うしろの正面だあれ
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定時を過ぎた頃。
「◯◯さん、まだ残るの?」
「はい、あと少しやってから」
「そう、頑張ってね」
先に帰宅する先輩を尻目にした後、パソコンのディスプレイとにらめっこ。
時折目尻を摘んだり、目薬を差したり、頬を叩いて気合を入れる。
そしてついに、
「やっと終わったー!」
気が付くとオフィスに残っていたのは私だけ。
パソコンをシャットダウンさせ、背伸びをする。
外は相変わらず真っ暗。
今日も残業お疲れ様でした。
自分自身に労いの言葉をかけ、退勤した。
職場を出てしばらく歩くと、例の放火があった現場の付近に差し掛かった。
周辺にはKEEP OUTと書かれたテープが巻かれており、入れないようになっている。
そんな惨状を目の当たりにして、改めてこの近くに放火魔がいたことを実感させられた。
いつもは何とも思わない道もそれだけで怖く感じる。
早く帰ろう。
……。
…………。
後ろから人の気配がする。
こんな真夜中、出歩いている人が少ないにも関わらず、同じ方向に用があるなんてありえるのか。
もしかして、例の放火魔?
足は自然と早歩きになる。
だけど、後ろから聞こえてくる足音も同じように速くなる。
そしてついに、私の真後ろまでやってきた。
追い越さずにぴったりと付いてきていると言うことは、やはり私に用があるのか。
このまま帰って家を特定されたくない。
かと言って交番や警察署なんて近くにない。
私は一か八かの賭けに出ることにした。
「あの……」
足を止めて、正面を向いたまま震える声を抑えて後ろの人に話しかけた。
落とし物を拾ってくれた親切な人、その可能性に賭けて。
しかし、返ってきた言葉は、
「振り向いたら殺す」
「!?」
ああ、親切な人なんかじゃない。
私、このまま殺されるのかな。
絶対に振り向かなくたって殺すやつじゃん。
相手の顔も理由も分からないまま、この男の人に。
思い返せばろくな人生ではなかった。
もっと楽しいことをしたかった。
色んなところに行って、美味しい物を食べて、恋だってして……。
死ぬ覚悟を決めかねていると、
「お前、なんでいつもこんな時間に歩いているんだ」
「へっ?」
拍子抜けだ。
脅しのようなことを言ってきたと思ったら、今度は雑談?
「しゃ、社畜なので……」
「ふーん。まっ、気を付けて帰るんだな。最近は放火魔がいるらしいから」
心配してくれているの?
てっきりアナタが放火魔だと思ったのに。
「あ、はい。ありがとうございます」
ひとまず癪に障らないようにお礼を言う。
「……」
すると、いつの間にか背後の気配が消えた。
もう、後ろを振り向いても大丈夫かな?
ドキドキとした心臓を落ち着かせてから振り向くと、そこには誰もいなかった。
まるで、最初から人なんていないかのような。
「はぁ〜」
一気に力が抜けてその場にへたり込んだ。
「◯◯さん、まだ残るの?」
「はい、あと少しやってから」
「そう、頑張ってね」
先に帰宅する先輩を尻目にした後、パソコンのディスプレイとにらめっこ。
時折目尻を摘んだり、目薬を差したり、頬を叩いて気合を入れる。
そしてついに、
「やっと終わったー!」
気が付くとオフィスに残っていたのは私だけ。
パソコンをシャットダウンさせ、背伸びをする。
外は相変わらず真っ暗。
今日も残業お疲れ様でした。
自分自身に労いの言葉をかけ、退勤した。
職場を出てしばらく歩くと、例の放火があった現場の付近に差し掛かった。
周辺にはKEEP OUTと書かれたテープが巻かれており、入れないようになっている。
そんな惨状を目の当たりにして、改めてこの近くに放火魔がいたことを実感させられた。
いつもは何とも思わない道もそれだけで怖く感じる。
早く帰ろう。
……。
…………。
後ろから人の気配がする。
こんな真夜中、出歩いている人が少ないにも関わらず、同じ方向に用があるなんてありえるのか。
もしかして、例の放火魔?
足は自然と早歩きになる。
だけど、後ろから聞こえてくる足音も同じように速くなる。
そしてついに、私の真後ろまでやってきた。
追い越さずにぴったりと付いてきていると言うことは、やはり私に用があるのか。
このまま帰って家を特定されたくない。
かと言って交番や警察署なんて近くにない。
私は一か八かの賭けに出ることにした。
「あの……」
足を止めて、正面を向いたまま震える声を抑えて後ろの人に話しかけた。
落とし物を拾ってくれた親切な人、その可能性に賭けて。
しかし、返ってきた言葉は、
「振り向いたら殺す」
「!?」
ああ、親切な人なんかじゃない。
私、このまま殺されるのかな。
絶対に振り向かなくたって殺すやつじゃん。
相手の顔も理由も分からないまま、この男の人に。
思い返せばろくな人生ではなかった。
もっと楽しいことをしたかった。
色んなところに行って、美味しい物を食べて、恋だってして……。
死ぬ覚悟を決めかねていると、
「お前、なんでいつもこんな時間に歩いているんだ」
「へっ?」
拍子抜けだ。
脅しのようなことを言ってきたと思ったら、今度は雑談?
「しゃ、社畜なので……」
「ふーん。まっ、気を付けて帰るんだな。最近は放火魔がいるらしいから」
心配してくれているの?
てっきりアナタが放火魔だと思ったのに。
「あ、はい。ありがとうございます」
ひとまず癪に障らないようにお礼を言う。
「……」
すると、いつの間にか背後の気配が消えた。
もう、後ろを振り向いても大丈夫かな?
ドキドキとした心臓を落ち着かせてから振り向くと、そこには誰もいなかった。
まるで、最初から人なんていないかのような。
「はぁ〜」
一気に力が抜けてその場にへたり込んだ。