燃えかす少女と蒼炎の君
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昨晩は廃ビルの屋上で荼毘と肩を並べて眠りについた。
「はっくしゅっ……」
おかげでくしゃみが止まらない。
鼻をすすっている私に荼毘は、
「風邪引くなよ。お前が倒れたら……俺が困る」
いつもみたいに無愛想な顔なのに、その声はどこか柔らかい。
きっと冗談のつもりなんだろうけど、その言葉に、胸がきゅっと締めつけられた。
「まあ、とは言え、さすがに新しい寝床を探さないとな」
彼がぽつりとそう言うと、私もこくりと頷いた。
錆びた屋上の柵から見下ろすと、いくつものビルや家が並ぶ街。
そのどこかに、暖をとれる場所があるはずだ。
私たちは新しい寝床を探すために、街を徘徊することにした。
……。
…………。
街を歩いていると、ぽつりと空から雨が落ちてきた。
雨はすぐに大粒になり、私たちは慌てて近くの古い商店のひさしの下に駆け込む。
「ついてねぇな」
「でも、そこまで濡れずに済んでよかったね」
荼毘のぼやきに、私は笑って返した。
だけど、昨晩からずっと風に吹きさらされていたため、体はますます冷えていく。
少しでも体を温めようと、両手を擦り合わせた。
そのとき、ふと、指先にほんのりとした温もりを感じた。
「あれ……?」
おそるおそる両手を覗き込む。
そこには、かすかに……でも確かに、薄い橙色の炎がゆらゆらと灯っていた。
「どうした?」
私の様子に気付いた荼毘が顔をうかがってきた。
驚きと戸惑いのまま、そっと手のひらを見せた。
「……ねえ、見て」
「それは……」
「私、火を……灯せるみたい……」
雨音に包まれながら、初めて気付いた自分の小さな変化。
荼毘の炎に触れ続けるうち、少しずつ自分自身にも火を灯せるようになっていたようだ。
まだまだ頼りない炎だけれど、この火を絶やしてはいけない。
そんな気がした。
雨はいよいよ激しさを増し、世界は水のカーテンに閉ざされていた。
それでも、ひさしの下だけは2人きりの静かな時間が流れている。
「やるじゃねぇか」
荼毘はわずかに口元をほころばせながら、私の火を眺めていた。
その無愛想な横顔に、ほんの少しだけ安堵が覗いた気がする。
「荼毘のおかげだよ」
そう言って微笑むと、彼は一瞬どこか照れくさそうに視線を外した。
「恩着せがましくすんなよ。……でも、悪くない」
ふと空を見上げると、雨は上がっていたけれど、まだまだ厚い雲に覆われていた。
でも、もう大丈夫。
私の中にも、小さな炎が確かに生まれたから。
蒼い炎と小さな橙色の炎が肩を並べる。
もう誰にも燃えかすなんて呼ばせない。
これから進む道がどれだけ暗くても、どんなに冷たい夜がきても、私たちはきっと歩いていける。
「雨、止んだな」
「そうだね。……あ!荼毘、見て!虹だよ!」
私は火のぬくもりを握りしめ、荼毘と虹を眺めながら静かに笑い合った。
ーーFinーー
「はっくしゅっ……」
おかげでくしゃみが止まらない。
鼻をすすっている私に荼毘は、
「風邪引くなよ。お前が倒れたら……俺が困る」
いつもみたいに無愛想な顔なのに、その声はどこか柔らかい。
きっと冗談のつもりなんだろうけど、その言葉に、胸がきゅっと締めつけられた。
「まあ、とは言え、さすがに新しい寝床を探さないとな」
彼がぽつりとそう言うと、私もこくりと頷いた。
錆びた屋上の柵から見下ろすと、いくつものビルや家が並ぶ街。
そのどこかに、暖をとれる場所があるはずだ。
私たちは新しい寝床を探すために、街を徘徊することにした。
……。
…………。
街を歩いていると、ぽつりと空から雨が落ちてきた。
雨はすぐに大粒になり、私たちは慌てて近くの古い商店のひさしの下に駆け込む。
「ついてねぇな」
「でも、そこまで濡れずに済んでよかったね」
荼毘のぼやきに、私は笑って返した。
だけど、昨晩からずっと風に吹きさらされていたため、体はますます冷えていく。
少しでも体を温めようと、両手を擦り合わせた。
そのとき、ふと、指先にほんのりとした温もりを感じた。
「あれ……?」
おそるおそる両手を覗き込む。
そこには、かすかに……でも確かに、薄い橙色の炎がゆらゆらと灯っていた。
「どうした?」
私の様子に気付いた荼毘が顔をうかがってきた。
驚きと戸惑いのまま、そっと手のひらを見せた。
「……ねえ、見て」
「それは……」
「私、火を……灯せるみたい……」
雨音に包まれながら、初めて気付いた自分の小さな変化。
荼毘の炎に触れ続けるうち、少しずつ自分自身にも火を灯せるようになっていたようだ。
まだまだ頼りない炎だけれど、この火を絶やしてはいけない。
そんな気がした。
雨はいよいよ激しさを増し、世界は水のカーテンに閉ざされていた。
それでも、ひさしの下だけは2人きりの静かな時間が流れている。
「やるじゃねぇか」
荼毘はわずかに口元をほころばせながら、私の火を眺めていた。
その無愛想な横顔に、ほんの少しだけ安堵が覗いた気がする。
「荼毘のおかげだよ」
そう言って微笑むと、彼は一瞬どこか照れくさそうに視線を外した。
「恩着せがましくすんなよ。……でも、悪くない」
ふと空を見上げると、雨は上がっていたけれど、まだまだ厚い雲に覆われていた。
でも、もう大丈夫。
私の中にも、小さな炎が確かに生まれたから。
蒼い炎と小さな橙色の炎が肩を並べる。
もう誰にも燃えかすなんて呼ばせない。
これから進む道がどれだけ暗くても、どんなに冷たい夜がきても、私たちはきっと歩いていける。
「雨、止んだな」
「そうだね。……あ!荼毘、見て!虹だよ!」
私は火のぬくもりを握りしめ、荼毘と虹を眺めながら静かに笑い合った。
ーーFinーー
