持つべきものは
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〜持つべきものは〜
言葉の弊害って思ったより大きいのかもしれない。
同じ日本なのにおかしな話だよね。
親の仕事の転勤によって春から地元愛知を離れて兵庫に引っ越しした。
最初は友達と離れるのがツラくて1人で愛知に残る、と親に抗議をしたけれど、17の娘を1人残せない、と頑なに拒否されてしまった。
そして迎えた転校初日。
兵庫県立稲荷崎高校と書かれた門をくぐる。
新しい制服が間に合わず、前の高校の制服のまま職員室へ向かうと、ジロジロと見てくる生徒たちの視線が痛かった。
そして朝のホームルームの時間になり、担任の後ろに付いて教室に入る。
2年1組。
今日からここが私のクラス。
「転校生を紹介する。◯◯さん、名前を書いて挨拶を」
「はい……」
教壇に上がり、緊張で震える手を誤魔化しながら黒板に名前を書く。
またしても感じる視線。
背中が痛い。
書き終えた字を見ると、自信のなさを表しているかのような小さな字で、形も歪んでいた。
「愛知県から来ました◯◯●●です。よろしくお願いします」
緊張しながらも無難な自己紹介を終えると、
「字ぃも声もちっさ!」
「よろしゅうな〜」
「愛知なんや〜」
「制服なんで
ザワザワと聞こえてくる関西弁。
薄々察していたけれど、兵庫って関西弁なんだ。
大阪とか京都の人が話すイメージだった。
「ほな、◯◯さんの席は一番後ろの空いとるところで」
先生に指示された席に座ると、早速隣の席の女子生徒が話しかけてくれた。
「うち、アキコ!仲良うしてなぁ!」
髪を明るい色に染めており、目が大きくて可愛らしい彼女。
偏見だけれど、いかにも関西って感じの子だ。
「あ、うん。よろしく」
「分からへんことあったら、何でも聞いてぇな!」
「ありがとう」
他にもクラスの女子の何人かに話しかけられたけれど、緊張で上手く喋れなかった。
「ほら、お喋りはその辺にして、授業始めるでー」
先生の指示によって騒いでいた生徒は散り散りになる。
周りが教科書の準備をしている中、私は制服が届いていなければ教科書もまだなわけで、アキコちゃんに見せてもらうことにした。
「アキコちゃん、数学ってどこまで進んでいるの?」
「ここまでやで!」
そう言って見せてもらった項目は私の学校より進んでいた。
「あ、まだ習っていないところだ……」
「え〜マジ?!●●ちゃんってバカなんや!」
「あはは……」
多分悪気があるわけじゃない。
いわゆる関西のノリってやつ。
だけど、言葉がきつくて軽くショックを受けた。
今後、彼女たちのテンションに付いていけるだろうか。
接していくうちに私もそのうち関西に染まるといいけど。
……。
…………。
転校して1ヶ月経ち、さすがに新しい制服や教科書が届いた。
だけど、格好ばかりが稲荷崎の生徒になっても関西弁には慣れなかった。
だからと言って名古屋弁で話すのも恥ずかしくて標準語で喋る毎日。
こんな状態では友達なんてできるわけもなく、孤立状態。
その上陰で、
「◯◯さんっていっつも澄ました話し方して、なんか腹立つわ」
「ほんまやね!東京
「ウケる〜!◯◯さんと同じやん」
なんて話しているところをこっそり聞いてしまい、余計に馴染めずにいた。
お昼休みは特に気まずくて教室にいられない。
徐々に私の居場所がなくなった。
※名古屋飛ばし……名古屋市やその周辺地域でコンサートやイベントが開催されないことを意味する言葉。
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