寡黙なアナタが叫ぶとき
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翌日、学校で顔を合わせると、彼は顔を背けた。
その横顔は、どこか冷たい。
「ねえ、青根君、どうしたの?」
話しかけても、彼は、
「……なんでもない」
とだけ言って、足早に教室を出て行ってしまう。
彼の“なんでもない”は、いつもと違った。
普段なら私を心配させないような、そんな雰囲気を感じさせるのに、今日のそれはまるで鉄の壁を立てるように、冷たく私を拒絶していた。
こんなこと、付き合ってから一度もなかったのに。
……。
…………。
「やっぱり変だよ、青根君」
授業が終わり、私は部活に行こうとしていた青根君の腕を掴んで引き止めた。
青根君は私の手を振り払おうとしたけれど、私の不安そうな表情を察したのか、その手を止めた。
「……話してよ。私、何か青根君を怒らせるようなことした?」
尋ねると、青根君は目を伏せた。
教室にはまだ数名の生徒が残っており、私たちのやり取りをソワソワとしながら聞き耳を立てている。
ひょっとして、人目があるから話してくれないのかもしれない。
そう思い、私は掴んだままの手をそのまま引っ張り、教室の外へと移動することにした。
「ちょっと来て」
青根君は相変わらず黙ったまま、大人しく私に付いてくる。
小柄な私が、目つきの悪い青根君を強引に引き連れている構図は、すれ違う生徒たちの物珍しそうな視線を集め、何度も二度見された。
だけど、私はお構い無しに歩き続け、人けの少ない階段裏へと青根君を連れ出した。
「ここならいいかな……。改めて聞くけど、私、何かしたかな?」
「……」
案の定、無言の青根君。
話してくれないということは、無言の肯定なのだろうか。
「やっぱり私が悪いんだね」
そう言うと、先ほどまで黙っていた青根君が咄嗟に否定してきた。
「……違う」
「じゃあ、何なの?」
「……」
話しだしたと思えば、また黙 黙り。
いままで心地よかった沈黙が、今は私の胸を締め付ける。
こんなにも近くにいるのに、まるで遠くにいるみたい。
「もういい……」
そう言って私は力なく掴んでいた腕を離した。
「青根君は、私に心配すらさせてくれないんだね」
その場を離れようと歩き出した、その時。
青根君が初めて、大きな声を出した。
「違うんだっ……!」
その声に驚き、思わず足を止めて振り向くと、青根君の顔は、苦しそうに歪んでいた。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「……歯が……痛くて……」
青根君の口から、途切れ途切れに言葉が紡がれる。
そう言えば、心ばかりか頬が腫れているようにも見える。
「もしかして、虫歯?」
そう尋ねると、青根君は静かに頷いた。
食欲がなかったのも、険しい顔をしていたのも、全て虫歯が原因だったの?
