ーー燈矢sideーー


母親に連れられた●●が家に入るのを見送ると、父親が話しを切り出してきた。


「さて、●●が家出をしたのは君が唆したからかね？」


落ち着いているように見えるけれど、怒りに満ち溢れた目。


「はい、申し訳ありませんでした」

「君、名前は？」

「轟……燈矢です」


本当は名字を名乗りたくなかった。

知っている人は知っている。
No.2ヒーローのエンデヴァーの名字。

俺がエンデヴァーの出来損ないの息子だということがバレてしまうから。


「轟……もしかして炎司の息子か」

「お父さんを知っているんですか？」


だけど、この人はお父さんのヒーローネームではなく、名前を出した。


「まあ、腐れ縁のようなものだ。しかし、そうか……やはり親子だな。当時からあいつは…」


●●のお父さんと俺のお父さんが昔なにが合ったのか分からない。

だけど、俺はお父さんを尊敬こそしているが性格は似ていないと思っている。
一緒にしないで欲しい。


「皮肉なもんだ。同じ年頃の子がいたとは。………悪いが、あの子にはもう関わらないでくれ」


俺が関わらなくても、おそらく●●の方から俺を求めてくる。

あいつは愛に飢えていたから。
俺と同じ。

ここは一旦引き下がる振りをする。
だけど、


「ひとことだけ言わせて下さい。彼女を褒めてあげて下さい。どんなに些細なことでもいいので」

「ふん、覚えておこう」

「失礼します」


俺は一礼をしてからその場を後にした。

●●のお父さんが実践してくれるかは分からない。
だけと、俺に出来ることはした。

こんなに●●を心配していた両親。

俺の家庭ではありえないこと。
だからわずかな希望を逃さないでほしい。

あ、そう言えば●●に靴を返してもらっていない。
まあ、いいか。

ペタペタと冷たい道路を踏みしめながら帰路についた。