燃えかす少女と蒼炎の君
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〜燃えかす少女と蒼炎の君〜
生まれたときから、私は"燃えかす"だった。
両親は、理想の“炎”を生むために個性婚をした。
だけど、私に宿ったのは『もらい火』という、誰かの火がなければ灯りもしない儚い個性。
“完全な失敗作”だと、家族も社会も、私自身までも思い込むしかなかった。
毎日が灰色。
家族の団欒からは爪弾きにされ、必要な分だけ父や母、兄弟の火を分けてもらい、ただ消えないように息を潜めて生きてきた。
自分の火がない私は、生きることすら他人任せ。
ーーーー
◯◯家は、この辺りでは名家と呼ばれる家系の1つ。
それなのに、私に与えられた部屋はいつも薄暗く、湿った埃の匂いが染みついている。
唯一の光は古い照明、ただ1つ。
「なんで、何も役にも立たない個性なんか……」
部屋にいても聞こえてくる母の苛立った声。
それが廊下の向こうから響いていた。
「定期的に火をもらわないと生きていけないなんて……。本当に情けない!」
「まあ、でも、兄弟は優秀なんだ。●●は使用人だとでも思えばいい」
母をなだめるように父が答えた。
その会話を、私は部屋の隅で膝を抱えて聞くばかり。
「……」
会話が止んだ頃、私は自分の手を見つめた。
火傷で爛れ、引っ張られているような皮膚。
火をもらう際に負った火傷だ。
その手に力を込めた。
「くっ……」
だけど、かすかな火種がくすぶるだけ。
「出ない……」
やっぱり、私では火を出すことは出来ないのか。
自分では何も生めない、と両親にも兄弟にも何度も言われてきた。
だからこっそりと部屋で火を出す練習をしている。
しているけれど、1度も成功したことはない。
このままでは本当に◯◯家のお荷物になってしまう。
せめて、なにか役に立てることはないか。
私は償いのように、自分ができることを探し続けた。
ーーーー
私の1日は早い。
まだ薄暗い中、ひとり起き出す。
家の中を静かに歩き、向かった先は庭の花壇。
寒い朝の日でも、指先が冷えても、土が爪の隙間に入り込んでも気にせずお花の世話をする。
花が咲き続ければ、母の機嫌が少しでも和らぐと思ったから。
その後は直ぐに朝食の用意。
だけど、私は家族とは一緒に食べない。
「お前の顔を見ていると飯が不味くなる」
そう父に言われてから、いつも洗い物が終わった後、1人部屋で食べるようになった。
日中は兄弟たちが学校や用事で出払った後、学校に通わせてもらえない私は、ひたすら廊下の雑巾がけ。
家中を這い回るように拭き取っていく。
「地べたを這い回る虫のようね」
母からそう言われようが、汚くすると怒られるから、言葉通り這ってでも綺麗にしないといけない。
その他にも洗濯や家事を黙々とこなした。
これが私にできる“家族の役に立つこと”だと思ったから。
だけど、感謝の気持ちは1度だって掛けてもらったことはない。
むしろ、
「早くやって」
「気が利かない」
「役立たず」
と母に罵られる毎日。
……。
…………。
その日の夜、部屋の隅で小さな声を漏らした。
「なんで私、生まれてきたんだろう……」
心の奥が冷たい水で満たされていくような気がする。
何かを生み出したいのに、ただ他人の火を分けてもらわないと命が保てない。
誰にも迷惑をかけたくないはずなのに、生きているだけで邪魔だ、と責められる気分。
窓の外を見つめると、遠くの屋根の向こうに、夕焼けが燃えていた。
その燃える光が、手のひらにほしかった。
「……私にも、灯せる火が……」
小さく呟いた願いは直ぐに消え去り、ただ冷たい夜だけが、私を包む。
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