期末テストが無事に終わり、残すは夏休みに入るのを待つのみ。

そう思っていると、学年主任兼担任の先生に呼び止められた。


「◯◯、ここ最近ずっと作業服だろ」

「あ、はい。そうですけど……」


さすがに怒られる？

いくらクラスの男子も通常授業のときに作業服や体操着、ジャージを着ていることがあっても、私みたいに毎日ではない。


「もうじき終業式だから、そのときはちゃんと制服を着ろよ」

「はい……」

「分かったのなら行きなさい」


怒られずには済んだけれど、やはり卒業まで貫き通すのは難しいか。

あと半年足らずで卒業なのに新しく制服を買うなんて、勿体なくて出来ない。
そんなことを言えば親には確実に怒られる。

仕方がない、探すか。

授業後、最後に見かけた更衣室の周辺から探すことにした。

……。
…………。


「やっぱりない」


体育倉庫も見てみるか。
室内部の部活が始まる前に速やかに体育倉庫に入った。

跳び箱の中、ビブス入れの中、マットの間。

そもそもこんなところにあったら生徒か先生が見つけてくれているよなー。

そんなことを思っていると、


「◯◯先輩、何してるんですか？」

「え？……浩輔？」


体操着姿の浩輔がいた。

そうか、今日は男子バレー部が体育館を使う日か。


「いや、ちょっとね……。制服を探してるの。終業式は正装で出ろって担任に言われちゃって。今更買うのも勿体ないし」

「そう言うことなら僕も一緒に探しますよ！」

「え、いいの？部活は？」


これから部活だから体育倉庫に来たんじゃないのか。


「大丈夫ですよ。ネット張ったら1年生は外でランニングと筋トレなので、そのときに一緒に探します。なので先に行っていてください」

「ありがとう……」


本当に優しい子だ。


「じゃあ、校門から右回りに探してるね」

「はい」


浩輔と別れてから昇降口に向かった。
靴を取り出すと、身に覚えのない汚れが付いていた。


「うわ……」


試しに手で払ったけれど取れそうにない。


「一体何を付けたのよ……。最悪」


探す前に水飲み場の蛇口で洗うか。

それまで来客用のスリッパを借りて……っと。
外で履いて行ってはいけないけれど、今は非常事態。

後でスリッパも洗って返すから！

誰に言うわけでもなく言い訳をした。