彼氏彼女役
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授業が終わった後も、私は机に突っ伏したまま動けずにいた。
夏目さんが青根君にボディガードという名の彼氏の振りをお願いしたらしい。
その噂は女子生徒の間であっという間に広まった。
もちろん、私の耳にも。
すぐに元カレが諦めてくれれば、青根君は解放されるのに。
いや、そう簡単にいかないだろう。
諦めたからといってすぐに別れたら、元カレに怪しまれるかもしれない。
だから、しばらくは“付き合っている振り”を続けるに違いない。
そして、そのうち本当に両思いになって付き合い始める。
そんな漫画みたいな展開が頭に浮かんで、私はさらに深く机に顔を埋めた。
嫌だ、絶対に嫌だ。
こんなことになるなら、もっと早く告白しておけばよかった。
「はぁ……」
思わず大きなため息が漏れる。
帰る気力なんて、とっくになくなっていた。
「なーに、でけぇため息ついてんだ?」
「二口……」
聞き慣れた声に、顔だけを二口の方へ向ける。
彼はニヤニヤしながら私の顔を覗き込んだ。
「失恋でもしたか?」
空気の読めない男子なら、
「生理か?」
なんて聞いてきそうだけど、二口は違う。
あえて空気を読まないことはあっても、読めないワケではない。
失恋って尋ねてくるのも大概だけど。
「まあ、そんなところ」
本当は告白すらしていない。
それでも、そう答えるのが一番しっくりきた。
「男で作った傷を癒すもの男だろ」
「変な言い方しないでよ」
彼のからかいに、私は少しだけムッとした。
「元気付けてやるって言ってんだよ。この後どうせ暇だろ?」
「暇だけど…二口は部活じゃないの?」
「体育館のメンテで休み」
そうか、青根君も部活がないんだ。
今頃、夏目さんと2人で帰っているのだろうか。
そんなことを考えていると、どんどん悪い方向へ思考が向かっていってしまう。
1人でいると、この沈んだ気持ちから抜け出せない。
私は二口の誘いに乗ることにした。
「行こうかな……」
「そうこなくっちゃ。ほら、立てよ」
……。
…………。
二口に連れられて昇降口に向かうと、一番会いたくない2人が目の前を歩いていた。
「青根と……夏目じゃん。意外な組み合わせだな」
楽しそうに青根君に話しかける夏目さん。
付き合っている振りを知っている女子たちは夏目さんの元カレにその話が伝わるようにして、とお願いされている。
「最近付き合い始めたみたいだよ、あの2人」
自分の口から言っておいて複雑な心境。
「へぇ〜、ふーん……なるほど……」
二口は何も言わない。
だけど、教室での私のテンションと今の発言のトーンで、何かを察したようだった。
「ま、俺らは俺らで楽しもうぜ」
そう言って、二口が連れて行ってくれたのはカラオケだった。
「ほら、スカッとさせようぜ!」
久しぶりのカラオケ。
歌いたい曲なんて思いつかないし、最近の曲も知らない。
だから、マイクを二口に譲ることにした。
「二口、先に歌って」
「俺の美声に惚れるなよ?」
「はいはい」
普段なら面倒くさい二口の冗談も、今日はありがたい。
二口が選んだのは、失恋ソングだった。
私への当てつけだろうか。
ただ、想像以上に上手かった。
その歌声に、胸の奥が締め付けられる。
“この声が枯れるくらいに、君に好きと言えばよかった”
そのフレーズが耳に飛び込んできた瞬間、私の目から一筋の涙がこぼれ落ちた。
大して思い入れもない曲なのに。
本当にその通りだ。
私は何も言えなかった。
どうせなら、声が枯れるくらいに好きと伝えればよかった。
その後も、二口はまるで私の気持ちを代弁するかのように、失恋ソングを熱唱し続けた。
夏目さんが青根君にボディガードという名の彼氏の振りをお願いしたらしい。
その噂は女子生徒の間であっという間に広まった。
もちろん、私の耳にも。
すぐに元カレが諦めてくれれば、青根君は解放されるのに。
いや、そう簡単にいかないだろう。
諦めたからといってすぐに別れたら、元カレに怪しまれるかもしれない。
だから、しばらくは“付き合っている振り”を続けるに違いない。
そして、そのうち本当に両思いになって付き合い始める。
そんな漫画みたいな展開が頭に浮かんで、私はさらに深く机に顔を埋めた。
嫌だ、絶対に嫌だ。
こんなことになるなら、もっと早く告白しておけばよかった。
「はぁ……」
思わず大きなため息が漏れる。
帰る気力なんて、とっくになくなっていた。
「なーに、でけぇため息ついてんだ?」
「二口……」
聞き慣れた声に、顔だけを二口の方へ向ける。
彼はニヤニヤしながら私の顔を覗き込んだ。
「失恋でもしたか?」
空気の読めない男子なら、
「生理か?」
なんて聞いてきそうだけど、二口は違う。
あえて空気を読まないことはあっても、読めないワケではない。
失恋って尋ねてくるのも大概だけど。
「まあ、そんなところ」
本当は告白すらしていない。
それでも、そう答えるのが一番しっくりきた。
「男で作った傷を癒すもの男だろ」
「変な言い方しないでよ」
彼のからかいに、私は少しだけムッとした。
「元気付けてやるって言ってんだよ。この後どうせ暇だろ?」
「暇だけど…二口は部活じゃないの?」
「体育館のメンテで休み」
そうか、青根君も部活がないんだ。
今頃、夏目さんと2人で帰っているのだろうか。
そんなことを考えていると、どんどん悪い方向へ思考が向かっていってしまう。
1人でいると、この沈んだ気持ちから抜け出せない。
私は二口の誘いに乗ることにした。
「行こうかな……」
「そうこなくっちゃ。ほら、立てよ」
……。
…………。
二口に連れられて昇降口に向かうと、一番会いたくない2人が目の前を歩いていた。
「青根と……夏目じゃん。意外な組み合わせだな」
楽しそうに青根君に話しかける夏目さん。
付き合っている振りを知っている女子たちは夏目さんの元カレにその話が伝わるようにして、とお願いされている。
「最近付き合い始めたみたいだよ、あの2人」
自分の口から言っておいて複雑な心境。
「へぇ〜、ふーん……なるほど……」
二口は何も言わない。
だけど、教室での私のテンションと今の発言のトーンで、何かを察したようだった。
「ま、俺らは俺らで楽しもうぜ」
そう言って、二口が連れて行ってくれたのはカラオケだった。
「ほら、スカッとさせようぜ!」
久しぶりのカラオケ。
歌いたい曲なんて思いつかないし、最近の曲も知らない。
だから、マイクを二口に譲ることにした。
「二口、先に歌って」
「俺の美声に惚れるなよ?」
「はいはい」
普段なら面倒くさい二口の冗談も、今日はありがたい。
二口が選んだのは、失恋ソングだった。
私への当てつけだろうか。
ただ、想像以上に上手かった。
その歌声に、胸の奥が締め付けられる。
“この声が枯れるくらいに、君に好きと言えばよかった”
そのフレーズが耳に飛び込んできた瞬間、私の目から一筋の涙がこぼれ落ちた。
大して思い入れもない曲なのに。
本当にその通りだ。
私は何も言えなかった。
どうせなら、声が枯れるくらいに好きと伝えればよかった。
その後も、二口はまるで私の気持ちを代弁するかのように、失恋ソングを熱唱し続けた。
