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迎えた救助訓練のお手伝い。
指定されたエリア、積み上げられたコンクリートの塊と鉄屑の隙間。
私は指示通り、狭い空間で膝を抱えて、助けが来るのを待っていた。
湿気のおかげで肌の調子はすこぶる良いけれど、瓦礫の中は独特の埃っぽさと静寂に包まれている。
耳に入ってくるのは、遠くで響く爆発音や、誰かの指示を飛ばす声。
誰が助けに来てくれるんだろう……。
噂では、文化祭より前にやった救助訓練は、グダグダだったと聞いている。
それから数ヵ月経った今、幾分マシになっていると思いたい。
真っ暗な空間で1人、時間の感覚が曖昧になり始めた頃、ようやく人の気配が近付いてきた。
「助けてください!ここにいます!」
マニュアル通りのセリフを、精一杯叫ぶ。
すると、外から「待ってろ、今出す!」という力強い足音が聞こえ、重たい瓦礫が退けられる振動が伝わってきた。
やがて、暗闇の中に一筋の鋭い光が差し込む。
逆光でシルエットしか見えないその人影が、迷いのない動作で私に手を差し伸べた。
「捕まれ!」
その低く落ち着いた声に、心臓が跳ねる。
導かれるままにその手を握ると、私は一気に光の下へと引き揚げられた。
「大丈夫か。怪我は?」
「あ……はい。ありがとうございます……っ」
埃を払いながら顔を上げると、そこにはどこか硬い表情をした轟君が立っていた。
よりによって、彼……。
運命のイタズラにしては、あまりに気まずい再会に、私は思わず視線を泳がせる。
轟君もまた、私の顔を認めた瞬間に、ほんの一呼吸だけ、たじろぐような気配を見せた。
それよりも、ずっと暗い瓦礫の中で待機していたため、外の日差しが眩しい。
思わず目を細める。
「う……っ」
たっぷり塗ってきた日焼け止めが、肌の上でじりじりと熱を帯びる感覚。
梅雨の晴れ間の太陽は、私にとっても油断できない。
眩しさに耐えるように顔を伏せていると、頭上から不思議そうな声が降ってきた。
「……顔。この間の、ひび割れがなくなってるな」
直球すぎる言葉に、心臓がドクリと跳ねた。
やっぱり、彼は見ていたのだ。
あの風が吹いた日、私の顔にあった鱗も、隠していた火傷も。
「あ、うん。私の個性、『乾燥』だから。梅雨時は空気が湿ってるから治るの」
何でもないことのように答えるけれど、指先が少し震える。
轟君は「そうか」とだけ短く呟いた。
その瞳の奥にある感情が読めない。
避けられていた理由も、今こうして私をじっと見つめている理由も。
「あの……」
何を思ったのか、私の口はその理由を聞き出そうとしていた。
その時、少し離れたところから、救援要請の声が聞こえてきた。
「……悪い、1人で救護所まで行けるか」
「あ、はい。大丈夫です」
私の返事を聞くと、彼はそれ以上何も言わず、すぐに次の要救助者の元へと駆け出していった。
翻るコスチューム。
迷いのない背中。
その姿は、学校ですれ違う時のような気まずい男子高校生ではなく、困っている誰かのために命を懸ける、本物のヒーローのそれだった。
私は、彼が踏みしめていった地面をぼんやりと見つめながら、救護所へと歩き出した。
どうして彼は私を避けるのか。
その答えはまだ見つからないけれど、彼に救い出された時の手の熱だけが、いつまでも掌に残っていた。
指定されたエリア、積み上げられたコンクリートの塊と鉄屑の隙間。
私は指示通り、狭い空間で膝を抱えて、助けが来るのを待っていた。
湿気のおかげで肌の調子はすこぶる良いけれど、瓦礫の中は独特の埃っぽさと静寂に包まれている。
耳に入ってくるのは、遠くで響く爆発音や、誰かの指示を飛ばす声。
誰が助けに来てくれるんだろう……。
噂では、文化祭より前にやった救助訓練は、グダグダだったと聞いている。
それから数ヵ月経った今、幾分マシになっていると思いたい。
真っ暗な空間で1人、時間の感覚が曖昧になり始めた頃、ようやく人の気配が近付いてきた。
「助けてください!ここにいます!」
マニュアル通りのセリフを、精一杯叫ぶ。
すると、外から「待ってろ、今出す!」という力強い足音が聞こえ、重たい瓦礫が退けられる振動が伝わってきた。
やがて、暗闇の中に一筋の鋭い光が差し込む。
逆光でシルエットしか見えないその人影が、迷いのない動作で私に手を差し伸べた。
「捕まれ!」
その低く落ち着いた声に、心臓が跳ねる。
導かれるままにその手を握ると、私は一気に光の下へと引き揚げられた。
「大丈夫か。怪我は?」
「あ……はい。ありがとうございます……っ」
埃を払いながら顔を上げると、そこにはどこか硬い表情をした轟君が立っていた。
よりによって、彼……。
運命のイタズラにしては、あまりに気まずい再会に、私は思わず視線を泳がせる。
轟君もまた、私の顔を認めた瞬間に、ほんの一呼吸だけ、たじろぐような気配を見せた。
それよりも、ずっと暗い瓦礫の中で待機していたため、外の日差しが眩しい。
思わず目を細める。
「う……っ」
たっぷり塗ってきた日焼け止めが、肌の上でじりじりと熱を帯びる感覚。
梅雨の晴れ間の太陽は、私にとっても油断できない。
眩しさに耐えるように顔を伏せていると、頭上から不思議そうな声が降ってきた。
「……顔。この間の、ひび割れがなくなってるな」
直球すぎる言葉に、心臓がドクリと跳ねた。
やっぱり、彼は見ていたのだ。
あの風が吹いた日、私の顔にあった鱗も、隠していた火傷も。
「あ、うん。私の個性、『乾燥』だから。梅雨時は空気が湿ってるから治るの」
何でもないことのように答えるけれど、指先が少し震える。
轟君は「そうか」とだけ短く呟いた。
その瞳の奥にある感情が読めない。
避けられていた理由も、今こうして私をじっと見つめている理由も。
「あの……」
何を思ったのか、私の口はその理由を聞き出そうとしていた。
その時、少し離れたところから、救援要請の声が聞こえてきた。
「……悪い、1人で救護所まで行けるか」
「あ、はい。大丈夫です」
私の返事を聞くと、彼はそれ以上何も言わず、すぐに次の要救助者の元へと駆け出していった。
翻るコスチューム。
迷いのない背中。
その姿は、学校ですれ違う時のような気まずい男子高校生ではなく、困っている誰かのために命を懸ける、本物のヒーローのそれだった。
私は、彼が踏みしめていった地面をぼんやりと見つめながら、救護所へと歩き出した。
どうして彼は私を避けるのか。
その答えはまだ見つからないけれど、彼に救い出された時の手の熱だけが、いつまでも掌に残っていた。
