面影
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全身が心地よい倦怠感に包まれ、フワフワしているような感覚が続いていた。
乱れた呼吸を整え、ようやく静寂を取り戻した部屋の中で、外の雨音がいつの間にか遠くなっていることに気が付く。
激しかった雨は、もうすぐ止もうとしている。
ふと横を向くと、弔君が物憂げな瞳で天井を見上げ、隣に横たわっていた。
「なんだか、弔君に私のことを全部知ってもらえた気がする」
「大袈裟。まだほんの一部だろ」
「そうかな〜」
熱を帯びた肌が触れ合う距離で、私は少しだけ笑った。
体を重ねたことで気が大きくなっているのは否めない。
だけど、今はそんな気がしたのだ。
「それなら、この写真はなんだ?」
弔君が不意に、サイドデスクの隅に飾られた写真立てを指差した
「あー、これね。少し前まで飼っていたウサギなの」
「少し前?」
「うん。死んじゃった……」
「そうか」
弔君の表情が、わずかに揺れた気がした。
彼もペットを飼ったことがあるのだろうか。
もしも彼に、あの子のような長い耳が生えていたなら。
今、きっとその耳をシュン垂れ下がるくらいには、悲しそうな顔をしてくれたのではないか……。
そんな幻覚を見てしまう。
私の持論だけど、ペットを飼ったことある人に悪い人はいない。
「私、まだペットロスから立ち直れてないから。……よかったら、これからも遊びに来てよ。仕事帰りか、休日なら大抵ここにいるから」
「……気が向いたらな」
素っ気ない返事。
だけど、その声には先ほどまでの鋭い拒絶はもうなかった。
気分屋で、掴みどころがなくて。
でも、放っておけない危うさがある。
そんなところは、ウサギというより猫に近いのかもしれない。
雨上がりの澄んだ空気。
窓の外で雲が切れる頃には、彼はまたあの黒いフードを深く被って、どこかへ消えてしまうのだろう。
だけど、次に雨が降った時。
あるいは、私が寂しさに耐えかねて窓の外を眺める時。
あの赤い瞳が、またどこかで私を見つけてくれるような気がしていた。
あの子が残してくれた、不思議な縁に感謝するように、私はもう一度だけ彼の手を握りしめた。
ーーFinーー
乱れた呼吸を整え、ようやく静寂を取り戻した部屋の中で、外の雨音がいつの間にか遠くなっていることに気が付く。
激しかった雨は、もうすぐ止もうとしている。
ふと横を向くと、弔君が物憂げな瞳で天井を見上げ、隣に横たわっていた。
「なんだか、弔君に私のことを全部知ってもらえた気がする」
「大袈裟。まだほんの一部だろ」
「そうかな〜」
熱を帯びた肌が触れ合う距離で、私は少しだけ笑った。
体を重ねたことで気が大きくなっているのは否めない。
だけど、今はそんな気がしたのだ。
「それなら、この写真はなんだ?」
弔君が不意に、サイドデスクの隅に飾られた写真立てを指差した
「あー、これね。少し前まで飼っていたウサギなの」
「少し前?」
「うん。死んじゃった……」
「そうか」
弔君の表情が、わずかに揺れた気がした。
彼もペットを飼ったことがあるのだろうか。
もしも彼に、あの子のような長い耳が生えていたなら。
今、きっとその耳をシュン垂れ下がるくらいには、悲しそうな顔をしてくれたのではないか……。
そんな幻覚を見てしまう。
私の持論だけど、ペットを飼ったことある人に悪い人はいない。
「私、まだペットロスから立ち直れてないから。……よかったら、これからも遊びに来てよ。仕事帰りか、休日なら大抵ここにいるから」
「……気が向いたらな」
素っ気ない返事。
だけど、その声には先ほどまでの鋭い拒絶はもうなかった。
気分屋で、掴みどころがなくて。
でも、放っておけない危うさがある。
そんなところは、ウサギというより猫に近いのかもしれない。
雨上がりの澄んだ空気。
窓の外で雲が切れる頃には、彼はまたあの黒いフードを深く被って、どこかへ消えてしまうのだろう。
だけど、次に雨が降った時。
あるいは、私が寂しさに耐えかねて窓の外を眺める時。
あの赤い瞳が、またどこかで私を見つけてくれるような気がしていた。
あの子が残してくれた、不思議な縁に感謝するように、私はもう一度だけ彼の手を握りしめた。
ーーFinーー
