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ある日の授業終わり。
いつもはそのままバイトに直行していたけれど、今日は休みのため、ゆっくりと帰り支度ができる。
鞄に教材を詰めていると、倫太郎が私の席までやってきた。
「今日部活休みだから駅まで送ってく」
思いがけない言葉に、教科書を落としかける。
「えっ、あ……うん」
「なに、その反応」
倫太郎は少し口を尖らせながら言った。
「な、なんでもないよ!」
正直、珍しいと思った。
学生寮に入っている倫太郎が、わざわざそんなことするなんて。
普段なら送ってくれないのに。
「ほら、行くよ」
「うん!」
何か理由があるのか、はたまた気まぐれなのか。
どちらにせよ嬉しかった。
私は残りの教材を急いで鞄に詰めて、倫太郎の後を追った。
……。
…………。
肩が触れるかどうかの距離。
なんだか隣に倫太郎がいるのがくすぐったい。
そんなとき、私のスマホがぶるり震えた。
ちらりとプッシュ通知を見てみると、倫太郎へのプレゼント候補にしていた商品の再入荷を知らせるものだった。
そう言えば、そんな設定にしていたっけ。
せっかくだから、この場で購入しようかな。
いやいや、帰ってからゆっくり考えるか。
だけど、その間にまた売り切れになったら……。
画面とにらめっこしながら、歩くスピードがゆっくりになったその時、
「ねぇ、最近ずっとスマホいじってるけど、俺への当てつけ?」
唐突に倫太郎が口を開く。
「どういう意味?」
思わず聞き返すと、
「俺といるときくらい、俺のこと見てよ」
足を止めた倫太郎は、無表情でちょっと拗ねたように言った。
「え、倫太郎のこと見てるよ?」
「いーや、スマホばかり見てた!今だってそう!」
「いや、それはたまたまで……」
「ただでさえ●●がバイト始めて、すれ違っているのに……」
倫太郎の声のトーンに、ほんの少しだけ寂しさが混じる。
「……」
「……」
しばしの沈黙の時間が訪れた。
私はバイト中でも倫太郎のことばかり考えていたけれど、それが独りよがりになって、結果彼を悲しませることになっていたとは……。
胸がチクリと痛む。
もう、この際言ってしまおうか。
「あのね、倫太郎……」
「なんだよ」
「バイト始めたのは倫太郎へのプレゼントを買うためだったの」
勢いで言ってしまった。
「じゃあ、なんでスマホ弄る時間増えたんだよ」
倫太郎がじっと私を見つめる。
「それは何あげようか調べてたからで……。さっきの通知も、商品の再入荷を知らせるものだったの」
倫太郎は口元を緩めて、悪戯っぽい表情になった。
「ふーん、で、何にする予定だったの?俺の欲しいもの教えてあげようか?」
「えっ?!」
不意を突かれて、慌てる。
「だって、答えを言えば、●●のスマホ弄る時間が減るんだろ?」
軽く茶化すような声。
だけど、捉え方によれば、私と過ごす時間を大切にしたい、ということになる。
それなら、少し恥ずかしいけど……。
「スマホ用のカメラレンズにしようかと……。どうかな?」
様子をうかがうように尋ねると、倫太郎が一瞬口を開けて、そしてすぐにニヤッと笑う。
「いいと思う……けど、それプレゼントされたら、俺、益々スマホに熱中するよ?」
「いいよ」
私は笑って首を横に振る。
「だって、写真撮っているときの倫太郎、楽しそうなんだもん」
「……冗談。今回で懲りたから、俺もスマホ弄るのほどほどにするよ」
倫太郎がちょっときまり悪そうに目をそらす。
「ほどほど、で済む?」
クスっと笑いながら言うと、倫太郎は小さく肩をすくめる。
「難しいだろうね」
素直に認める倫太郎がおかしくて、思わず彼を見ると、倫太郎もいつになく私を真っ直ぐ見つめていた。
スマホ越しじゃなくて、久しぶりにちゃんと目と目が合った気がする。
「そろそろスマホ仕舞って帰ろうか」
倫太郎が手を差し出す。
私はスマホを急いで仕舞い、ちょっと照れながらも、そっと手を取った。
