男の子のお姫様
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~男の子のお姫様~
サークルの飲み会の帰り、思ったより遅い時間になってしまった。
この道、普段は街灯がなく暗いから避けて通らないけど、今日は早く帰りたいから仕方がない。
早歩きで通り抜けてしまおう。
別にストーカーをされていたり、誰もが振り向く容姿を持ち合わせているわけではない。
ただの気持ちの問題だ。
………あれ?
誰かうずくまっている?
その物体までまだ距離があるため、よく見えないけど、何かがいる。
大きなゴミか、建物の影か、はたまた本当に人なのか。
引き返すか………。
だけど、怪我人だと放っておけないし。
考えている間にもその物体へと近づくわけで、正体が分かった頃には声をかけていた。
「大丈夫ですか?」
怪しい人じゃない。
だって、背面に伊達工業高校の名前が入ったジャージを着ていたから。
うずくまっていた少年がゆっくりとこちらを向いた。
暗闇でも顔色が悪いことが分かった。
「うっ………」
「え、どうしよう。具合悪い?」
小さく呻き声を上げる少年にあたふたとしてしまい、どうすればいいか分からなかった。
「そうだ、水飲める?」
私は酔い覚ましとして買っていたペットボトルの水を鞄から取り出した。
「まだ口付けていないから」
キャップを外して少年に渡すと、半分ほど勢いよく飲んだ。
「はぁ~………すみません、ありがとうございます」
「いいえ」
取りあえず、少しは良くなったようで安心した。
「えっと………僕、部活帰りでちょっと疲れてしゃがんだら、そのまま視界がぐるぐるして立てなくなっちゃって……」
疲労か熱中症か。
9月も終わりに差し掛かったとは言え、まだまだ暑い日が続いている。
それに加え、こんな時間まで練習したら倒れもするわ。
「一人で帰れる?」
「はい、もう少し休んだら帰れるようになると思うので」
心配だ。
高校生なんだろうけど、男の子にしては小柄だし、私よりよっぽど可愛らしいお顔をしている。
最近は男だからって襲われないとも限らない。
「良くなるまで私も付き合うよ」
そう言って少年の隣にしゃがみ込んだ。
「え、悪いですよ」
「いいから、いいから」
と、言ったはいいものの、やっぱり少し気まずいかも。
そうだ、自己紹介でもしようかな。
「君、名前は?私は◯◯●●。すぐ近くの大学の2年生」
「作並浩輔です。伊達工に通う1年生です」
「1年生なのにこんな時間まで部活の練習って凄いね」
「僕、スタメンなので」
こんなに小柄なのにスタメンなんだ。
何部なんだろう。
勝手なイメージだけど、
「分かった!卓球部でしょ」
「あ、いえ……バレー部です」
「えっ!?」
まずい、あからさまに顔に出てしまった。
小柄なのにバレー部なのって疑う顔が。
「あはは、やっぱり見えませんよね」
なんて、笑っているけど落ち込んだ表情の浩輔君。
「ごめんなさい……」
「気にしていないですよ」
絶対に気にしている。
伊達工って共学とは言えほぼ男子校だから、荒れているのかと思っていたけど、初対面の私に気を遣える子もいるんだ。
優しい性格だな。
「体調良くなってきたので、そろそろ帰ります。色々と良くして下さりありがとうございました」
「いいえ」
お礼までちゃんとできるなんて。
やっぱり良い子だ。
こんな弟が欲しかったなー。
ふと思ったと同時に私は浩輔君に、
「ねぇ、連絡先交換しない?」
と聞いていた。
聞いてから思ったけど、絶対に怪しい、怪しすぎる。
いくら浩輔君が優しい性格だとは言え、初対面の年上女性に連絡先を聞かれて教えるなんて、
「いいですよ」
そうそう、ありえない……って、
「いいの?!」
「はい。後日ちゃんとお礼したいですし」
あーはいはい、そう言うことね。
だけど、理由はどうあれ浩輔君と連絡先を交換できてよかった。
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