姿形が変わっていようとも
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あれから年月が経ち、私は社会人になった。
特に個性を活かすでもなく普通の事務員。
今日もなんの変哲もない日常を送る。
はずだったのに、私の会社が入っているビル周辺をヴィランが襲撃して、気が付いたときには瓦礫の下敷きになっていた。
「うっ……」
私、このまま誰にも見つけられずに死ぬのかな。
そうしたら燈矢君と同じところに行けるかな。
それも悪くないかも。
彼の死から何年も経って、思い出さなくなったくらいには悲しみの傷は癒えたはずなのに、急に思い出してしまった。
生きていたら私を助けに来てくれるヒーローになっていたり、なんてね。
「ふっ……」
思わず笑みが溢れた。
これから死ぬのに。
「何笑ってんだ」
「?」
誰かいるの?
ヒーロー?ならそんなこと聞く前に助けてくれるはずだし、同じビルにいた被害者?
だけど、声の持ち主から足音がスタスタと聞こえるから、私みたいに瓦礫の下敷きになっているわけではないみたい。
そうなれば残された候補はヴィランしかない。
「助けてほしいか?」
低くて冷たい声。
助けてって言ったら助けてくれるの?
だけど、そんなことより懐かしい匂いが彼からした。
焦げて腐敗したような臭いに混ざって、太陽みたいな温かい匂いが。
「燈矢…君……?」
「………」
おかしいよね。燈矢君はもう死んでいるのに。
瓦礫の破片が目に入ったし、血で視界が悪い。
アナタはどんな顔をしているの?
燈矢君とたまたま同じ匂いの人なのか、それとも返事をしないってことは本当に燈矢君なのか。
その人は無言で私に覆い被さっていた瓦礫を退かしてくれた。
「名前、今は荼毘で通している」
「荼毘……」
「お前がここから生き延びることができたら、俺を探せばいい」
探せばいいって……。
荼毘って名前のヴィランはそんなに有名なんだろうか。
「またな、●●ちゃん」
「?!」
私の名前を呼ぶ荼毘と名乗ったヴィランはそのまま去っていった。
理解した。
自分がこんな状況だし、初恋の相手はヴィランになっていたけど、何より私は彼が生きていたことが嬉しかった。
待っていて。
ここから抜け出して、絶対にアナタを見つけ出すから。
たとえ姿形が変わっていようとも。
ーーFinーー
特に個性を活かすでもなく普通の事務員。
今日もなんの変哲もない日常を送る。
はずだったのに、私の会社が入っているビル周辺をヴィランが襲撃して、気が付いたときには瓦礫の下敷きになっていた。
「うっ……」
私、このまま誰にも見つけられずに死ぬのかな。
そうしたら燈矢君と同じところに行けるかな。
それも悪くないかも。
彼の死から何年も経って、思い出さなくなったくらいには悲しみの傷は癒えたはずなのに、急に思い出してしまった。
生きていたら私を助けに来てくれるヒーローになっていたり、なんてね。
「ふっ……」
思わず笑みが溢れた。
これから死ぬのに。
「何笑ってんだ」
「?」
誰かいるの?
ヒーロー?ならそんなこと聞く前に助けてくれるはずだし、同じビルにいた被害者?
だけど、声の持ち主から足音がスタスタと聞こえるから、私みたいに瓦礫の下敷きになっているわけではないみたい。
そうなれば残された候補はヴィランしかない。
「助けてほしいか?」
低くて冷たい声。
助けてって言ったら助けてくれるの?
だけど、そんなことより懐かしい匂いが彼からした。
焦げて腐敗したような臭いに混ざって、太陽みたいな温かい匂いが。
「燈矢…君……?」
「………」
おかしいよね。燈矢君はもう死んでいるのに。
瓦礫の破片が目に入ったし、血で視界が悪い。
アナタはどんな顔をしているの?
燈矢君とたまたま同じ匂いの人なのか、それとも返事をしないってことは本当に燈矢君なのか。
その人は無言で私に覆い被さっていた瓦礫を退かしてくれた。
「名前、今は荼毘で通している」
「荼毘……」
「お前がここから生き延びることができたら、俺を探せばいい」
探せばいいって……。
荼毘って名前のヴィランはそんなに有名なんだろうか。
「またな、●●ちゃん」
「?!」
私の名前を呼ぶ荼毘と名乗ったヴィランはそのまま去っていった。
理解した。
自分がこんな状況だし、初恋の相手はヴィランになっていたけど、何より私は彼が生きていたことが嬉しかった。
待っていて。
ここから抜け出して、絶対にアナタを見つけ出すから。
たとえ姿形が変わっていようとも。
ーーFinーー