歪んだ正義
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〜歪んだ正義〜
「今日からこちらの事務所に配属になりました、◯◯●●です!よろしくお願いします!」
そんな挨拶から私のヒーロー人生は始まった。
パチパチと拍手をされながら迎えてくれた先輩や上司。
夢だったヒーロー。
今日から私はサイドキックとして、街の平和を守る。
街に繰り出せば、憧れや羨望の視線。
少し前まで私が見る側だったのに、今では見られる側。
それが嬉しくて、精一杯がむしゃらに働き始めた。
たとえ、どんな些細なことでも誇りを忘れずに。
ゴミ拾いも、小さな声かけも、困っている人に気付けばすぐに駆け寄った。
だけど、ある日。
パトロール中に大きな荷物を持ったおばあさんが道を尋ねてきた。
「駅はどちらですか?」
「駅ですね!えーっと……」
案内しようと手を伸ばそうとした、そのとき。
一緒にパトロールをしていた先輩ヒーローが、
「それ、点数にならないから、適当に理由をつけて断って」
私にしか聞こえない声で、早口で耳打ちしてきた。
「えっ……」
唖然としていると、先輩はため息1つ吐き、私の代わりにおばあさんの前にズイッと割り込んできた。
「おばあさん、すみません。我々、今から現場に向かうところなので、少し先にある交番で聞いてもらえませんか?」
「でも……」
「すみませんね、それでは!」
「あっ……」
半ば無理やり話を終わらせて、先輩は私の腕を掴んで歩き出した。
急ぎの現場なんてないのに……。
その上、この辺に交番なんてない。
これでは絶対におばあさんは困ってしまう。
なんで先輩はあんな対応をしたのか。
そんな複雑な顔をしていると、先輩は歩きながら話しかけてきた。
「◯◯さん、仕事は選んだほうが良いよ?あんな功績に反映されない人助けなんて……」
確かにうちの事務所はマスコミが注目する現場や危険度が高い事件、出動要請を請けた任務しか評価に反映されない。
「だとしても……!」
困っていることを見て見ぬふりなんて、私にはできない。
今からでも引き返して、おばあさんを助けに行こう。
そう思っていると、再度先輩は私の腕を掴んで制する。
「ヒーローは歩いているだけで街の抑止力になるの!地味な仕事は警察に任せておけばいいんだって!」
「……っっ!」
社会の歯車の私は、その中でも自分のいる事務所の一部でしかない。
今先輩に逆らえば、上司にあることないことを報告されて、最悪クビになりかねない。
なんてちっぽけなんだ。
「分かりました……」
納得なんてしていない。
だけど、今の私にはそう答えるしかできなかった。
ーーーー
また別の先輩と一緒にパトロールをしたときも。
「先輩、さっきすれ違った人、困った顔をしていませんでしたか?」
「ん?そうかー?気のせいじゃない?仮にそうだとしても、他のヤツらが助けるだろ」
先日、一緒にパトロールをした先輩と同じ対応をされた。
もやもやしつつも、確信はないため、そのときは私もスルーをした。
だけどその後も、木に風船が引っかかって泣いている子供、落とし物をして困っている学生、行方不明の犬を探す男性を見つけても、助けに行こうとする私を先輩は阻止する。
誰も直接手を貸そうとしない。
私の事務所の先輩ヒーローたちは、派手な現場だけを追い求めていた。
表では堂々とヒーローアピールをしながら、裏では評価にならない小さな事柄を蔑ろにする。
これが、ヒーローなの……?
これが、私のなりたかったヒーロー……?
疑問を覚えつつも、私もその組織の一部。
嫌になってしまう。
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