リエーフの部屋は相変わらずシンプルで綺麗だった。
久しく来ていないのに、誰に掃除をしてもらったのか。


「今お茶入れますね」

「すぐ帰るからお構い無く」


そう言っても、言うことを聞かずにお湯を沸かし始めたリエーフ。

段々紅茶のいい匂いが漂ってきた。
私の好きなやつだ。


「どうぞ」

「ありがとう」


コトッとテーブルに置かれた紅茶。

紅茶に罪はない。
淹れてしまったものは仕方がないから、ありがたく頂戴する。

口に含むと心地よい渋さや苦み、甘さが広がった。
…………美味しい。

これを飲んだら帰るけど、それまでなら話を聞くのに。
リエーフはもじもじしているだけで無言だし、私は私で特に話すこともないからあえて無視を決め込む。

あと少しで飲み終わる、そこでようやくリエーフは口を開いた。


「俺のこと嫌いになりました？」


私は持ってたティーカップをテーブルに置いてリエーフと目を合わせた。


「なっていないよ」

「じゃあ、なんで避けるんですか？」

「………リエーフはモデルだから」

「？」

「リエーフの側にこんな家政婦みたいなのがいたら、評判下げるでしょ？」


実際にモデル仲間さんから言われた言葉。


「そんなことないです！俺は●●さんだから好きなんです！」

「私が嫌なのよ」


こんな地味女を隣に置くと、趣味が悪い、金づる、実家が太いだとか、あらぬ噂も立つかもしれない。

そんなの耐えられない。


「●●さん……」


ここまで言えばリエーフも引き下がってくれるよね？


「紅茶、ご馳走さま」


紅茶も飲み終わったし、そろそろ帰ろう。

帰り支度をしているとインターフォンが鳴った。

なんだ、私以外にも人と会う約束をしていたんじゃない。