〜第一章〜 偽りの性別
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ーー通形sideーー
◯◯は無事に逃げられただろうか。
“無茶はしないでね!”
去り際にかけられたあの声を思い出す。
だけどね、ヒーローはいつだって命がけの仕事なんだよ。
今はヒーローコスチュームじゃない。
個性の『透過』を使えば、当然服はすり抜けて全裸になってしまう。
けれど、これはヘマではなくあえて。
だから、仕方がないよね。
長期戦は不利だ。
他のヒーローが到着するまで、耐えられればいいけれど。
「さあ、脳無!かかってこい!」
後ろにいる大切な人たちを守るために、ここを通すワケにはいかない。
ーーーー
ほどなくして、プロヒーローたちが続々と到着し、事態は鎮圧へと向かった。
戦いの爪痕は深く、俺の服は瓦礫の下敷きになったり、脳無の攻撃に巻き込まれたりして、見るも無残なボロ布と化していた。
「参ったな……」
申し訳程度に拾った布を腰に巻き、俺は真っ先に建物の外の避難場所へと向かった。
◯◯は大丈夫だろうか。
泥だらけの顔で周囲を見渡す。
怪我をした人、泣いている子供。
けれど、そこに彼の姿はなかった。
「◯◯………?」
胸に嫌な予感が広がる。
まさか、まだ建物の中に?
俺は周囲の制止を振り切り、再び崩落の進むショッピングモールへと飛び込んだ。
大分建物が崩れ始めている。
俺は『透過』でなんとかなるけど、他の人を一緒に透過させることはできない。
急いで探さないと。
そう言えば、◯◯の個性って何なんだろう。
昔、その個性でからかわれたと聞いたことはあるけど、結局聞けずにいる。
「◯◯!返事をしてくれ!どこにいるんだ!」
喉が枯れるほど名前を叫ぶ。
すると、瓦礫の山の奥から、微かなうめき声が聞こえた。
「う……っ…」
「っ!今助けるよ!」
音のする方へ駆け寄ると、そこには見覚えのある服を着た人が倒れていた。
不幸中の幸いか、重なり合った大きな瓦礫が偶然にも頑丈な隙間を作っており、押し潰されるのは免れたようだ。
だけど、俺は息を呑んだ。
「それは……」
◯◯の腕の中にぎゅっと抱きしめられていたのは、さっき俺たちが一緒に選んだあのショップバッグだった。
ボロボロになり、泥に汚れながらも、必死に守り抜こうとした形跡がある。
「本当にバカなんだから」
こんな物のために逃げ遅れるなんて。
俺は安堵と少しの呆れを感じながら、ぐったりとしたその身体を抱き上げた。
その瞬間。
「……え?」
腕に伝わる感触に、思考が止まった。
思っていたよりも、ずっと小柄で、ずっと軽い。
以前肩を組んだ時とは明らかに違う、骨格の細さ。
そして、腕の中に伝わる、柔らかで、しなやかな……。
「◯◯……?」
服装も髪型も、確かに俺の知っている彼のはずだ。
だけど、降り注ぐスプリンクラーの水に濡れ、透けた肌や、荒い呼吸を繰り返す胸のライン。
見知った◯◯とはどことなく雰囲気が違って見えた。
俺は周囲の安全を確認しながら、ひとまず建物から離れ、誰もいない救護テントの裏へと滑り込んだ。
改めて、腕の中の親友を見つめる。
上から下までじっくりと。
「女の子……だよね?」
うん、間違いない。
この華奢な肩も、小さな手も。
どう見ても、僕の知らない女の子がそこにいた。
脳無の攻撃を受けた衝撃で姿が変わったのか。
それとも、これが本人の個性によるものなのか。
いや、それよりも、ずっと、俺に隠していたのか。
意識を失った彼女の寝顔を見つめながら、俺は得も言われぬ衝撃に立ち尽くしていた。
◯◯は無事に逃げられただろうか。
“無茶はしないでね!”
去り際にかけられたあの声を思い出す。
だけどね、ヒーローはいつだって命がけの仕事なんだよ。
今はヒーローコスチュームじゃない。
個性の『透過』を使えば、当然服はすり抜けて全裸になってしまう。
けれど、これはヘマではなくあえて。
だから、仕方がないよね。
長期戦は不利だ。
他のヒーローが到着するまで、耐えられればいいけれど。
「さあ、脳無!かかってこい!」
後ろにいる大切な人たちを守るために、ここを通すワケにはいかない。
ーーーー
ほどなくして、プロヒーローたちが続々と到着し、事態は鎮圧へと向かった。
戦いの爪痕は深く、俺の服は瓦礫の下敷きになったり、脳無の攻撃に巻き込まれたりして、見るも無残なボロ布と化していた。
「参ったな……」
申し訳程度に拾った布を腰に巻き、俺は真っ先に建物の外の避難場所へと向かった。
◯◯は大丈夫だろうか。
泥だらけの顔で周囲を見渡す。
怪我をした人、泣いている子供。
けれど、そこに彼の姿はなかった。
「◯◯………?」
胸に嫌な予感が広がる。
まさか、まだ建物の中に?
俺は周囲の制止を振り切り、再び崩落の進むショッピングモールへと飛び込んだ。
大分建物が崩れ始めている。
俺は『透過』でなんとかなるけど、他の人を一緒に透過させることはできない。
急いで探さないと。
そう言えば、◯◯の個性って何なんだろう。
昔、その個性でからかわれたと聞いたことはあるけど、結局聞けずにいる。
「◯◯!返事をしてくれ!どこにいるんだ!」
喉が枯れるほど名前を叫ぶ。
すると、瓦礫の山の奥から、微かなうめき声が聞こえた。
「う……っ…」
「っ!今助けるよ!」
音のする方へ駆け寄ると、そこには見覚えのある服を着た人が倒れていた。
不幸中の幸いか、重なり合った大きな瓦礫が偶然にも頑丈な隙間を作っており、押し潰されるのは免れたようだ。
だけど、俺は息を呑んだ。
「それは……」
◯◯の腕の中にぎゅっと抱きしめられていたのは、さっき俺たちが一緒に選んだあのショップバッグだった。
ボロボロになり、泥に汚れながらも、必死に守り抜こうとした形跡がある。
「本当にバカなんだから」
こんな物のために逃げ遅れるなんて。
俺は安堵と少しの呆れを感じながら、ぐったりとしたその身体を抱き上げた。
その瞬間。
「……え?」
腕に伝わる感触に、思考が止まった。
思っていたよりも、ずっと小柄で、ずっと軽い。
以前肩を組んだ時とは明らかに違う、骨格の細さ。
そして、腕の中に伝わる、柔らかで、しなやかな……。
「◯◯……?」
服装も髪型も、確かに俺の知っている彼のはずだ。
だけど、降り注ぐスプリンクラーの水に濡れ、透けた肌や、荒い呼吸を繰り返す胸のライン。
見知った◯◯とはどことなく雰囲気が違って見えた。
俺は周囲の安全を確認しながら、ひとまず建物から離れ、誰もいない救護テントの裏へと滑り込んだ。
改めて、腕の中の親友を見つめる。
上から下までじっくりと。
「女の子……だよね?」
うん、間違いない。
この華奢な肩も、小さな手も。
どう見ても、僕の知らない女の子がそこにいた。
脳無の攻撃を受けた衝撃で姿が変わったのか。
それとも、これが本人の個性によるものなのか。
いや、それよりも、ずっと、俺に隠していたのか。
意識を失った彼女の寝顔を見つめながら、俺は得も言われぬ衝撃に立ち尽くしていた。
