特別なひとかけ
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〜特別なひとかけ〜
部活帰り、制服の上に薄手のパーカーを羽織って、私は1人コンビニへ立ち寄った。
店内はとても涼しく、体育館でかいた汗も引いて、今だけは心地いい。
アイスでも買おうかな、と何気なくお菓子棚を眺めていたとき、ふと目に入った。
2つに割ることのできる、細長い棒状チョコレートのパッケージに書かれた“塩キャラメル味”の文字。
しかも、大きな文字で新商品、と主張している。
「……塩キャラメルチョコ?」
思わずアイスコーナーへ向かう足が止まる。
そう言えば、国見君が少し前に好きだと呟いていたフレーバーだ。
普段あまり表情を変えない彼が、ほんの少しだけ嬉しそうにしていたのを、私はこっそり覚えている。
せっかくだし、明日の朝練のとき、みんなにお菓子を差し入れしようかな。
だけど、塩キャラメル味は1袋しか残っていない上、内容量が少なかった。
これだと部員全員の分がない。
「うーん……」
悩み抜いた結果、定番なスイートチョコの袋も一緒にレジへ持っていった。
ーーーー
翌朝、朝練の終わりにストレッチをしているメンバーに声を掛けながらチョコを配った。
もちろん、定番のフレーバーの方を。
「お疲れ様です。これよかったら食べて下さい」
渡すと、何人かの部員は、
「え、ラッキー!」
「マネージャー神!」
なんて茶化しながら喜んでいる。
そんな中、国見君にはみんなと違う塩キャラメル味をそっと手渡した。
「はい、国見君!」
何か言ってくれるかな、とドキドキしながら国見君を見たけど、彼はいつもの無表情のまま、
「……ありがとう、◯◯さん」
と、ぼそりと呟くだけだった。
それっきり、特にリアクションもなく、半分に割ったチョコを口に放り込んで、そのまま先ほどまでいた輪の中へ戻ってしまった。
喜んでくれるかな、なんて期待をした自分がちょっとだけ恥ずかしい。
そんな気持ちを引きずりながら、体育館の隅で備品をまとめることにした。
ちなみに、他のマネージャーさんは、ドリンクボトルを洗いに外の水道の方へ行っている。
冬場はやりたがらないのに、今日みたいな暑い日は率先して行くんだから。
理不尽に思っていると、ふと、3年生の及川さんの大きな声が響いた。
「ちょっと!国見ちゃんのだけチョコの色違くない!?」
その声を皮切りに、他の部員たちも騒ぎ出す。
「あ、本当だ」
「なんで国見だけー?!」
国見君のだけ、みんなと違う味を渡したのがバレてしまった。
そのことが気まずくて、私は掃除用のモップを取りに体育倉庫へと逃げることにした。
「あーあ……」
国見君に悪いことをしてしまった。
ああ言う絡まれ方をされるの、嫌いなはずなのに。
でも、クラスが違うから、わざわざ教室へ行って渡すのも違うし……。
やっぱり、国見君にも定番のフレーバーをあげた方がよかったのかな……。
後悔しながらモップを片手に体育倉庫を出ると、国見君が遠慮がちに私に声をかけてきた。
「◯◯さん……」
「あ、国見君……。何かな?」
もしかして、なんであんなことしたの、と責められる?
それとも、もうあんなことをするな、と釘を刺される?
静かに国見君の言葉を待っていると、
「……アレ、うまかった」
ぶっきらぼうだけど、ちょっとだけ照れたような低い声が返ってきた。
私は一瞬言葉が出なかった。
でもすぐに小さく笑い返した。
「よかった!」
「うん、じゃあ……。それだけだから」
そう言って国見君は体育館の方へと戻っていった。
ほんの一言しか話さなかったけれど、しばらく心の中がぽかぽかし続けていた。
ーーFinーー
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