子供でいられなかった子供時代
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〜子供でいられなかった子供時代〜
裸の男女。
これから甘い時間を過すわけでも、事後の余韻に浸っているわけでもない。
「うわぁ……。ごめん、別れてくれないか」
男は私の裸を見るやいなや、そう言った。
「分かった、私こそごめんね」
あーあ、今回も振られてしまった。
タイミングは決まってその人と初めて肌を合わせるとき。
原因は分かっている。
私のこの背中にある大きな火傷痕。
悲しいと思う反面、どこか安心してしまった自分がいた。
私の心の片隅には、いつも年下の幼馴染の焦凍の存在があったから。
だからと言って振られるのには慣れた、と言ったら嘘になる。
「ちゃんと好きだったのに……っ……今度こそ大丈夫だと思ったのに……っぅ」
彼と別れた後にこっそり一人で涙する。
この火傷痕はその幼馴染である焦凍を助けるために負った。
当の本人は2歳やそこらだったから覚えていないだろうけど。
そう言えば、一度だけ焦凍とお風呂に入ったことがある。
あれは焦凍が当時火傷を負った私と同じ歳の頃。私は10歳。
いくら幼少期とはいえ男女。
今までは断っていたけれど、その日はどうしてもおばさん……焦凍のお母さんの体調が優れなくて渋々。
ーーーー
「ほら焦凍!服脱いで、お風呂入るよ!」
私はバスタオルを身体に巻いてお風呂に入った。
「ネェネはなんでタオル巻いてるんだ?俺ばっか脱いでふこーへー!」
「ネェネは女の子だから」
「でも、お母さんは入るときは巻いていないぞ」
「…………」
5歳ってこんなにも口が達者だったっけ。
自分は当時どうだったか、思い出せない。
「はあー」
私はため息を吐き、バスタオルを外した。
すると、私の背中を見た焦凍は案の定、
「ネェネ、背中汚い!」
と、騒いでいた。
「この傷はね、ネェネにとっては誇りなの」
「ホコリ?……埃ばっちぃ!」
絶対に違うホコリと勘違いしている。
「もう背中のことはいいから、早くお風呂済ませるよ!」
「はーい」
その日はそれ以上背中の火傷痕に触れずにお風呂を済ませた。
それ以降、おばさんに頼まれてもお風呂だけは断った。
焦凍も私と入りたがらないし。
私の背中が汚いからだ。
後悔はしていない。
していないけれど、焦凍を助けるためにできた傷を本人に“汚い”と言われたときは、幼ながらに堪えた。