男の子のお姫様
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カオリと一緒に文化祭へ行く約束はしたけれど、私の心は少しも晴れなかった。
誰かに誘われたからではなく、浩輔君の口から、彼自身の言葉で「来てください」と言ってほしかった。
その一言さえあれば、正々堂々と彼に会いに行ける気がしたから。
私はもう一度浩輔君に会えないか試みた。
だけど、メッセージを送っても返ってくるのは、「部活が長引きそうで」「文化祭の準備が終わらなくて」という、隙のない拒絶の言葉ばかり。
もっともらしい理由だけれど、私には避けられているように感じた。
だって、初めてパンケーキを食べに行ったあの時も、彼は同じように忙しかったはずだ。
それでも、私のために時間を作って会ってくれた。
仕方がない。
こんなこと、本当はしたくなかったけれど……。
私は、初めて彼と出会ったあの夜の道へ向かった。
……。
…………。
どれくらい経っただろうか。
待てど暮らせど、校名の入ったジャージ姿の彼は現れない。
通り過ぎるのは、見ず知らずの人や、足早に帰路を急ぐスーツの人ばかり。
心細さに押しつぶされそうになりながら、私は先日、カフェでこっそり撮影した彼の画像を眺めた。
大きな口を開けて、パンケーキを美味しそうに頬張る姿。
それが、あまりにも可愛らしくて、愛おしさすら感じた。
ああ、そうか……。
なぜこんなにも彼に執着し、スマホの通知1つに一喜一憂しているのか。
自分でも気付かないフリをしていた答えが、ハッキリと見えてきた。
私は、浩輔君のことが好きなんだ。
その時だった。
「……●●さん?」
耳に届いたのは、待ち望んでいた、あの少し高い声。
顔を上げると、そこには驚いたように目を見開いた浩輔君が立っていた。
「こんなところで、何しているんですか?」
「……待っていたら、会えるかなって思って」
絞り出した言葉に、彼の眉が微かに動く。
困惑、あるいは迷惑。
そのどちらにせよ、パンケーキを食べた時の柔らかな表情ではなかった。
「そう……ですか」
一言、それだけ。
そんなに冷たい顔をしないで。
事務的な返事をしないで。
「あのね、浩輔君!」
堪らなくなって声を張り上げようとした瞬間、彼は私の言葉を遮るように言葉を被せてきた。
「……送っていきます」
「えっ?でも、まだ話が……」
「もう時間が遅いので。行きましょう」
有無を言わせない拒絶。
まるで、厄介事を未然に防ごうとしているみたいだった。
家までの道のり、2人の間に会話はなかった。
ただ、静かな夜の住宅街に、2人分の足音が響くだけ。
隣を歩く彼は、前を向いたまま一度もこちらを見ようとはしない。
家の近くの角まで来ると、私はぴたりと足を止めた。
「家、すぐそこだからここまででいいよ」
「そうですか。では、また」
冷たく背を向ける浩輔君。
その背中に向かって、私は思わず声を張り上げた。
「文化祭!」
浩輔君の肩がビクリと跳ねる。
「文化祭……行ったら、ダメかな?」
震える声で問いかける。
彼は何も言わなかった。
ただ、その横顔には、困り果てたような表情を浮かべているのが分かった。
誰かに誘われたからではなく、浩輔君の口から、彼自身の言葉で「来てください」と言ってほしかった。
その一言さえあれば、正々堂々と彼に会いに行ける気がしたから。
私はもう一度浩輔君に会えないか試みた。
だけど、メッセージを送っても返ってくるのは、「部活が長引きそうで」「文化祭の準備が終わらなくて」という、隙のない拒絶の言葉ばかり。
もっともらしい理由だけれど、私には避けられているように感じた。
だって、初めてパンケーキを食べに行ったあの時も、彼は同じように忙しかったはずだ。
それでも、私のために時間を作って会ってくれた。
仕方がない。
こんなこと、本当はしたくなかったけれど……。
私は、初めて彼と出会ったあの夜の道へ向かった。
……。
…………。
どれくらい経っただろうか。
待てど暮らせど、校名の入ったジャージ姿の彼は現れない。
通り過ぎるのは、見ず知らずの人や、足早に帰路を急ぐスーツの人ばかり。
心細さに押しつぶされそうになりながら、私は先日、カフェでこっそり撮影した彼の画像を眺めた。
大きな口を開けて、パンケーキを美味しそうに頬張る姿。
それが、あまりにも可愛らしくて、愛おしさすら感じた。
ああ、そうか……。
なぜこんなにも彼に執着し、スマホの通知1つに一喜一憂しているのか。
自分でも気付かないフリをしていた答えが、ハッキリと見えてきた。
私は、浩輔君のことが好きなんだ。
その時だった。
「……●●さん?」
耳に届いたのは、待ち望んでいた、あの少し高い声。
顔を上げると、そこには驚いたように目を見開いた浩輔君が立っていた。
「こんなところで、何しているんですか?」
「……待っていたら、会えるかなって思って」
絞り出した言葉に、彼の眉が微かに動く。
困惑、あるいは迷惑。
そのどちらにせよ、パンケーキを食べた時の柔らかな表情ではなかった。
「そう……ですか」
一言、それだけ。
そんなに冷たい顔をしないで。
事務的な返事をしないで。
「あのね、浩輔君!」
堪らなくなって声を張り上げようとした瞬間、彼は私の言葉を遮るように言葉を被せてきた。
「……送っていきます」
「えっ?でも、まだ話が……」
「もう時間が遅いので。行きましょう」
有無を言わせない拒絶。
まるで、厄介事を未然に防ごうとしているみたいだった。
家までの道のり、2人の間に会話はなかった。
ただ、静かな夜の住宅街に、2人分の足音が響くだけ。
隣を歩く彼は、前を向いたまま一度もこちらを見ようとはしない。
家の近くの角まで来ると、私はぴたりと足を止めた。
「家、すぐそこだからここまででいいよ」
「そうですか。では、また」
冷たく背を向ける浩輔君。
その背中に向かって、私は思わず声を張り上げた。
「文化祭!」
浩輔君の肩がビクリと跳ねる。
「文化祭……行ったら、ダメかな?」
震える声で問いかける。
彼は何も言わなかった。
ただ、その横顔には、困り果てたような表情を浮かべているのが分かった。
