面影
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ーーおまけ(死柄木side)ーー
幸せな夢だった。
あの日、みっくんと、ともちゃんと、笑い合っていたかつての自分。
だけど、幸福な光景は前触れもなく、音を立てて崩れ去った。
視界は一瞬で急に真っ暗闇の世界に暗転して、1人ぼっちになった。
「みんなどこ?」
闇に向かって呼びかけるが、返ってくるのは不気味な静寂だけだ。
絶望に震える俺の足元に、不意に何かがすり寄ってきた。
……モンちゃんだ。
可愛い、可愛いモンちゃん。
愛しくて、守るべき家族。
「散歩に行きたいの?」
「ワンッ」
「いいよ、行こう!」
首輪を探したが、どこにも見当たらない。
仕方ないから、俺はモンちゃんを抱き上げることにした。
その瞬間だった。
モンちゃんの体が、抱えた端からボロボロと砂のように崩れ落ちていく。
俺の個性のせいだ。
触れたものを、崩壊させる力。
こんな個性のせいでモンちゃんは……。
「うわアァあぁぁァァァ!!」
自分の叫び声で、意識が現実へと引き戻された。
見慣れた天井。
古びた、酒の匂いと黴の混じったアジトの部屋だ。
心臓が嫌な速さで脈打ち、全身が冷や汗でぐっしょりと濡れている。
どうやら悪夢によって目覚めたようだ。
久しぶりに見た夢が嫌な夢とか。
「気分悪っ……」
外は暗いが再度寝る気もせず、俺はあてもなく街へと足を踏み出した。
……。
…………。
どれほど歩いただろうか。
気が付けば、見覚えのない住宅街に辿り着いていた。
おまけに、追い討ちをかけるように空が泣き出し、冷たい雨が降り始めた。
だが、都合が良かった。
この激しい雨が、脳裏にこびりついた嫌な光景を一緒に洗い流してくれる。
そんな気がして、その場に立ち尽くした。
そんな時だった。
「あのー、風邪引きますよ?」
不意に飛んできた場違いなほど穏やかな声に、わずかに肩が跳ねる。
振り向くと、そこには1人の女が立っていた。
スーツ姿で傘を差している。
仕事帰りか何かだろう。
「こんな俺に、よく話しかけようと思ったな」
いつもの俺なら、話しかけられる前に個性で崩壊させていただろう。
だが今は、人を殺すための気力すら雨に削がれていた。
「どうして、こんなところにいるの?」
悪夢を見たから、なんて言うはずもなく、代わりに女を脅すようなことを言った。
「そんなこと聞く前に、危険なヤツかどうか確かめるのが先じゃないのか?」
だが、女は怯えるどころか、キョトンとしていた。
「じゃあ……アナタは危険な人なの?」
「そのまま聞くやつがいるかよ。アンタも大概だな」
あまりの警戒心のなさに、悪夢のことなんか忘れかけていた。
だからか、俺は流れるように女の後を付いて行った。
幸せな夢だった。
あの日、みっくんと、ともちゃんと、笑い合っていたかつての自分。
だけど、幸福な光景は前触れもなく、音を立てて崩れ去った。
視界は一瞬で急に真っ暗闇の世界に暗転して、1人ぼっちになった。
「みんなどこ?」
闇に向かって呼びかけるが、返ってくるのは不気味な静寂だけだ。
絶望に震える俺の足元に、不意に何かがすり寄ってきた。
……モンちゃんだ。
可愛い、可愛いモンちゃん。
愛しくて、守るべき家族。
「散歩に行きたいの?」
「ワンッ」
「いいよ、行こう!」
首輪を探したが、どこにも見当たらない。
仕方ないから、俺はモンちゃんを抱き上げることにした。
その瞬間だった。
モンちゃんの体が、抱えた端からボロボロと砂のように崩れ落ちていく。
俺の個性のせいだ。
触れたものを、崩壊させる力。
こんな個性のせいでモンちゃんは……。
「うわアァあぁぁァァァ!!」
自分の叫び声で、意識が現実へと引き戻された。
見慣れた天井。
古びた、酒の匂いと黴の混じったアジトの部屋だ。
心臓が嫌な速さで脈打ち、全身が冷や汗でぐっしょりと濡れている。
どうやら悪夢によって目覚めたようだ。
久しぶりに見た夢が嫌な夢とか。
「気分悪っ……」
外は暗いが再度寝る気もせず、俺はあてもなく街へと足を踏み出した。
……。
…………。
どれほど歩いただろうか。
気が付けば、見覚えのない住宅街に辿り着いていた。
おまけに、追い討ちをかけるように空が泣き出し、冷たい雨が降り始めた。
だが、都合が良かった。
この激しい雨が、脳裏にこびりついた嫌な光景を一緒に洗い流してくれる。
そんな気がして、その場に立ち尽くした。
そんな時だった。
「あのー、風邪引きますよ?」
不意に飛んできた場違いなほど穏やかな声に、わずかに肩が跳ねる。
振り向くと、そこには1人の女が立っていた。
スーツ姿で傘を差している。
仕事帰りか何かだろう。
「こんな俺に、よく話しかけようと思ったな」
いつもの俺なら、話しかけられる前に個性で崩壊させていただろう。
だが今は、人を殺すための気力すら雨に削がれていた。
「どうして、こんなところにいるの?」
悪夢を見たから、なんて言うはずもなく、代わりに女を脅すようなことを言った。
「そんなこと聞く前に、危険なヤツかどうか確かめるのが先じゃないのか?」
だが、女は怯えるどころか、キョトンとしていた。
「じゃあ……アナタは危険な人なの?」
「そのまま聞くやつがいるかよ。アンタも大概だな」
あまりの警戒心のなさに、悪夢のことなんか忘れかけていた。
だからか、俺は流れるように女の後を付いて行った。
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