きがあってどこか余裕を感じる。
ほどなくして、料理が次々に運ばれてきて、それはどれも美味しかった。
「それで、なんで泣いていたんですか?話してスッキリするなら聞きますよ」
そうだった。
お酒と料理が美味しくて一瞬忘れかけていたけれど、少し前に修羅場に出くわしてしまったんだった。
「実は……」
私はこれまでにあったことを話した。
長く付き合っている彼氏がいること、ここ数ヶ月彼氏が素っ気ないこと、浮気現場の目撃をしたことを。
正確には目撃ではなく盗み聞きをしただけだけど、似たようなものだろう。
涙混じりになりながらも全てぶち撒けた。
「なるほど……」
赤葦君は最後まで静かに聞いてくれた後、一口お酒を口に含んだ。
その口からどんな言葉が出るのだろう、そう思っていたのに、
「そんな男、別れましょう」
至ってシンプルかつ正論を言われてしまった。
「いや、そうなんだけどね……」
長く付き合ってきた分、情がある。
それに、怪しい音は聞いたけれど決定的な現場を見たわけではない。
その上、良い歳の私がコースケと別れたところで今後出会いがあるとは限らない。
そんな自信のなさから歯切れの悪いことしか言えなかった。
頭が切れて鋭い赤葦君なら私の心情を汲んでくれるはず。
そう願ってチラッと顔を見たけれど、
「縋るだけ時間の無駄ですよ」
珍しく折れずに私の傷をえぐるようなことばかり言ってくる。
正論しか言っていないのは分かるし、私だって同じ相談をされたら似たような答えを言うと思う。
だけど、あの赤葦君がここまで言うなんて。
「なんか、今日は遠慮がないね」
「それはそうですよ。だって俺にとっては好きな人を振り向かせるチャンスですから」
仕事モードでは“僕”って言うのに、プライベートだと“俺”って言うのか。
そんなことよりも、
「え、好きな人?」
「そう、アナタですよ」
そう言って指を差す赤葦君に対して、どこどこ、と周りを見渡す素振りをしたけれど、ここは個室。
当たり前だけれど私と赤葦君しかいない。
ひょっとしなくても、
「私?」
「そうです」
「え〜〜っ!!」
なんで、どうして、いつから。
アルコールが回って働かない頭で必死に考えたけれど答えは出ず。
固まっていると、個室の扉がノックされた。
さっきの声が煩かったのかも。
しかし入ってきたのは定員さんで、ラストオーダーの確認だった。
「大丈夫です。お会計お願いします」
「かしこまりました」
相変わらず固まったままの私を気にせず、赤葦君は淡々と店員さんに対応した。
店員さんが伝票を取りに部屋を出ると、
「勝手に対応しちゃいましたけど、良かったですよね?」
なんて涼しい顔をして聞いてくる。
「あ、はい」
動揺したのは私だけのようで、少しだけ面白くなかった。