猫のような君
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中島君を見送った後、このまま真っ直ぐ家路につく気分にはなれなかった。
気付けば、私は誰もいない教室へと戻っていた。
一番後ろの窓際の席に立つ。
この席が好きだったはずなのに。
「早く席替えしないかな」
ポツリと、誰もいない空間に向けて呟く。
すると、
「そうなの?」
「えっ……」
誰もいないと思っていたのに、教室の入り口から聞こえた声に、心臓が跳ね上がった。
誰に聞かれた?
振り向くと、そこには体操服姿の孤爪君が、ひっそりと立っていた。
彼の琥珀色の瞳が、驚く私を見つめている。
「帰ったんじゃないの?」
いるはずないと思っていたから、そればかりが気になって、彼の質問を無視してしまった。
「居残り練習。疲れたから少しだけ逃げてきた」
ぼんやりとした照明の下、彼は確かに少し疲れているようだった。
男子バレー部は、いつも遅くまで部活をしていたことを思い出す。
「そうなんだ……」
「うん……」
「……」
「……」
会話が途切れる。
その沈黙を先に破ったのは、孤爪君の唐突な質問だった。
「それで、返事したの?」
まるで、先ほど場面を見ていたかのようなタイミング。
それほど孤爪君の直感は鋭い。
「……した。他に好きな人がいるからって」
「ふーん……そっか」
私の答えに、孤爪君は感情の読めない返しをした。
聞いてきたくせに、やっぱり興味のない素振りをする。
それなら私だって、少し意地悪な気持ちになる。
「孤爪君は好きな人いるの?」
「なに、急に」
「別に、なんとなく気になって」
彼は少しだけ目を伏せ、ためらいなく答えた。
「いるよ」
すんなり答えちゃって。
でも……いるんだ。
私の胸に、微かな痛みが走る。
すると、孤爪君は、ゆっくりと私に向かって数歩近付き、その距離を詰めた。
「今、目の前で元気のない子」
「え?」
孤爪君の顔を見ると、彼は冗談を言っているようには見えなかった。
表情は乏しいままだったけれど、その瞳の奥には、いつもより強い光が宿っている。
「だから、告白の返事が気になるし、俺のことをどう思っているのかも気になる」
そんな言い方、ズルい。
今まで、私に対してまるで興味ないみたいな態度しか取ってこなかったくせに。
彼は、私の心の揺れを見透かすように、真っ直ぐ私を見つめて、止めを刺すように次の言葉を放った。
「ゲーム、俺と一緒に買いに行くよね?」
それは、私が中島君に告白の返事をした時点で、私の気持ちが孤爪君に向いていることを分かっているような聞き方だった。
返事は決まっている。
「行く」
私の声は、夕焼けに染まる教室の中で、はっきりと響いた。
ーーFinーー
気付けば、私は誰もいない教室へと戻っていた。
一番後ろの窓際の席に立つ。
この席が好きだったはずなのに。
「早く席替えしないかな」
ポツリと、誰もいない空間に向けて呟く。
すると、
「そうなの?」
「えっ……」
誰もいないと思っていたのに、教室の入り口から聞こえた声に、心臓が跳ね上がった。
誰に聞かれた?
振り向くと、そこには体操服姿の孤爪君が、ひっそりと立っていた。
彼の琥珀色の瞳が、驚く私を見つめている。
「帰ったんじゃないの?」
いるはずないと思っていたから、そればかりが気になって、彼の質問を無視してしまった。
「居残り練習。疲れたから少しだけ逃げてきた」
ぼんやりとした照明の下、彼は確かに少し疲れているようだった。
男子バレー部は、いつも遅くまで部活をしていたことを思い出す。
「そうなんだ……」
「うん……」
「……」
「……」
会話が途切れる。
その沈黙を先に破ったのは、孤爪君の唐突な質問だった。
「それで、返事したの?」
まるで、先ほど場面を見ていたかのようなタイミング。
それほど孤爪君の直感は鋭い。
「……した。他に好きな人がいるからって」
「ふーん……そっか」
私の答えに、孤爪君は感情の読めない返しをした。
聞いてきたくせに、やっぱり興味のない素振りをする。
それなら私だって、少し意地悪な気持ちになる。
「孤爪君は好きな人いるの?」
「なに、急に」
「別に、なんとなく気になって」
彼は少しだけ目を伏せ、ためらいなく答えた。
「いるよ」
すんなり答えちゃって。
でも……いるんだ。
私の胸に、微かな痛みが走る。
すると、孤爪君は、ゆっくりと私に向かって数歩近付き、その距離を詰めた。
「今、目の前で元気のない子」
「え?」
孤爪君の顔を見ると、彼は冗談を言っているようには見えなかった。
表情は乏しいままだったけれど、その瞳の奥には、いつもより強い光が宿っている。
「だから、告白の返事が気になるし、俺のことをどう思っているのかも気になる」
そんな言い方、ズルい。
今まで、私に対してまるで興味ないみたいな態度しか取ってこなかったくせに。
彼は、私の心の揺れを見透かすように、真っ直ぐ私を見つめて、止めを刺すように次の言葉を放った。
「ゲーム、俺と一緒に買いに行くよね?」
それは、私が中島君に告白の返事をした時点で、私の気持ちが孤爪君に向いていることを分かっているような聞き方だった。
返事は決まっている。
「行く」
私の声は、夕焼けに染まる教室の中で、はっきりと響いた。
ーーFinーー
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