無償の友情
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翌日から、不審者さんは手の装飾を外した状態で部屋に現れるようになった。
剥き出しになった彼の素顔は、相変わらず不健康だけれど、彼の表情がよく見えてよかった。
それに、少しだけ心を開いてくれた気がした。
呼ぶときはいつも「あのー」とか「アナタ」ばかり。
心の中では「不審者さん」と呼んでいるけれど。
……知ったら最後。
そんな予感がするから、私は今日も言葉を飲み込んで、彼の背中を眺めていた。
そんな時だった。
画面を見つめたまま、彼がふと問いかけてきた。
「アンタ、学生?学校は?」
初めて私自身の質問をしてくれた。
「学生……です。だけど、学校には……行っていません」
「はは、引きこもりってやつか」
「はい……」
自嘲気味に答えると、彼はコントローラーを押す力を少しだけ緩めて続けた。
「学校で何かあったのか?」
意外だった。
彼のような人が、仲間以外の他人の事情に興味を持つなんて。
「……居心地が、悪くて」
「個性のせいか?」
私は無言で頷いた。
『施錠』という個性を持つ私は、人の感情の変化に、人一倍敏感だった。
顔色、声色、仕草、前後の文脈。
それらを繋ぎ合わせれば、相手が今何を考え、何を隠そうとしているかが透けて見えてしまう。
先回りをして相手の機嫌を伺う私の振る舞いは、いつしか周囲に気持ち悪いと疎まれ、拒絶された。
それが苛めの始まり。
最初は無視や陰口などの小さな事だったけど、最終的には暴力までに発展した。
……ああ、そうか。
そこでようやく、私は自分の心に腑に落ちる答えを見つけた。
不審者さんは、表情が見えなかった。
そして今は素顔を見せているけれど、それでも何を考えているのかが、まるで読めない。
読まなくていい。
ただ、そこに在るだけの存在。
だから私は、この得体の知れない男と一緒にいることが、何よりも楽だったのだ。
「俺がアンタの学校をぶっ壊してやろうか」
「え……」
唐突な提案に、耳を疑った。
「ゲーム貸してもらっているお礼だ。クリアしたら壊してきてやるよ」
それだけの力がこの人にあるのか。
まるで、コンビニのついでにプリンでも買ってくる、と言っているくらい、軽薄な響き。
けれど、私は首を振った。
「いい。そんなことをしなくてもいいです」
今更、学校の人に仕返しをしたいなんて思わない。
痛い目を見てほしいとも思わない。
それよりも、私はアナタの名前が知りたいと思った。
「そうか、それなら1つ考えとけ」
「はい……」
テレビの光に照らされた彼の横顔を見つめる。
次に来るお礼の機会には、私はきっと、禁忌に触れる質問をするだろう。
例え、その答えを聞いた時が、私の世界の最後になるとしても。
剥き出しになった彼の素顔は、相変わらず不健康だけれど、彼の表情がよく見えてよかった。
それに、少しだけ心を開いてくれた気がした。
呼ぶときはいつも「あのー」とか「アナタ」ばかり。
心の中では「不審者さん」と呼んでいるけれど。
……知ったら最後。
そんな予感がするから、私は今日も言葉を飲み込んで、彼の背中を眺めていた。
そんな時だった。
画面を見つめたまま、彼がふと問いかけてきた。
「アンタ、学生?学校は?」
初めて私自身の質問をしてくれた。
「学生……です。だけど、学校には……行っていません」
「はは、引きこもりってやつか」
「はい……」
自嘲気味に答えると、彼はコントローラーを押す力を少しだけ緩めて続けた。
「学校で何かあったのか?」
意外だった。
彼のような人が、仲間以外の他人の事情に興味を持つなんて。
「……居心地が、悪くて」
「個性のせいか?」
私は無言で頷いた。
『施錠』という個性を持つ私は、人の感情の変化に、人一倍敏感だった。
顔色、声色、仕草、前後の文脈。
それらを繋ぎ合わせれば、相手が今何を考え、何を隠そうとしているかが透けて見えてしまう。
先回りをして相手の機嫌を伺う私の振る舞いは、いつしか周囲に気持ち悪いと疎まれ、拒絶された。
それが苛めの始まり。
最初は無視や陰口などの小さな事だったけど、最終的には暴力までに発展した。
……ああ、そうか。
そこでようやく、私は自分の心に腑に落ちる答えを見つけた。
不審者さんは、表情が見えなかった。
そして今は素顔を見せているけれど、それでも何を考えているのかが、まるで読めない。
読まなくていい。
ただ、そこに在るだけの存在。
だから私は、この得体の知れない男と一緒にいることが、何よりも楽だったのだ。
「俺がアンタの学校をぶっ壊してやろうか」
「え……」
唐突な提案に、耳を疑った。
「ゲーム貸してもらっているお礼だ。クリアしたら壊してきてやるよ」
それだけの力がこの人にあるのか。
まるで、コンビニのついでにプリンでも買ってくる、と言っているくらい、軽薄な響き。
けれど、私は首を振った。
「いい。そんなことをしなくてもいいです」
今更、学校の人に仕返しをしたいなんて思わない。
痛い目を見てほしいとも思わない。
それよりも、私はアナタの名前が知りたいと思った。
「そうか、それなら1つ考えとけ」
「はい……」
テレビの光に照らされた彼の横顔を見つめる。
次に来るお礼の機会には、私はきっと、禁忌に触れる質問をするだろう。
例え、その答えを聞いた時が、私の世界の最後になるとしても。
