アナタを守らせて下さい
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〜アナタを守らせて下さい〜
実習の授業終わりのこと。
「……」
やってくれたな。
作業服のつなぎから制服に着替えるために更衣室に行くと、あるはずの制服がなかった。
確実にここに置いた。
他の人が間違えて着替えるなんてあり得ないし、これは意図的に隠したに違いない。
ここ最近、シャーペンがなくなったり、私の席の周りだけ掃除後にも関わらず消しカスが凄かったり、提出したはずのノートが落ちていたことがあった。
初めはたまたまだと思っていたけれど、連日の不可解な出来事に引き続き制服がなくなったとなれば、誰にだって察しがつく。
これは虐めだ。
心当たりと言えば先日行われた体育祭だろうか。
ーーーー
「次、借り物競走だって」
「男子頑張れよー!」
友達とプログラム表を眺めながらクラスの応援をしていた。
「てか●●!髪の毛バッサリ切りすぎー!」
「体育祭に向けて気合い入れちゃった。髪の毛洗うの楽になったよ」
「なにそれウケる!」
いつの間にか応援はそっちのけになり、友達は私の短くなった髪を弄りだした。
そんなとき、競技中の男子生徒が私の目の前までやってきた。
「◯◯、来てくれ!」
「えっ……」
彼は昨年同じクラスだった日野君。
借り物の対象が女子生徒だとか、ショートヘアの子とかだったのかな。
昨年は仲良くしていたとは言え、今は敵チーム。
このまま私が行かなければ自分のチームが一歩リードする。
そんな卑怯な考えから行くのを躊躇していたのに、
「早く!」
「ちょっと待ってよ!」
日野君に無理やり腕を掴まれて立たされた私は、強制的に借り物判定係りの元へと連れて行かれた。
「お題の紙を見せて下さい」
「はい」
「なになに……おっ、これは!」
日野君に渡されたお題の紙を読むや否や、判定係りのテンションが上がるのが分かった。
そんなに面白いお題だったのだろうか。
気になる。
その答えは直ぐに明かされた。
「好きな人!なんとお題は好きな人です!」
「……はぁ?えっ、えっ……ちょっ」
好きな人?
友達としてだよね?
だけど、日野君の顔を見ると真っ赤になっていた。
これは人としてでも、友達としてでもなく、異性としての好きだ。
「俺、◯◯のことが好きだ。お前さえ良ければ付き合って欲しい」
真っ直ぐに私を見つめる日野君。
「おっとー!ここで公開告白!」
判定係りがいつの間にか司会進行役の様にアナウンスをしてきた。
それを聞いた観客席からは、冷やかしの声や声援、野次など様々な声が聞こえてくる。
「返事を聞かせてくれないか」
「……っ」
日野君とは確かに気が合うと思う。
それは昨年同じクラスになって実感した。
部活も頑張っているし、背だって高い。
数少ない女子生徒が、彼のことを格好良いと騒いでいるのも知っている。
だけど……だけど……。
「ごめんなさい!」
タイプじゃないものは仕方がない。
私は日野君の様な人ではなく、もっと可愛い感じの歳下が好みなの!
頭を深々と下げながら謝った。
マイクは私の声を拾わなかったみたいだけれど、私の対応から結果は明白。
観客席からは励ましの声や、笑い声が飛び交った。
「そっか……。だけど、ゴールまでは一緒に来てくれないか?」
「うん……」
こんなに気まずい思いをしながらゴールテープをくぐったのは初めてだ。
その後、控え席に戻ると、
「●●、振るなんて勿体ない」
「日野君が可哀想」
と、さっきまで楽しく話していた友達にまで冷たい言葉を吐かれる羽目になった。
振ることってそんなに悪いことなの?
好きでもないのに付き合う方が悪いと思うんだけど。
今年の体育祭は散々だ。
ーーーー
おそらく、あのときの公開告白を断ったのが原因で、日野君のファンが嫉妬で嫌がらせをしているに違いない。
決めつけはよくないけれど、本当にそれ以外に心当たりがないから。
取り敢えずどうするか……。
仕方がない、このまま教室に戻るか。
幸いにも教室に入ると作業服や体操着、部活のジャージを着ている男子生徒はたくさんいた。
だから私が作業服のままでいても特にお咎めはされない。
こうして、私は作業服で学校生活を送ることになった。
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