彼氏彼女役
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「熱っ!」
授業に集中できず、ぼんやりと作業をしていたら、はんだごてで指を焼いてしまった。
指先を見ると真っ赤になっていた。
「先生、保健室行ってきます」
「付き添いいるか?」
「あ、俺行きますよ!」
私が断りを入れる前に、二口が一番に名乗りを上げた。
絶対にサボりたいだけだ。
先生もそう思ったのか、
「お前はダメだ」
と即座に却下した。
そして、生徒の顔をゆっくり見回すと、
「そうだな…青根、お前付いていってやれ」
青根君に向かって指を差した。
まさかの展開に、私の心臓が跳ねる。
1人でも大丈夫だったけれど、青根君と2人きりで話がしたかったから、先生の配慮に甘えることにした。
……。
…………。
保健室の扉には“会議のため不在”の札がぶら下がっていた。
「保健室の先生いないみたいだね」
私が言うと、青根君は無言で椅子を指差した。
座って待っていろ、と言うことだろう。
彼は慣れた手つきで氷嚢を用意し、私の指にそっと当ててくれた。
ひんやりとした感触が、気持ちよくて、痛みを和らげてくれる。
「痕残っちゃうかな」
「痛みが引かなければ病院に行け」
呑気なことを言った私に、青根君は強い口調で返した。
苦笑いしかできず、気まずい沈黙が流れる。
だけど、その沈黙を破ったのは意外にも青根君の方だった。
「◯◯は、俺が夏目の彼氏役をやるのは嫌か?」
今日、夏目さんから彼氏の振りをやめたと聞いたばかりなのに、青根君は知らないのだろうか。
でも、嫌かと聞かれれば、答えは1つしかない。
「まあ……そうね、嫌かも」
嘘偽りのない本心だ。
あくまで冷静を装って答えたけれど、声が少し震えたような気がした。
「俺は何も考えずに引き受けた」
そうだろうね。
困っている人がいたら、誰であろうと手を差し伸べる人だもの。
それが青根君だ。
「この間の言い合い、聞いていたか?」
校門で夏目さんと元カレが言い争っていた時のことだろうか。
「うん」
「あのとき、仮にも好き合っていた相手に罵倒するような行動はいけないと咎めた。誠実ではないから」
「……」
「だが、俺はそいつに説教する資格なんてない」
「そんなことっ!……そんなことないよ」
「では、なぜ二口と帰った日に◯◯は泣いていたんだ?」
「あれは……」
青根君に好きと言えなかった自分を悔いて……。
あれ?でも、そのことと今の話に何の関係があるのだろう。
私の頭の中は混乱した。
「俺が彼氏役をすることによって◯◯が悲しむなら、そんなことするべきではなかった」
「確かに悲しかったけど、そんな優しい青根君が好きだから……」
私がそう言いかけた時、青根君は私の言葉を遮るように言った。
「俺は◯◯が好きだ」
心臓が止まるかと思った。
青根君も、私のことが好き?
真っ直ぐに私を見つめる彼の鋭い瞳は、冗談を言っているようには見えない。
そもそも、彼は冗談を言う人じゃない。
「◯◯、俺の彼女になってくれないか。彼女役ではなく、本当の彼女に」
「なりたい!彼女になりたい!」
「よかった」
安堵したように言う青根君に、私は胸がいっぱいになった。
彼だって、不安になることがあるんだ。
「ふふ、なんだか今日の青根君はお喋りだね」
「ダメか?」
「ううん、いいと思う」
遠回りしてしまったけれど、私たちはお互いの気持ちを知ることができた。
ボディガードでも彼氏役でもなく、正真正銘の彼氏と彼女になった。
ーーFinーー
授業に集中できず、ぼんやりと作業をしていたら、はんだごてで指を焼いてしまった。
指先を見ると真っ赤になっていた。
「先生、保健室行ってきます」
「付き添いいるか?」
「あ、俺行きますよ!」
私が断りを入れる前に、二口が一番に名乗りを上げた。
絶対にサボりたいだけだ。
先生もそう思ったのか、
「お前はダメだ」
と即座に却下した。
そして、生徒の顔をゆっくり見回すと、
「そうだな…青根、お前付いていってやれ」
青根君に向かって指を差した。
まさかの展開に、私の心臓が跳ねる。
1人でも大丈夫だったけれど、青根君と2人きりで話がしたかったから、先生の配慮に甘えることにした。
……。
…………。
保健室の扉には“会議のため不在”の札がぶら下がっていた。
「保健室の先生いないみたいだね」
私が言うと、青根君は無言で椅子を指差した。
座って待っていろ、と言うことだろう。
彼は慣れた手つきで氷嚢を用意し、私の指にそっと当ててくれた。
ひんやりとした感触が、気持ちよくて、痛みを和らげてくれる。
「痕残っちゃうかな」
「痛みが引かなければ病院に行け」
呑気なことを言った私に、青根君は強い口調で返した。
苦笑いしかできず、気まずい沈黙が流れる。
だけど、その沈黙を破ったのは意外にも青根君の方だった。
「◯◯は、俺が夏目の彼氏役をやるのは嫌か?」
今日、夏目さんから彼氏の振りをやめたと聞いたばかりなのに、青根君は知らないのだろうか。
でも、嫌かと聞かれれば、答えは1つしかない。
「まあ……そうね、嫌かも」
嘘偽りのない本心だ。
あくまで冷静を装って答えたけれど、声が少し震えたような気がした。
「俺は何も考えずに引き受けた」
そうだろうね。
困っている人がいたら、誰であろうと手を差し伸べる人だもの。
それが青根君だ。
「この間の言い合い、聞いていたか?」
校門で夏目さんと元カレが言い争っていた時のことだろうか。
「うん」
「あのとき、仮にも好き合っていた相手に罵倒するような行動はいけないと咎めた。誠実ではないから」
「……」
「だが、俺はそいつに説教する資格なんてない」
「そんなことっ!……そんなことないよ」
「では、なぜ二口と帰った日に◯◯は泣いていたんだ?」
「あれは……」
青根君に好きと言えなかった自分を悔いて……。
あれ?でも、そのことと今の話に何の関係があるのだろう。
私の頭の中は混乱した。
「俺が彼氏役をすることによって◯◯が悲しむなら、そんなことするべきではなかった」
「確かに悲しかったけど、そんな優しい青根君が好きだから……」
私がそう言いかけた時、青根君は私の言葉を遮るように言った。
「俺は◯◯が好きだ」
心臓が止まるかと思った。
青根君も、私のことが好き?
真っ直ぐに私を見つめる彼の鋭い瞳は、冗談を言っているようには見えない。
そもそも、彼は冗談を言う人じゃない。
「◯◯、俺の彼女になってくれないか。彼女役ではなく、本当の彼女に」
「なりたい!彼女になりたい!」
「よかった」
安堵したように言う青根君に、私は胸がいっぱいになった。
彼だって、不安になることがあるんだ。
「ふふ、なんだか今日の青根君はお喋りだね」
「ダメか?」
「ううん、いいと思う」
遠回りしてしまったけれど、私たちはお互いの気持ちを知ることができた。
ボディガードでも彼氏役でもなく、正真正銘の彼氏と彼女になった。
ーーFinーー
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