これはきっと花粉症のせい
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〜これはきっと花粉症のせい〜
春の暖かな日差しが、今はただ恨めしい。
窓から差し込む光の中に、無数のスギ花粉が舞っているような気がして、私の鼻をムズムズさせる。
「はっくしゅんっ!……ふえっ、くしゅん!」
教室に情けないくしゃみが響き渡る。
あちこちから鼻をすする小さな音が聞こえてくるけれど、私以上に酷い症状の人はいないだろう。
「おーおー、派手にやってんな」
呆れたような、それでいてどこか楽しげな声。
不意に視界の端から、ポケットティッシュが差し出された。
田中龍之介だ。
高校に入学した春から、3年連続で同じクラスの彼。
お互い気心が知れすぎていて、今や私のちょっとした変化にも真っ先に気付くのが田中だった。
「田中、ありがとう……」
鼻声でお礼を言うと、田中はニカッと前歯を見せて笑った。
「ははは、大変だな!鼻の下真っ赤だぞ」
「……笑わないでよ」
「だって、俺、花粉症じゃねぇし」
勝ち誇ったようなその顔が、今は無性に腹立たしい。
「花粉症は誰でもなる可能性があるの!だから、他人事だと思ってる田中にも、いつか私みたいになる日が来るんだから!」
「へいへい。肝に銘じておきますよ」
3年生になったというのに、交わすやり取りは1年生の頃から何1つ変わらない。
そんな軽口を叩いて、いつものように1日が始まる。
「田中と喋ったせいで、目も痒くなってきた……」
一度掻き始めると止まらなくなる猛烈な痒み。
私は、堪らず鞄から目薬を取り出した。
天井を見上げるように顔をグイッと上に向ける。
視界の端では、面白おかしそうにこちらを覗き込む田中の影が映った。
狙いを定め、冷たい滴を瞳に落とすと、ひんやりとした液体が染み渡る。
それと同時に、わずかながらに痒みが引いていく。
でも、それは気休めでしかない。
「いっそのこと、目玉取り出して洗いたい……」
「怖いこと言うなよ。◯◯って、たまに発想がホラーなんだよな」
「田中のビビりめ」
「いやいや、冗談キツイって。それより、ほら、もうすぐホームルーム始まるぞ」
田中の言葉にハッとし、教室の端に吊るしてある掛け時計を見ると、チャイムが鳴るまであと3分もない。
「あ、やばっ……!」
私は慌てて、机の上に散らかしたティッシュの山を掻き集めた。
それらを持って、バタバタとゴミ箱へ走る私を、田中は笑いながら見送っていた。
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