私の特等席
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「────ぃ……────おい……」
どれくらいそうしていただろう。
意識がはっきりしてきたのは、不意に耳元でくぐもった、低い声が響いたからだ。
「んっ……」
私は慌てて目を開けた。
視界に飛び込んできたのは、いつも座っている向かいの席ではなく、いつもよりずっと近くにある、深緑色の伊達工の制服。
そして、その制服の持ち主の、骨ばった大きな肩に、自分の顔がもたれかかっていたことに気が付いた。
「ひゃっ……!」
反射的に、飛びのくように顔を上げた。
その勢いで、ごつりと彼の硬い顎に頭をぶつけてしまった。
痛みはあまり感じなかったけれど、その事実に全身の血が一気に沸騰したように熱くなる。
どうしよう。
眠ってしまって、知らない間に彼の肩に寄りかかっていたなんて。
しかも、ぶつけた。
汗臭いと思われたら嫌だと距離を取っていたのに、ベッタリと顔をつけてしまっていたなんて、恥ずかしすぎる。
「す、すみません!ごめんなさい……!」
謝罪の言葉が、ひどく上擦る。
恐る恐る視線を上げると、彼は私の方を見ていた。
いつも固く閉じられていた一重の目は開いており、眉間のシワが少しだけ緩んでいるように見えた。
「……着いた」
彼から発せられたのは、その一言だけ。
驚くほど低い声だったけれど、怒っている様子はなかった。
車内アナウンスに耳を澄ませば、確かに、いつも私が降りる駅の名前を告げている。
慌てて鞄を持って立ち上がろうとした。
だけど、電車はまだ減速している最中で、寝起きの私は、思わずよろけてしまった。
それを支えるように、彼の腕が伸びてきた。
深緑色の制服の袖から覗く、しっかりとした、逞しい腕が、私の背中に優しく、しかし確実な力で触れる。
おかげで、転ばずに済んだ。
彼の体温が、服越しに伝わってくる。
電車が完全にホームで停止すると、彼はすぐに腕を離してくれた。
「た、助かりました……。あと、起こしてくれて、ありがとうございます……」
深々と頭を下げた。
顔を上げると、彼は相変わらず無表情のまま。
他に何か言った方がいいだろうか。
悩んだけれど、このままでは折角起こしてくれたのに、扉が閉まってしまう。
私はもう一度だけ軽く会釈をしてから、急いで電車を降りた。
ホームから電車が発車するのを見送ったけれど、彼は、窓越しにこちらに無理に目を向けることはなかった。
ただ、他の乗客たちと一緒に、じっと前を見つめている。
それでも、私の心臓はドキドキと鳴り止まない。
彼の肩の硬さと温もりが鮮明に残っている。
だけど、きっとこれは、寝起きのせいだ。
そうに決まっている。
そう思いながら、私はホームの階段を上った。
どれくらいそうしていただろう。
意識がはっきりしてきたのは、不意に耳元でくぐもった、低い声が響いたからだ。
「んっ……」
私は慌てて目を開けた。
視界に飛び込んできたのは、いつも座っている向かいの席ではなく、いつもよりずっと近くにある、深緑色の伊達工の制服。
そして、その制服の持ち主の、骨ばった大きな肩に、自分の顔がもたれかかっていたことに気が付いた。
「ひゃっ……!」
反射的に、飛びのくように顔を上げた。
その勢いで、ごつりと彼の硬い顎に頭をぶつけてしまった。
痛みはあまり感じなかったけれど、その事実に全身の血が一気に沸騰したように熱くなる。
どうしよう。
眠ってしまって、知らない間に彼の肩に寄りかかっていたなんて。
しかも、ぶつけた。
汗臭いと思われたら嫌だと距離を取っていたのに、ベッタリと顔をつけてしまっていたなんて、恥ずかしすぎる。
「す、すみません!ごめんなさい……!」
謝罪の言葉が、ひどく上擦る。
恐る恐る視線を上げると、彼は私の方を見ていた。
いつも固く閉じられていた一重の目は開いており、眉間のシワが少しだけ緩んでいるように見えた。
「……着いた」
彼から発せられたのは、その一言だけ。
驚くほど低い声だったけれど、怒っている様子はなかった。
車内アナウンスに耳を澄ませば、確かに、いつも私が降りる駅の名前を告げている。
慌てて鞄を持って立ち上がろうとした。
だけど、電車はまだ減速している最中で、寝起きの私は、思わずよろけてしまった。
それを支えるように、彼の腕が伸びてきた。
深緑色の制服の袖から覗く、しっかりとした、逞しい腕が、私の背中に優しく、しかし確実な力で触れる。
おかげで、転ばずに済んだ。
彼の体温が、服越しに伝わってくる。
電車が完全にホームで停止すると、彼はすぐに腕を離してくれた。
「た、助かりました……。あと、起こしてくれて、ありがとうございます……」
深々と頭を下げた。
顔を上げると、彼は相変わらず無表情のまま。
他に何か言った方がいいだろうか。
悩んだけれど、このままでは折角起こしてくれたのに、扉が閉まってしまう。
私はもう一度だけ軽く会釈をしてから、急いで電車を降りた。
ホームから電車が発車するのを見送ったけれど、彼は、窓越しにこちらに無理に目を向けることはなかった。
ただ、他の乗客たちと一緒に、じっと前を見つめている。
それでも、私の心臓はドキドキと鳴り止まない。
彼の肩の硬さと温もりが鮮明に残っている。
だけど、きっとこれは、寝起きのせいだ。
そうに決まっている。
そう思いながら、私はホームの階段を上った。