「昨日、部活休んだのは?」
「歯医者に……」
「言ってくれればよかったのに……」
言ってくれれば、私だって勘違いしなかったし、こんなにも取り乱されなかった。
すると、青根君は苦虫を噛むような顔をして、いつもより低い声で答えた。
「恥ずかしかった……」
「え……?」
「●●にキ……キ……」
「私に……何?」
聞き返すと、青根君は観念したように続きを話し始めた。
「キス、嫌がられると思って……」
その声は震えていた。
そんな心配をしていただなんて。
私は一歩ずつ青根君に近付き、彼の大きな手を取った。
「ばか……。そんなので、嫌がらないわよ」
そして、青根君の腕をぐっと引っ張ると、大勢を崩した彼の顔が近付いてきた。
そこへすかさず軽く唇を合わせる。
彼の鋭い瞳が大きく見開かれた。
「これで、仲直りだね」
私が微笑むと、青根君は何も言わず、ただ、強く抱きしめ返してくれた。
その大きな手から伝わる温かさに、もう言葉はいらないのだと、改めてそう思った。
でも、勘違いするときもあるから、たまにはちゃんと言ってね。
ーーFinーー
その横顔は、どこか冷たい。
「ねえ、青根君、どうしたの?」
話しかけても、彼は、
「……なんでもない」
とだけ言って、足早に教室を出て行ってしまう。
彼の“なんでもない”は、いつもと違った。
普段なら私を心配させないような、そんな雰囲気を感じさせるのに、今日のそれはまるで鉄の壁を立てるように、冷たく私を拒絶していた。
こんなこと、付き合ってから一度もなかったのに。
……。
…………。
「やっぱり変だよ、青根君」
授業が終わり、私は部活に行こうとしていた青根君の腕を掴んで引き止めた。
青根君は私の手を振り払おうとしたけれど、私の不安そうな表情を察したのか、その手を止めた。
「……話してよ。私、何か青根君を怒らせるようなことした?」
尋ねると、青根君は目を伏せた。
教室にはまだ数名の生徒が残っており、私たちのやり取りをソワソワとしながら聞き耳を立てている。
ひょっとして、人目があるから話してくれないのかもしれない。
そう思い、私は掴んだままの手をそのまま引っ張り、教室の外へと移動することにした。
「ちょっと来て」
青根君は相変わらず黙ったまま、大人しく私に付いてくる。
小柄な私が、目つきの悪い青根君を強引に引き連れている構図は、すれ違う生徒たちの物珍しそうな視線を集め、何度も二度見された。
だけど、私はお構い無しに歩き続け、人けの少ない階段裏へと青根君を連れ出した。
「ここならいいかな……。改めて聞くけど、私、何かしたかな?」
「……」
案の定、無言の青根君。
話してくれないということは、無言の肯定なのだろうか。
「やっぱり私が悪いんだね」
そう言うと、先ほどまで黙っていた青根君が咄嗟に否定してきた。
「……違う」
「じゃあ、何なの?」
「……」
話しだしたと思えば、また
いままで心地よかった沈黙が、今は私の胸を締め付ける。
こんなにも近くにいるのに、まるで遠くにいるみたい。
「もういい……」
そう言って私は力なく掴んでいた腕を離した。
「青根君は、私に心配すらさせてくれないんだね」
その場を離れようと歩き出した、その時。
青根君が初めて、大きな声を出した。
「違うんだっ……!」
その声に驚き、思わず足を止めて振り向くと、青根君の顔は、苦しそうに歪んでいた。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「……歯が……痛くて……」
青根君の口から、途切れ途切れに言葉が紡がれる。
そう言えば、心ばかりか頬が腫れているようにも見える。
「もしかして、虫歯?」
そう尋ねると、青根君は静かに頷いた。
食欲がなかったのも、険しい顔をしていたのも、全て虫歯が原因だったの?
「昨日、部活休んだのは?」
「歯医者に……」
「言ってくれればよかったのに……」
言ってくれれば、私だって勘違いしなかったし、こんなにも取り乱されなかった。
すると、青根君は苦虫を噛むような顔をして、いつもより低い声で答えた。
「恥ずかしかった……」
「え……?」
「●●にキ……キ……」
「私に……何?」
聞き返すと、青根君は観念したように続きを話し始めた。
「キス、嫌がられると思って……」
その声は震えていた。
そんな心配をしていただなんて。
私は一歩ずつ青根君に近付き、彼の大きな手を取った。
「ばか……。そんなので、嫌がらないわよ」
そして、青根君の腕をぐっと引っ張ると、大勢を崩した彼の顔が近付いてきた。
そこへすかさず軽く唇を合わせる。
彼の鋭い瞳が大きく見開かれた。
「これで、仲直りだね」
私が微笑むと、青根君は何も言わず、ただ、強く抱きしめ返してくれた。
その大きな手から伝わる温かさに、もう言葉はいらないのだと、改めてそう思った。
でも、勘違いするときもあるから、たまにはちゃんと言ってね。
ーーFinーー
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