プリンの理由
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〜プリンの理由〜
友達のマイカとお昼ご飯を共にし、残り時間を談笑して過ごしている時のこと。
「●●、大分髪伸びたね。プリンみたい」
「そうなんだよね〜。だけど、これはこれでアリかなって」
マイカの指摘により、手鏡で頭部の確認をすると、言われた通り金髪に対して生え際は見事に真っ黒だった。
私の通う音駒高校は校則が緩い方だと思う。
スカートの丈を短くしても、髪の毛を染めても何も言われない。
さすがに1年生のうちは先輩に生意気だと思われたくなくて目立つようなことはしなかったけれど、2年生に上がって直ぐに染めた。
そして、今は夏休み前。
あれから1度も美容院へ行っていない私の髪は見事なほどプリン頭に。
生え際だけ染めても、またプリンになることが目に見えている。
定期的に美容院に行かないといけないことを思うと、面倒くさがりな私にとっては染めなければ良かったと後悔した。
かと言って黒に染めるのも髪が傷んで嫌だし。
いっそうのこと髪の毛を伸ばして、染めた部分を徐々に切って自然と黒髪に戻そう。
そんな考えに至り、私はしばらくプリン頭で過ごすことにしたのだ。
「プリン頭と言えばさ、3組の孤爪。彼も中々のプリン頭だよね」
「ああ、孤爪君ね。そう言えばそうだね」
マイカの言う孤爪君とは1年生のときに同じクラスだった。
比較的大人しい性格で、休み時間はいつもゲームをしていた印象。
そんな彼も私と同じく2年生に上がったらいつの間にか髪を染めていた。
目立つのが苦手だと思っていたのに何で?
と染めた髪を見たときに驚いたのを覚えている。
「山本もそうだけど、なんでバレー部ってこうも奇抜な髪型の人が集まるかね」
確かに山本君もモヒカン頭で奇抜である。
それに加えてあの目つきの悪さときたら、最初に会ったときはヤンキーかと思った。
「ふふふっ」
思い出し笑いをしていると、
「俺と虎を一緒にしないでくれない?」
「孤爪君?!」
いつの間にか来ていた孤爪君が私たちの会話に割って入ってきた。
「なんでうちのクラスに?」
「福永に用があって来たら、俺の話をしていたから……」
そう言えば福永君もバレー部だっけ。
孤爪君や山本君と比べると唯一まともな髪型の彼。
「あっ、●●、次体育だからそろそろ行こうよ」
掛け時計を見ると昼休みが終わるまで10分を切っていた。
「そうだね、またね孤爪君」
「◯◯さん、待って」
「?」
マイカの後を追って更衣室に向かおうと席を立つと、不意に孤爪君に腕を掴まれた。
「マイカ、先に行ってて。すぐ行くから」
「分かった」
時間がかかるかもしれないから、マイカには先に行ってもらうことにした。
パタパタと教室を出ていくマイカを見送ると、改めて孤爪君に視線を移した。
「どうしたの、孤爪君?」
「髪を染めた理由、1年生のとき虎に黒髪で顔を隠すような長い前髪だと目立つって言われたから。金髪なら目立たなくなると思って……」
「そうだったんだ」
多分山本君は遠回しに髪を切れと言いたかったんだろうけど、孤爪君がそれを上回る発想の持ち主だったと言うか、なんと言うか……。
取り敢えず理由は分かったけれど、今引き留めてまでして説明しないといけないことだったのか。
「それから……」
「それから?」
「……」
待っていても孤爪君からは次の言葉が出ない。
どうしたのだろうか。
すると、
「やっぱり何でもない。急いでいるのに引き留めてごめん」
「あ、うん……」
結局何が言いたかったのか分からなかった。
私は体操服の入った袋を持って、急いで更衣室へと向かった。
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