〜第一章〜 ペトリコール
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~第一章〜 ペトリコール
授業終わりに日直の仕事である日誌を書く。
前のページをめくると数日続いている天気の欄の雨。
ニュースで梅雨入りが発表されて、早数日。
今日も今日とて雨。気分までじめじめしそう。
だけど彼と一緒だとそんな気分も少しだけ緩和される。
「あとどのくらいで書き終わる?」
そう聞いてきたのは、今日一日一緒に日直をやった月島蛍君。
私の想い人でもある。
彼は向かいの席で頬杖をつきながら気だるげに待ってくれている。
付き合っているから待ってくれているのではなく、日誌は二人で提出しにくるように、と言ううちのクラスの謎ルールがあるから。
守っている人なんていないけど。
「もう少しかかるかな」
文章を書くのが苦手だから、一日の感想・反省を書く欄にいつも苦戦をする。
「先生には私が日誌持っていくし、部活に行ってきてもいいよ?」
「そう言うわけにはいかないデショ」
なんでだろう。
二人で行かなくても怒られないのに。
もしかして、少しでも成績のために先生への印象を良くしたいのかな?
月島君って面倒臭いことは上手く避けるタイプだと思っていたのに、意外と真面目なんだね。
暇そうに待っているから、少しだけ話題を振ってみた。
「月島君って雨好き?」
「………嫌い。髪が跳ねるから」
確かに。短髪だから分かりにくいけど、いつもより跳ねている気がする。
「でも、この時期の紫陽花って綺麗じゃない?」
「花に興味ない」
「そっか」
そうだよね。
男子で花に興味ある人って少ないか。
「◯◯さんは雨好きなの?」
意外にも質問を返してくれた。
ちょっとだけ嬉しい。
「雨って言うか、雨が降った時に地面から上がってくる匂いが好きかな」
我ながらマニアックだと思っている。
「ふーん。………知ってる?それってカビや排ガス、ほこりが雨水と混ざった匂いだよ」
「知らなかった」
それを聞かされたらちょっとだけ、汚いイメージになってしまった。
「ペトリコールとも言う」
「ペトリコール……なんか格好いい響きだね!」
「ねえ、話すのもいいけど、日誌書けたの?」
「あっ………あと少し………できた!ごめんね、待たせて」
月島君は行くよ、と私から日誌を取って職員室へと向かった。
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