教えて天喰君

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視界に広がる濁った水。
どこまで流されたのだろう。
光が差し込まないくらい深い位置。

意識が戻ったときには木の破片やら崩壊したコンクリートが身体に覆いかぶさって身動きが取れなくなっていた。

エラ呼吸ができるおかげで溺死はしないけど、時間の問題。

ああ、私、このまま死んじゃうのかな。

エラからポコポコと空気が漏れる。
こんなに長い時間水の中にいたことがない。
水掻きを取ってから極力水の中に入るのを避けていたから。

案外水中も悪くないかもしれない。
これなら、もっと積極的に潜っておけばよかった。

……お腹痛い。

怖くて下腹部を見れないけど、ほのかに水に赤い液体が混ざっているように見える。

もしかしなくても出血?
瓦礫が覆いかぶさっているだけかと思っていたのに。

もう、目を瞑っちゃおうかな。


“────◯◯さん!………◯◯さん!”


そんなとき、微かに名前を呼ばれた気がした。
水の中で喋れる知り合いなんていたかな。

ぼんやりと何かがこちらに向って泳いでくる。
そこには尾びれと背びれを生やした天喰君の姿が。

おにぎり食べてくれたのかな。
魚を食べると、水掻きじゃなくてヒレが現れるんだね。

覆いかぶさっている瓦礫を貝の硬いシールドで破壊したり、タコの触手で巻き付けて退かしたり。

全て取り除かれ、私は天喰君によって助けられた。


「ゲホッ……ゴホッ……」


久しぶりにエラ呼吸をしたから、陸に出たとき咳き込んでしまった。

そのまま天喰君に抱きかかえられる私。
重くないかな……。

少し視線を上げると、天喰君のシャープな顎のライン。

あ、首元にエラがない。
ヒレのおかげで速く泳げても水中呼吸はできなかったんだね。

それなら、あのとき私を呼んだように聞こえた声は?
ただの幻聴だったのかな。

お腹の痛みに耐えながらもそんなことを考えた。
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