見てくれるその日まで
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
〜見てくれるその日まで〜
私の家の玄関先で職場の後輩である赤葦君と2人きり。
「●●さん、好きです」
「赤葦君!?」
赤葦君にハグをされながら優しく頭を撫でられながら、最近彼氏のコースケとスキンシップを取っていないことを思い出した。
なんで付き合ってもいない赤葦君とこんなことになっているのか。
遡ること数時間前────。
ここ数ヶ月、コースケとはずっと恋人らしいことはしていない。
それはお互い仕事が忙しくて、とかではなく、会ってもご飯を食べて解散、とあっさりした清いことしかしていないから。
付き合いが長いから身体の関係がなくても心は通じ合っている、そんな域に入っていると思えばいいのだろうけど、私には無理だった。
別に毎回ベタベタと甘えたり身体を重ねたいわけではない。
だけど、数ヶ月の間会っているのにも関わらずそういう事がないとさすがに不安にもなる。
ちゃんと話し合えば良いものを、気持ちが離れているのだと認めるのが怖くて、私は真実を確かめずにいる。
けれど、あの決定的な瞬間を見てしまった以上、気持ちを誤魔化すことはできない。
ーーーー
コースケとは同じオフィスビルで働いているけれど仕事は違う。
そのため早々職場では会わないけれど、この日はたまたまコースケらしき後ろ姿を見つけた。
定時はとっくに過ぎている。
私の職場の出版社と違って、ホワイトな職場のコースケがこんな時間まで残っているのは珍しい。
せっかくだから仕事終わりのご飯を誘おうかな。
彼の後を追いかけた。
それにしても、この先って利用する人が少ない喫煙所しかないはずだけど……。
煙草を吸わないコースケに用があるとは思えなかった。
そう思い、曲がり角に差し掛かったところでコースケと知らない女性の話声が聞こえてきた。
思わず足が止まった。
「やっと2人きりになれた」
「ねえ、待って。ここ会社なんだけど」
「こんなところまで誰も来ないって。それにマリアだって期待してたんだろ?」
「あっちょっ……と、……んっ……あん」
手で口を押さえて悲鳴を押し殺した。
コースケがマリアとか言う女の人とキスをしている。
直接見たわけではないけれど、このリップ音に粘度のありそうな水音、くぐもった吐息。
間違いない。
音は徐々にヒートアップをしていき、おそらく服を脱がせているカサカサ音が聞こえてきた。
これ以上聞いていられない。
私は足音を立てないようにその場から逃げるように去った。
私とは行為どころかキスすらしなくなったのに……。
他所で発散していたんだね。
いや、今では彼女の方が本命なのかもしれない。
涙が次から次へと溢れてくる。
1/10ページ