倫太郎の手は思っていたよりずっと大きくて、しっかりと私を包み込むような、優しい温かさがあった。
ーーFinーー
いつもはそのままバイトに直行していたけれど、今日は休みのため、ゆっくりと帰り支度ができる。
鞄に教材を詰めていると、倫太郎が私の席までやってきた。
「今日部活休みだから駅まで送ってく」
思いがけない言葉に、教科書を落としかける。
「えっ、あ……うん」
「なに、その反応」
倫太郎は少し口を尖らせながら言った。
「な、なんでもないよ!」
正直、珍しいと思った。
学生寮に入っている倫太郎が、わざわざそんなことするなんて。
普段なら送ってくれないのに。
「ほら、行くよ」
「うん!」
何か理由があるのか、はたまた気まぐれなのか。
どちらにせよ嬉しかった。
私は残りの教材を急いで鞄に詰めて、倫太郎の後を追った。
……。
…………。
肩が触れるかどうかの距離。
なんだか隣に倫太郎がいるのがくすぐったい。
そんなとき、私のスマホがぶるり震えた。
ちらりとプッシュ通知を見てみると、倫太郎へのプレゼント候補にしていた商品の再入荷を知らせるものだった。
そう言えば、そんな設定にしていたっけ。
せっかくだから、この場で購入しようかな。
いやいや、帰ってからゆっくり考えるか。
だけど、その間にまた売り切れになったら……。
画面とにらめっこしながら、歩くスピードがゆっくりになったその時、
「ねぇ、最近ずっとスマホいじってるけど、俺への当てつけ?」
唐突に倫太郎が口を開く。
「どういう意味?」
思わず聞き返すと、
「俺といるときくらい、俺のこと見てよ」
足を止めた倫太郎は、無表情でちょっと拗ねたように言った。
「え、倫太郎のこと見てるよ?」
「いーや、スマホばかり見てた!今だってそう!」
「いや、それはたまたまで……」
「ただでさえ●●がバイト始めて、すれ違っているのに……」
倫太郎の声のトーンに、ほんの少しだけ寂しさが混じる。
「……」
「……」
しばしの沈黙の時間が訪れた。
私はバイト中でも倫太郎のことばかり考えていたけれど、それが独りよがりになって、結果彼を悲しませることになっていたとは……。
胸がチクリと痛む。
もう、この際言ってしまおうか。
「あのね、倫太郎……」
「なんだよ」
「バイト始めたのは倫太郎へのプレゼントを買うためだったの」
勢いで言ってしまった。
「じゃあ、なんでスマホ弄る時間増えたんだよ」
倫太郎がじっと私を見つめる。
「それは何あげようか調べてたからで……。さっきの通知も、商品の再入荷を知らせるものだったの」
倫太郎は口元を緩めて、悪戯っぽい表情になった。
「ふーん、で、何にする予定だったの?俺の欲しいもの教えてあげようか?」
「えっ?!」
不意を突かれて、慌てる。
「だって、答えを言えば、●●のスマホ弄る時間が減るんだろ?」
軽く茶化すような声。
だけど、捉え方によれば、私と過ごす時間を大切にしたい、ということになる。
それなら、少し恥ずかしいけど……。
「スマホ用のカメラレンズにしようかと……。どうかな?」
様子をうかがうように尋ねると、倫太郎が一瞬口を開けて、そしてすぐにニヤッと笑う。
「いいと思う……けど、それプレゼントされたら、俺、益々スマホに熱中するよ?」
「いいよ」
私は笑って首を横に振る。
「だって、写真撮っているときの倫太郎、楽しそうなんだもん」
「……冗談。今回で懲りたから、俺もスマホ弄るのほどほどにするよ」
倫太郎がちょっときまり悪そうに目をそらす。
「ほどほど、で済む?」
クスっと笑いながら言うと、倫太郎は小さく肩をすくめる。
「難しいだろうね」
素直に認める倫太郎がおかしくて、思わず彼を見ると、倫太郎もいつになく私を真っ直ぐ見つめていた。
スマホ越しじゃなくて、久しぶりにちゃんと目と目が合った気がする。
「そろそろスマホ仕舞って帰ろうか」
倫太郎が手を差し出す。
私はスマホを急いで仕舞い、ちょっと照れながらも、そっと手を取った。
倫太郎の手は思っていたよりずっと大きくて、しっかりと私を包み込むような、優しい温かさがあった。
ーーFinーー
